4-5 ソソグとナミの重大発表
土曜日。
ソソグは重い足取りで
仕事にやってきた。
ナミはいつもどおり
水着の上にエプロンという際どい格好だ。
ソソグはエプロンをつけながら聞く。
「店主は?」
「お父さんはミチオさんと
もうサーフィンしてるよ」
「そっか」
(ということは店には
俺とナミさんだけか
……気まずい)
そう思ってしまい
あからさまに目をそらした。
せっせとテーブルを拭いて仕事を始める。
「先日のことまだショック?」
「そりゃそうだろ。
あんなひとがいるところでもらしちゃって、
その上ナミさんに恥を押し付けちゃって。
なんで俺は怒られないのかって疑問に思うほどだ」
(むしろ怒ってくれたほうが楽まである……)
ナミに聞かれて、
ソソグは顔を合わせずに仕事を続けた。
そんな受け答えをされても、
ナミは明るい声で話しかける。
「いいのいいの。
それに誰も気にしてないじゃん」
「俺が気にしてるんだっての!
ナミさんがそういう目で見られちゃって」
「確かにリイちゃんが
『褐色ロリのおしっこなら飲んでみたいかも』
なんていい出しちゃって大変だけどね~」
ゲラゲラと笑いながらナミは言った。
だがなんだか冗談に聞こえなかったソソグは
どうしたらいいか分からず、
顔をしかめる。
「本気にしないの~。
リイちゃんがそういうひとだって知ってるし、
見れば分かるでしょ」
「そうだけど」
「それに女の子には割と珍しくないんだよ。
男の子は知らないかもしれないけど」
気を使ってくれているのか、
本当かどうか分からないことを言う。
それからナミはカウンターの裏へ。
カップとコーヒー豆を用意しだす。
「今日も飲まないの?
お店に来て一番のコーヒー」
「飲まない」
「じゃあ、ナミちゃんが淹れちゃうよ~」
「あ、ああ」
ソソグの返事を聞くと、
ナミはコーヒーの準備を始めた。
まずはお湯を沸かす。
量は適当に入れてれるようだが、
テキパキと動いてる。
(なんかナミさんも慣れてきたな)
ナミの手付きを見てそう思った。
豆をコーヒーミルに入れるのだって
どのくらいがいいのか分からなかったのに、
今は二杯分の豆を入れた。
「俺は飲まないって」
そういうが、
ナミは鼻歌を歌って返事をしない。
聞いてないふりをしてナミは、
気にせずにコーヒーミルを回していた。
まだまだこちらはぎこちないが、
一定のスピードで回すということは
意識しているようだ。
お湯が沸くとちゃんとカップを温める。
さらにドリップポットに
お湯を入れて温度計でチェック。
コーヒーにするお湯の温度も
ちゃんと分かっていそうだ。
コーヒーミルを回し終えると
あとはちゃっちゃとコーヒーを注いだ。
やっぱりふたり分ある。
店主のものだと思ったが、
それはソソグに差し出された。
「これ飲んで」
「コーヒーはいい」
そう答えるが
目の前の飲み物から漂う香りに鼻は動いた。
「いいから飲んで。
先日せっかく買った新しいお豆
使ってるんだよ?。
ドタバタしてて飲んでないでしょ?」
「確かにそうだったが、
ショップで試しに飲ませてもらってるぞ」
「でも少しだけじゃん~。
いい匂いだよ~。
ソソグくんが、
ナミちゃんの好みだからって
選んでくれたんだよね?
