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14.何でも持っている従姉妹・エミリー視点②




 アリアが死んだ——

私がその知らせを受けたのは、葬儀が終わった後だった。


 侯爵家の手紙にはアリアが亡くなった事と、今後について話をしたいと書かれていた。

どうして突然そんな事になったのか分からない私は、とりあえず“今後の事について”が気になったので指定された日に、クレイン侯爵邸に向かった。

少し前まで元気だったアリアが、どうして突然亡くなったのか全く分からなかった。

従姉妹の早すぎる死に悲しみはあったけど、それと同時にもしかしたらと私は一筋の光を見た気がした。

アリアが亡くなったのならもしかしたら……私がアイザック様の妻になれるかもしれない。

今日は、その為に呼ばれたのかもしれないと、従姉妹が亡くなったばかりなのに不謹慎にもその時の私は浮き足立っていた。



 侯爵邸に行くと、すぐに応接室に通された。

応接室には何故かアイザック様も居て、既にソファーに腰掛けていた。

でもその顔は蒼白で、とてもじゃないが見て居られないレベルだった。

侯爵である叔父様の話では、アリアの部屋から複数の人に当てた手紙が出てきたそうだ。

両親、婚約者であるアイザック様、そして私。


叔父様から私に宛てた手紙を渡されて、どうして私に手紙を?と思ったがとても聞ける状況じゃなかった。

とりあえず黙って中身を読む事にした私は中身を見て固まってしまった。


 “どうかアイザック様とお幸せに”

 “貴女達の邪魔をして本当にごめんなさい”


たった二行の手紙だったけど、アリアは私とアイザック様の関係を知っていたんだと分かった。


 なら、どうしてもっと早く身を引いてくれなかったの?

 アリアが早く身を引いてくれたら、アイザック様と堂々と会う事が出来たのに!!


手紙を見ている私とアイザック様に、叔父様が静かに語りかけた。

「……君たち二人は愛し合っているそうじゃないか。娘が、邪魔をして申し訳なかったと私への手紙にも書いていてね」

「ち、ちが…侯爵それは、「娘の願いなんだ」」

アイザック様が話しているのに叔父様は被せるように言った。

「君たちにとって邪魔なアリアはもういない。良かったじゃないか、これで二人は結ばれるのだから」

そう言った叔父様は優しい声色とは違い、どこか虚ろな表情をしていた。

その表情を見て、何故か反射的に体が震えたけれど私はいい機会だと思い、


「叔父様、実は……」

「アイザック殿とアリアの婚約は既に白紙に戻っている。あとはそちらの好きにするといい」

「待ってください侯爵!私はアリアを愛しています!!」

隣で叫んでいるアイザック様を、私はまじまじと見上げてしまった。


 アリアを愛してないのに、どうして叔父様の前でそんなパフォーマンスなんてするの?

 ねぇ、どうして?

 アリアはもういないのよ?

 私を愛してるって言ってたじゃない。

 愛してもいないアリアと婚約していたから、本命の私に愛してると言って抱きしめてくれたんでしょう?



「娘との約束の日に、わざわざレスター侯爵邸で二人の密会現場を見せつけたのだろう?「君を愛してる」と言って抱きしめていたそうじゃないか」

事実を言う叔父様の言葉に、何故かアイザック様はヒュッと息を呑んだ。


「ち、ちが…あれはエミリー嬢が突然押し掛けてきたから1秒でも早く帰ってほしくて……」

そんな…違うんだ…としきりに呟きながらアイザック様は顔を手で覆い、俯いてしまった。



 ねぇ、さっきから一体何が起きているの?

 アリアは政略の相手であって、そこに愛はないんでしょう?

 ねぇ、アイザック様。私を。私だけを愛しているのよね?



せっかく邪魔者(アリア)がいなくなったのに、どうしてもっと嬉しそうにしないの?

私達、ようやく一緒になれるのに。


その時私は唐突に理解してしまった。きっとアイザック様は恥ずかしがっているのだと。



さっき叔父様が二人は愛し合ってるなんて真実を口にしたからね。

きっと二人きりになったら、いつものアイザック様に戻ってくれるわ。だってそうじゃないとおかしいもの。

私じゃなくてアリアを愛してるなんて、そんな事実あるわけないわ。


だってアイザック様は私を愛しているんだもの—— 


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