広告三銃士を(異世界に)連れてきたよ!
今日も私はサバサバしている。
この会社でもどん底な部署の編集部に転部された私は、再び評価される日を待ちながら日々仕事をしている。
今は部長に頼まれて、男ウケの悪そうな同僚と備品の買い出しをしているところだ。
「はぁ~…
なんで私が買い出しなんてしなくちゃなんないのかしら」
「まあまあ網浜さん、こういうのは誰かが行かなきゃいけないんですから。」
何よ、この女。知った風な口をききやがって。生意気ね。
私は小綺麗でかつ男ウケの悪そうな女をにらみつけながら歩いた。
「あ、ちょっと、信号赤ですよ!危ないですって!」
「大丈夫よ、この辺りの車どおりは少ないほうだし、こういうのは歩行者優先だから、車側からよけていくもんなのよ」
「は、はぁ…でも…」
はい口ごもった。いい気味だわ。サバサバしてないからこういうことになるのよ。あ~すっきりし
「危ない!!!」
けたたましい音があたりに鳴り響いた。
ま…
はま…
網浜…
「起きなさい、網浜!」
ベッドから起きた網浜の目には、とんでもない光景が飛び込んできた。
「どこよ、ここ…」
「私は確か、いけ好かない女と買い出しに出かけていて、トラックにはねられて、それから…」
「何言ってるの、網浜!今日はブリーダーになるための大事な10歳の誕生日よ!研究所にモンスターをもらいに行くんじゃなかったの!?」
「え?いや…」
「いいから早く!!!ほかの二人も早くしなさい!!!」
「うぅ…」 「これは」
これは…もしかしたら異世界転生というやつなのかしら。私はサバサバしているから理解も早いのよ。他の男性二人も転生者のようだけど…
「さあ早く!着替えて!朝ごはん食べて!歯を磨いて!荷物もって!行ってらっしゃい!」
あの女、サバサバしてるわね。とんでもない速さで支度を済ませたわ。ああいう女がモテるのよ…それにひきかえあのいけ好かない女!トラックが来てるんならもっと早く言いなさいよ!!!イライラするーーーーーーーーーー!!!!!!!
「あの、どうしたんですか?そんなに殺気立って」
「え?」
転生者の一人が話しかけてきたわ。なんだか画風が違うけど。
「ああいえ、なんでもないんです。私は網浜宇美と申します。あなたたちも"異世界転生"、してきたんですよね?」
「!?」
驚いてる驚いてる…やっぱりサバサバしてない人は困るわねーw状況把握が遅くてw
「それで、あなたの名前は?」
「俺は、ダイって言います。土木関連の会社に勤めてたんですが、運搬中にトラックが突っ込んできて、目が覚めたら…」
「あらそうですか。それは災難でしたね。ところで、そちらの方は?」
サバサバ系女子には他人の不幸に気を遣っている時間などないのよ。
「僕はきもすけ」
「俺を兄貴と呼べば、連れて行ってやってもいいけどな」
「は?」
「すみませんでした、私が悪かったです」
「一緒にクエストに連れて行ってください」
この人とは話すだけ無駄そうね。日本語も下手だし。こういう男にはモテないようにするのもサバサバの神髄なのよ。
「言っていることがよくわからないのですが、とにかく一緒に研究所に行きましょうか」
「魔剣伝説、無料200連ガチャイベント開催中!」
「え?」
「網浜さん、気にせず行きましょう。研究所。」
「ええ、そうしましょうか…」
「まだ魔剣伝説の遊び方がわからない人がいるみたいね」
「つきましたね、研究所。」
「ええ、とにかく中に入ってみましょう。さっきからその人、うるさくて…」
「最高ですん!大量の経験値、ドロップ率も超高い!」
「やあ、よく来たな。君たちがブリーダーの卵かい?」
「ええ、まあ…」
また画風の違う人が出てきたわね。
「あの、あなたは?」
「俺はこの研究所を仕切っている現場博士多田だ。よろしくな。ちょうど三人とは都合がいい。そこに三匹のモンスターがいるだろ。一人一匹ずつ取るといい。」
「じゃあ私はこの子で!」
「え、網浜さん、一番なんてずるいですよ!」
「いいじゃないですか別に、減るもんでもないですし。えーかわいい!」
成り行きでここまで来たけど、なんだかんだかわいいペットみたいなものが手に入ってよかったわ。やっぱりサバサバしてると幸運もついてくるものなのよね~w
「いや減りますけど…まあいいですよ。じゃあ俺はこの子にします。」
「200連ガチャを引いて超強力な武器を引いた」
「よし、モンスターを選んだな。それでは最初の任務を与える。床に転がっている死体は気にせず、まずはコンビニに行ってカップラーメンでも買ってきてくれないか。」
「ええ!?そんな急に言われても無理っすよ多田さん!」
「無理じゃねーんだよなんとかしろよ」「仕事だろ」
「はい…」
あら、怒られちゃってるわ、かわいそうに。後で慰めてあげましょ。こういうところで慰めてあげれば男なんてイチコロよ。