でも本当はソソグくんが飲みたいから
選んだんじゃないの~」
(いや、本当にナミさんに似合う
って思って選んだんだよ。
けど、最近飲んでなかったせいか目が離せない)
「冷めないうちに
飲まないとおいしくないよ~」
(知ってる。
アイスならまだしも
ホットで作ったならホットがいい)
引きずられていると分かっていながらも、
自身の『意地』『申し訳ない気持ち』
みたいなものがじゃまをしていた。
そんなソソグの目線に
気がついているからか、
ナミは冷蔵庫から業務用の牛乳を取り出す。
「ミルクを足すと、
ナミちゃんの小麦色の肌のような、
おいしそうな色になっちゃった」
注ぎながらいやらしい実況を加えた。
言葉ではなく、
ナミの言い方がいやらしい。
そしてキスするように口をとがらせて、
ちらちらソソグを見ながらカップに口をつける。
「うん、おいしいなぁ。
ソソグくんの見立てどおり、
ナミちゃん好みだ~」
(くっ、ナミさん淹れるのうまくなってるわ。
ちゃんと本来の香りがでてる。
多分ちゃんと飲んでも風味が損なわれてないんだろうな。
それでいてブルーマウンテンに近い香りだ
……それなら多分味も予想通りのはず――)
「――いただきます」
ソソグの妙な頑固心は崩壊した。
ナミの返事を待たずに、
すぐにカップを手に取り口に運ぶ。
返事の代わりにナミは笑みを浮かべている。
「おいしい」
「でしょう。
いいお豆コリコリしたんだから」
「ナミさんが豆っていうといやらしい」
「それはソソグくんがムッツリスケベなだけ」
ニヤリとした顔を見せてきた。
ソソグは恥ずかしいからか
少し顔を赤くしている。
「だけど、今日はこれだけにしておく。
また、もらしちゃうからな」
キョロキョロと周囲を見ながら言った。
それから殻になったカップを返す。
「いいじゃん、
コーヒーは悪くないんだし」
「だったら俺が悪いじゃん」
「それも違うよ~。
おしっこだって生理現象なんだから、
誰も悪くないってこと」
「そういう言葉あまり使うもんじゃないぞ」
「えー、えっちな言葉じゃないじゃん。おしっこ」
「……話してたら、
また行きたくなってきた」
ソソグは言いにくそうに言った。
我慢できないほどではないが、
先日の件もありすぐに行きたい。
ナミはゆっくりとうなずく。
「いいよ、行ってきな。まだ飲む?
ナミちゃん用意するけど」
「今日はもういらないって」
ソソグは早口に、
足早に奥へと駆けていった。
「もうひと押し。
これはナミちゃんが一肌脱ぎますか」
そんなソソグの背中を見てナミは一息ついた。
#
ソソグがお手洗いから戻ってくると、
いつの間にかリイとテラダが来ていた。
テラダはパソコンに向かって作業中。
リイはカウンターに頬杖をついてナミを見ている。
「今日はナミちゃんが淹れるっすね」
コーヒーを頼まれたからか、
ナミがコーヒーミルをぐるぐると回していた。
手間をかけさせていると
感じたソソグはナミに声をかける。
「コーヒー淹れるなら俺がやるし」
「ううん、ナミちゃんだってやるよー。
ソソグくんはちゃんと見ててね」
「あ、ああ」
(多分、自分がちゃんと
コーヒーを淹れられてるか
見ててほしいんだろう。
前にも練習してたし、
ナミさんはナミさんで
俺にばかりやらせたくないのかもな。
先日のこともあるし)
そう思いながらもソソグは
ナミの仕事を見ることにした。
(だが、まるで
『これから一世一代の手品をするから見守っててね』
みたいな言い方にも聞こえたな。大げさか)
考えながらも黙って
ナミの仕事を見ていると、
ショウとミチオも戻ってきたようだ。
「お、今日はナミが淹れてるのか」
「俺達の分も頼むぜ」
「はいはーい」
ナミは上機嫌にオーダーに答えた。
だがソソグは注意深く
店内を見つめる。
(あのときのひとたちが揃った。
確かにナミさんの言う通り、
気にしては居ないみたいだが)
モヤモヤと考えていると、
ナミは意外にも早く
全員にコーヒーを配り終えた。
さっき断ったからか、
ソソグの分はない。
手持ち無沙汰になってしまって
どうしようかと思ったところで、
「はい、みんなにコーヒー淹れられたね。
ここでナミちゃんから重大発表があります~」
ナミが大きな声を上げた。
みんなの視線がナミに集まる。
「おっ、ソソグっちとの関係大発表っすか?」
「茶化すなオタク。
アイドルに『お水おいしい?』
って聞くレベルの愚問だぞ」
「戦友ショウ、なんか聞いてるのか?」
「なんも」
(俺も聞いてない。
っていうかさっきふたりで
話してたときにも、
なんかするとか言ってなかったし。
どうなってるんだ?)
