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第一話 無気力人間は異界に堕つ

 目が覚めると、そこは優しい光の中だった。夢にしてはつまらんな、夢の中で寝てやるか――そう思い目を閉じて気付く。体が軽い。というか、一切の重さがない。なんなら、体が少し透けている。え?

「ああ!気がついたんですね!」

 頭の中が疑問符だらけの俺の目の前に、ベールのようなものを纏った神々しい女性が現れる。これ以上混乱させないで欲しい。

「良かった……私はアリウス。こう見えても女神をやっています」

 疑問符がまた増える。名前と職業がわかったのはいい。その真偽はともかくとして、他にも気になることは沢山ある。

「まず、ここはどこなんだ?」

 体が透けていることといい、女神といい、状況を鵜吞みにするなら俺は死んだことになる。おまけに周囲は天国のイメージをそのまま持ってきたような空間だし。

「ここは天界です。…………あなたは、死んでしまったんですよ」

 俺は額に手を当てる。夢だとしても荒唐無稽だ。どうせならここからチートでも貰って、異世界で無双でもしてみたいものだ。

 というか、俺が死んだ?俺は間違いなく自室のベッドで寝転がったはずだし、そのまま気絶するように眠ったことも覚えている。確かに最近はかなり忙しかったし、もう何日寝たか思い出せないくらい徹夜していたが、健康にはできる限り気を遣っていたはずなのに。

「あなたは……というか、あなたの魂は、異世界から漂流してきたみたいで」

 もしかして、俺は過労死したのか?これが悪い夢じゃなければ、だが――

「聞いてます?」

「え?」

 完全に聞き流していた。こんな状況、受け入れるのに時間がかかるに決まっている。話しかけるならもっと後にしてほしい。

「そんなわけで、あなたにはこの世界を救うお手伝いをしていただきたいんです」

「は?」

 首をかしげている俺に、自称女神はそう告げてくる。ここまで来る逆に笑えてくる。あまりにも陳腐な展開じゃないか。

冴えない人生を送っていた奴が、異世界にチート能力を貰って転生。そこから無双して幸せになって?

「とはいえ、別に平和を取り戻すために戦ってほしいというわけでもなくてですね。これは慣習みたいなものなんです。

 異世界から来た人には祝福を与えて、この世界で過ごしてもらうことになっています」

 思っていたのと過程は違うが、結果として無双しそうな内容だ。

「早速祝福を授けたいのですが、その……問題がありまして…………」

「わかったわかった、なんでもいいからさっさとくれ」

 どうせ先の展開は読めているのだ。いつ覚めるかもわからない夢なら、できる限り先に進んで楽しもうじゃないか。

「ありがとうございます!祝福の詳細を……」

「いい。早く転生させてくれないか?」

 目を輝かせて説明を始めようとする女神を制止して、転生を促す。俺はソシャゲの利用規約なんかも全部読み飛ばすタイプだ。

まあ、そのせいでブラック企業に入社する羽目になってしまったのだが……。この夢の世界では関係ないだろう。あらゆることが俺に都合よく作用するはずだ。多分。

「わかりました!では早速、転送させていただきますね!」

 部屋を構成する光が強くなったかと思うと、波動を放ち俺を包む。意識がだんだん遠くなり、視界がホワイトアウトして――

 

気がつくと、見知らぬ平原で寝転がっていた。

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