「じゃあ皆さん、コンビニに行きましょうか…」
「ええ。」「いいよ 今から行こうか」
「ダイさん、災難でしたね。いきなり怒られるなんて。」
「いえ、仕事の関係上、日常茶飯事ですから。そういえば、あなたは何をなされていたんですか?」
「私ですか?私は出版社に勤めてましてね、最近底辺の編集部に転部させられてしまったんですよ!そこにいる人たちがまぁ~ダサくていけ好かなくて!!やっぱりワタシってサバサバしてるから?クリエイティブな部署じゃないとやる気が出ないし?周りがダサいと世話焼かないといけないし?底辺な部署のくせに細かいことにうるさいしでもうほんと…はあ~~早く元の部署に戻りたいですよ全く嫌になっちゃいますよねぇ~~~~~~~。」
「は、はぁ…」
「ところでこの辺、やけに脱毛店が多くないですか?」
「あら、言われてみればそうですね。」
「八王子付近にお住いの皆様、おめでとうございまーす!!!」「申し訳ありません。一か月500Gの脱毛しかご用意しておりません。」「社会人3年目の、KENTYです!」
「ここまで多いとちょっとうざったいっすね…」
「本当ですね…」
「あ、みえてきましたよ、コンビニ。あそこじゃないですか?」
やっと脱毛店通りを抜けたみたい。全く、過大広告は逆効果って知らないのかしら。出版社なら常識なのに。サバサバしてないわねぇ。
「本当ですね、早く行きましょう!」
「こっちに来て!助けて!」
入店するなり聞こえてくる少女の悲鳴。商品棚の向こうに、少女が見えた。
急いで駆け寄る三人。
「これを握って…」
とんでもない早口で言いながら少女が差し出してきたものは、包丁だった。血がべとりと付着していて、そばに人も倒れている。ただ事ではないと動転した網浜は、思わず包丁を握った。
「駄目だ、マスター!ああ、遅かったか…」
いつの間にかボールから出てきていたモンスターたちの忠告も届かず。
「このナイフには、あなたの指紋がベッタリよ。死体を隠すのに協力してくれるわね?」
少女が大人びた顔でいう。
「な、何だって……!?」
「当然でしょ?モンスターを連れた野蛮な男とかわいそうな女の子、警察はどっちの話を信じるかしら?」
助ける
口を封じる
「なによあんた!?野蛮な男!?!?!?ふざけないで!!!!!!!!!!私は乙女なんですけど!?!?!?!?!?!?あんたみたいなちょっと顔がいいだけの性格ブスの話なんて誰も聞きゃしないわよ!!!!!!」
「落ち着いてください網浜さん!落ち着いて!!」
「それよりまずいっすよ!包丁に指紋がついているのは事実なんですから、取り乱している場合じゃないんすよ!」
「ぐ…確かにそうね…」
「ちょっと片言のあんた!訳わからないことばかり喋ってないであなたも手伝いなさいよ!」
「200連ガチャで星5無罪をゲトだ」
「は?」
「ここでいいお知らせです」「魔剣伝説が来ました」「心配はいりません」
「魔剣伝説は、新規プレイヤーなら200連ガチャだぞ」
「特典コード:4399MS1を入力すると 限定アバター贈呈 高級ペット贈呈 限定素材贈呈 わーお、大儲けじゃん」
こうして私たちは、無罪を勝ち取り、限定アバター、高級モンスター、限定素材、火竜セットを手に入れ、見事全サーバー一位になったのだった…
時は過ぎ、4399年後。
全サーバー一位をめぐっていたある日、事件は起きた。モンスターが、消えたのだ。
全サーバー一位になった日、私たちは不要になったモンスターを捨てていた。そのモンスターが反逆を起こし、他のモンスターを全員殺してしまったのだ。
今、目の前に事件の首謀獣がいる。
「全員殺したのか!?同じパーティの仲間じゃないのか!」
相手を威圧するように、赤く発光している羽根を揺らしながら、私は問いかけた。
「仲間?笑わせるな!今度は我々モンスターが、ブリーダーを支配する
番 だ!」
「そうだ!お前らも血を流して死ぬまで戦わせてやるから覚
悟しろ!」
二の句を継ぐ暇もなく、仲間だったモンスターたちはボールを投げつけてきた。
「「やった!」」
モンスターたちの歓喜の声を最後に、ワタシ達の意識は途切れた。
ここは、僕があの悪夢の中で見た場所だ。▼
これから起きるであろう「それ」がもたらす、
耐え難い苦痛の予感に身が震えた。▼
夢で見た「それ」が何だったのかはもう思い出せない。しかし、「それ」の直前に何が起きたのか
はよく記憶している。▼
風が強く吹いているのに、突然世界の
すべてが音を止めたのだ。▼
それから、静寂を破るように自販機が缶を
吐き出した。そして……▼
「 向 き 合 う 時 だ 。」
途中で力尽きました。申し訳ありません。
削 除 依 頼 が あ れ ば 削 除 し ま す。
(広告と)向き合う時だ。