驚くというより
不穏な感じを覚えた。
ソソグは少し眉をひそめてナミを見る。
「実はねー、ナミちゃんはー、
サーフィンショップの娘なのにー、
サーフィンできないのー」
「えっ!?」
誰よりも真っ先に声を上げたのは
ソソグだった。
特に気にせずにナミは続ける。
「ちょっとダサいかもしれないけど、
今練習中なんだよ」
「な、ナミさん、
いいのか言っちゃって」
ソソグは慌てて
ナミのそばに駆け寄った。
だがナミはにっこりと、
まるで肩の荷が下りたような笑顔をしている。
「いいよ~。
おもらしなんてしちゃったんだから、
これ以上の恥はないかなって」
「そ、そうだが……」
ナミに言われて首をひいた。
『もらしたのは俺だ』
と言いそうになったが、
なんとか飲み込んで短い言葉にする。
「そんなナミっちのこと
気にするなんてね~。
ソソグっちは知ってたっすか?」
さすがに不思議な行動に見えたようだ。
リイはニヤニヤとしながら聞いてきた。
他のみんなの視線もソソグに移動している。
「うっ」
ソソグはさらに体を引いた。
逃げる体制になってしまうが、
秘密を打ち明けたナミの方が堂々としている。
「知ってたよ~。
初めて会ったときに
見られちゃったんだ。
ナミちゃんの恥ずかしいところ」
ナミは少しうつむき、
もじもじとした動きとともに言った。
「な、なんだその言い方」
間違いなくからかっているのが分かった。
のだがいつもどおりの勢いでは言い返せない。
「そうでしょ~。
お父さんしか知らなかったんだよ~。
だからお店が閉まって、
ひとが居ない時間に練習してたのにな~。
ソソグくんが偶然やってきちゃうから」
「それでナミを見てたら
海に落っこちたわけだ」
ショウは納得したように口元を緩ませて、
ソソグを見た。
ソソグはなんだか悪い気がして目をそらす。
肯定も否定もできない。
(店主はいいが、
ナミさんが常連たちにどう思われるか……。
ナミさんはそれが怖くって秘密にしてたんだろう?
もしあれこれ言われるようなら
俺が守らないといけないし、
ナミさんを泣かせるようなことがあったら――)
「いいんじゃないっすかー。
ギャップがあって」
最初に声を上げたのはリイだった。
それもとても明るく、
ゲームのキャラが新しいスキルを覚えて嬉しいと
思っているような表情だ。
「ひとには思わぬ欠点があるんだ。
もちろん逆もしかり」
続いてテラダがメガネを直しながら言った。
こちらもリイと似たことを
思っているような表情だ。
「サーフィンショップの娘だから、
サーフィンができなきゃいけない。
鶏の子供はひよこでなければいけないなんて考えは
前時代的だぜ。
それに練習中ならいいじゃねえか。
人生まだまだ長いんだから」
ミチオも大きな声で言ってくれた。
ナミの不安を
すべて拭き取ってくれるような言葉と、
豪快な口ぶり。
「みんな、ありがとう」
ナミは嬉しそうに笑って、
ペコリと頭を下げた。
まるで誕生日を
お祝いされたような状態だ。
ソソグはなにもできずに話を聞いている。
「案外バカにされなかったね」
ナミはなぜかソソグに向かって言った。
まるで『先日のこともみんな馬鹿にしないよ』
と言いたげな口ぶりだ。
周囲はそんなふたりを特に気にせず、
また各々のことをしている。
考える時間はありそうだ。
それでもソソグは眉を潜めて考える。
(だがまたナミさんに
恥をかかせてしまった……。
いいのか俺?
ずっとナミさんにおんぶにだっこで?
