事務所NGが凄いアイドルと合コン出来た話
「setting出来たぁ!?!?!?」
「あ、ああ……」
スマホに向かって飛沫を噴射する俺。
「コネをこねこねしたらなんとかなった」
「よく分からんがよくやった! 感動した! ありがとー!!」
アイドルとの秘密の合コン!
夢にまで見たアイドルとの合コン!
夢想して止まないアイドルとの合コン!!
「もしもし刈須磨美容室ですか? ラーメン1つ」
合コンに備え美容室も予約した。
後は……服か!
「ココからココまでをカードで」
ズボンと上着を一着ずつ。
これで支度は完璧だ。
合コンは3on3。
俺! 友人! 友人の友人!
アイドル! 女性! 女性!
決戦の舞台は、薄暗いイタリアンレストラン……!
「初めまして♪ アイドルやってます夢花です♪」
「近くの神社で巫女をやってます美海です」
「仮出所中、慶子……です」
俺は友人の顔を見た。笑顔で。
何も問題は無い。オールオッケー!!
「あ、あの……夢花さんはお幾つですか?」
「ゴメンなさ~い。年齢は事務所NGなんです~」
「あ、すみません。事務所NGなら大丈夫です」
いきなり地雷をツンツンしてしまった。
いかんいかん。関係ない話題から盛り上がりを見せねば……!
「美海さんは巫女のお仕事ってどんな事をしているんてんすか?」
「すみません。御仕事の事は社務所NGなんです」
「そ、そうですか、すみません」
ま、まぁ、社務所NGとかあるなら仕方ないね。
「じゃあ……」
おそらく一番の厄介者、慶子ちゃんをじっとみる。
見た目はかなり若く、手入れされていない長い黒髪がぼさっと伸びていた。
仮出所中ってなんだよ。何やったんだよ……。
「慶子さんは…………そのー」
「あ、罪状はムショNGなんで」
まだ聞いてないけど、そんなこと言われたら余計気になるじゃないか……!!
何やったんだよ慶子……!!
「とりあえず乾杯しようか」
「あ、すまん!」
まだ乾杯してないことに気が付き、慌ててグラスを掲げる。
「あれ? 夢花さんはノンアルなんですか?」
「ビールは事務所NGなんで」
「カクテルもですか?」
「事務所NGです」
「まさか焼酎もですか?」
「芋はNGです」
「麦は大丈夫なんですか?」
「大丈夫でーす! すみませーん! 麦のロックでー!!」
夢花さんがおどけて見せた。
ははぁん、これは事務所NGを建前に、相手から進められれば行かざるを得ないスタイルのパターンだな? よし、押すしかない!
「美海ちゃん、スパゲッティどうぞ」
「あ、ありがとうございます」
友人がイケメン俳優みたいにスパゲッティを取り皿へ分けており、何やら二人の間に熱が帯びるのを感じた。
きっと社務所は爆発したのだろう。
「もしかして売人ッスか!?」
「違う違う! 親父がママに酔って包丁持って襲いかかったときにちょっと、ね」
向こうは向こうでK子氏と友人の友人が組んずほぐれつをしていた。
ちくしょう、普通に良い子じゃねぇかよ……!
「親父さんを刺しちゃったの!?」
「軽くね、3針くらい。その後、彼ピの財布からカード抜いたらバレてこの様」
感動を返せ。
「本当はね、恋愛とか事務所NGなんだけど、君さえ良ければ……どうかな?」
麦のロックを煽るアイドルが、俺に向かって強くウインクを投げてきた。
ふむ、俺は俺で行けるのであれば、やぶさかでは無いのだが。
イタリアの肉を頬張り、俺は友人と友人の友人に向かって目配せをした。解散して各自ハッスルせよ、と。
「本当はね、二人きりとか事務所NGなんだけどさ……」
薄暗いイタリアンレストランを出ると、辺りは夜になっていた。俺もビールを飲み過ぎたのか、少し足下が覚束ない。
「お泊まりは勿論事務所NG。だけど、永住なら大丈夫だから……」
自分のアパートへ夢花さんを案内し、部屋の電気を付けた。
「もう、恥ずかしいから暗くして……」
「…………」
夢花さんの顔は酷くシワが多かった。
「優しくしてほしいな?」
「…………」
目元とかメッチャ、グチャグチャだった。
「ね?」
「…………夢花さん」
「ん? なぁに?」
「田園調布に?」
「家が建つ──あ」
俺はダッシュで逃げた。
「ゴメンなさい息子NGです!!」
「待てコラ! 若いエキス!! 私の誘いを断るなんて、事務所NGなんだからね!」
しかし酔って走った俺はアパートの階段で派手に転び、熟女アイドルにお縄となった。




