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1.その日、私は禁忌を犯した

 暗闇の中、眩い光を放つ魔法陣の中央に忽然と現れた男は、ゆっくりと顔を上げた。

「お前は俺に何を望む」

一瞬人形が話しているのかと錯覚する程の完成された見た目と、禍々しい雰囲気を纏っている目の前の男は、表情一つ変える事なく言い放つ。黒い髪も相まって青白く見えるその表情は、一切感情が読み取れない。

この世界では見た事のないルビーより深く引き込まれそうな暗く赤い瞳で、じっとこちらを見つめ私の返答を待っているようだった。



 そのあまりにも綺麗な赤い瞳に射抜くような視線を向けられ、私は全身の血が沸き立つのを感じた。

そして未知の感覚に、気付けば身震いしていた。本当に一瞬、この男の瞳に囚われたかのような錯覚を起こしたからだ。

それは恐怖心からではなく、焦がれていた相手の瞳にやっと自分を映してもらえた時のような……多幸感に近い感覚だと思った。



『どうして、そんな風に思うのかしら?私は、こんな感情経験した事などないのに……』



自分の思考なのに全く理解が出来なかった。

混乱しそうになる気持ちをひとまず落ち着かせ、まずはこの状況をどうにかする事にした私は改めて男に視線を向けた。

そう、私は絶対に叶えてもらいたい願いがあるのだから……



一度目を瞑り、ゆっくり深呼吸をしてから再度男と視線を合わせた。

「お願いがございます。私は——」



男は最後まで聞き終わると、少し考えるそぶりを見せた。そして、すぐにこちらに向かって手を差し出した。

「いいだろう。お前の願い、この俺が必ず叶えてやる」

そう言いながら、男は心底楽しそうに笑った。そのあまりにも綺麗すぎる笑みに、私は呼吸すら忘れしばらく呆然と立ち尽くしていた。







この日私の運命は、その瞳に魅入られた瞬間に決まった。もう二度と戻れないところまで囚われ、堕ちる事をこの時の私は知るよしもなかった——

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