♥ 戦争勃発 3
だけど、セロはオレに隠し事を出来る。
オレはセロの事を全部知ってるわけじゃない。
≪ エルゼシア大陸 ≫の中にある≪ レドアンカの都 ≫で出逢ってからのセロしかオレは知らないんだ。
オレと一緒に居てくれる時のセロしか知らない。
オレから離れている時のセロが何をしてるのか、オレは知らないんだ。
セロフィート
「 どうしました、マオ? 」
オレの作ったオムライスを満足そうに食べてくれているセロが、オレに声を掛けてくれた。
マオ
「 ──言わなくたって分かるだろぉ〜〜。
完全に包囲されてるじゃんか…。
オルデシア国民は、これから戦争に巻き込まれる事を知らないで生活してるんだぞ!
オレの気持ちは憂鬱だよ… 」
セロフィート
「 そんなに気になるなら、親切に教えてあげれば良いでしょう。
何故、教えてあげません? 」
マオ
「 ………………門前払いされたんだよ!!
オレだって教えたかったよ!
でも…聞き耳を持ってくれなかったんだ!!
仕方無いだろ… 」
セロフィート
「 “ 仕方無い ” ですか…。
以前のマオなら『 仕方無い 』と弱音を吐いて諦めたりしませんでした。
一体誰の所為です? 」
マオ
「 明らかにセロの所為だろ!
国民に教えてもいいけどさ、パニックになっちゃうだろ。
オレ達で何とかして戦争を止められないかな? 」
セロフィート
「 マオ──、その “ オレ達 ” の中にワタシも入ってます? 」
マオ
「 当たり前だろ!
戦争になる前に回避させるなんて事が出来る奴なんて、セロしか居ないじゃないか! 」
セロフィート
「 そうですね。
ですけど、ワタシは何もしません。
ワタシは≪ オルデシア小国 ≫が近隣諸国から攻め込まれるのを見たいですし 」
マオ
「 別に見なくていいだろ! 」
セロフィート
「 ワタシのマオを侮辱した国王が統治する≪ オルデシア小国 ≫等、滅んでしまっても構いません 」
マオ
「 セロ…。
もしかして…根に持ってるのか?
あの事をさ…。
セロ──、オレは気にしてないよ、あんな事! 」
セロフィート
「 マオにとってはあんな事でも、ワタシにとっては違います。
簡単に許せる程、ワタシの心は広くないです 」
マオ
「 セロ……。
相手を許せない程、オレの為に怒ってくれるのは素直に嬉しいよ…。
だけど……、他国に攻め込まれるのを傍観するのはやり過ぎだよ… 」
セロフィート
「 やり過ぎなものですか。
マオ、君は自分の立場を理解すべきです。
君はワタシのマオなのです。
もっと自覚してください 」
マオ
「 自覚ったって…… 」
セロフィート
「 兎に角、ワタシは明日まで何もしません。
マオもそのつもりでいてください 」
マオ
「 セロぉ〜〜〜 」
セロフィート
「 甘えた声を出しても駄目です。
ワタシは国王と側近達を許しません 」
マオ
「 セロ… 」
それだけ言ったセロは再びオムライスを食べ始めた。
それからオレは、セロとは一言も話をしなかった。
昼食を終えても、夕食を終えても、就寝する時も、セロとは言葉を交わさなかった。
オレが先にセロに声を掛けるか──、セロが先にオレに声を掛けるか──。
どっちになるかな??
オレは頑張ってるけど、そろそろ限界を感じている。
明日の朝、起きたら……オレからセロに「 おはよう 」って声を掛けよう。
セロに抱き付いて、「 昨日は御免な 」って、オレから謝るんだ。
セロはきっと何時もみたいに優しく微笑んでくれて、オレを許してくれる筈だ。
だってオレは、セロのお気に入りの玩具だから。
新しい玩具を見付ける迄は、セロはオレに優しいから…。
誰かに身体をユサユサと揺さぶられて、目が覚めた。
マオ
「 …………うぅん…何だよぅ〜〜〜……オレは未だ眠いのにぃ〜〜〜……… 」
セロフィート
「 マオ、精霊結界が消えました。
近隣諸国の軍隊が≪ オルデシア小国 ≫への進軍を始めました。
朝方には≪ オルデシア小国 ≫の領土へ入ります 」
オレを起こしたのはセロだった。
もしかして、オレが勝ったのか??
セロとの勝負はオレの勝ちだ!!
だって、セロから先にオレへ声を掛けたんだからな!!
初めて…初めて……セロに勝てたんだ…。