たしかにナミさんは
どうしてか分からんくらい優しい。
俺のこと気にかけてくれている。
それでここまでさせてしまった)
考えている間もナミは
ソソグを見つめているだけ。
ソソグの行動を待っているかのようだ。
(ナミさんはどうしてほしい?
多分俺がおもらし事件のこと気にせずに、
いつもどおりにしてほしいんだろう。
それでいいのか?
ナミさんに罪――のようなものをかぶせたまま、
俺はのうのうと生きてていいのか?
俺は絶対罪悪感持ったままバイトするぞ?
それでナミさんと今まで通りの付き合いができるか?)
口元が強く結ばれていった。
(だとすれば、
俺はナミさんのためにも、
自分のためにも、
ここで言うべきだ)
ソソグは両腕の強く握って決意。
「お、俺からも重大発表いいですか?」
声を上げた。
その場から逃げ出さないように
自分の足に強く力を入れる。
「今度こそナミっちとの
お付き合い報告っすか!?」
「リイ、君はライブのMCで
言葉を探すアイドルに
『がんばれー』
って声を上げるタイプのオタクなのかい?」
「戦友ショウ、なんか聞いてるか?」
「当然知らないな」
周囲の視線はまたソソグへと向けられた。
緊張する。
学校で行われる
発表会とかとわけがちがう。
だが尿意はないので大丈夫だ。
「ごめんなさい、
あのときおしっこ漏らしたの俺なんだ」
場がシーンとした。
一度出たおしっこと同じで、
一度話したら止められない。
そう思って割り切って話を進める。
「それでナミさんが
俺に恥をかかせないために、
自分がもらしたって。
俺がフォローしたように
見えたかもしれないが、
フォローされたのは俺なんだ」
かばってくれたナミの方を見た。
驚いたが、嬉しそうな笑顔だ。
まるでプロポーズでも受けたような表情だ。
そんなにカッコいいものではない
と思ってからもう一度前を向く。
「ナミさんに初めてあったのも、
俺が漏らしたのがきっかけだ。
ナミさんがうまくごまかしてくれて、
それでいてこんなに
いいバイトまでさせてもらって。
だからナミさんだけが、
恥をかくようなことに
なってほしくなかった。
だから俺は今ここで正直に言って、
謝りたい」
ソソグは可能な限り頭を下げた。
少しふらつくもなんとかする。
「つまり、ただのコーヒーの飲みすぎか……。
あっはっっはっは」
最初に笑い出したのはミチオだった。
店の外まで、車の音や電車の音も
かき消しそうな大声で笑い続ける。
それから連鎖するように
他の常連たちも声を上げて笑い始めた。
釣られてかナミも笑ってる。
「えっ!? えっ!? ええっ!?」
(正直怒鳴られたり
殴られたりする覚悟だったのに)
ソソグとショウだけが
店内で笑っていなかった。
思わず顔を上げてアワアワと
みんなを見つめる。
笑ってばかりで顔を合わせてくれない。
「ナミっち優しいな」
「いい姉貴分を持ったな」
笑うのに満足したからか、
リイとテラダが優しげな、
羨ましそうな目をソソグに向けた。
笑いが収まったところで
ようやくソソグは疑問を向けられる。
「……怒らないのか?」
「おもらしくらい誰だってあるさ」
「俺なんて会社で
やったことあるぜ。
人生は恥をかいて生きるものだ少年」
立派な社会人をやっていそうな
テラダもミチオも、
ソソグを励ますように言った。
どこにも怒りや呆れを感じない。
「おもらし属性なんてかわいいっすよ~」
リイもいつもどおりに、
アニメの話をするように言った。
被害者であるナミと
同じ女性なんだからなにか言われて
当然だと思っていたのに。続けて、
「あ~しはショタのおしっこなら飲めるっすよ」
「変態じゃねーか」
思わずいつもの調子で言い返してしまった。
「このオタク出禁にしよう」
「なにお~、
テラダっちだって、
興味あるじゃないっすか!」
「飲むとは言ってないでしょう!」
またリイとテラダが
いつものプロレスを始めようとした。
「ま、まあまあ」
ソソグもいつもどおりに
ふたりをなだめた。
するとまたソソグに
優しげな笑みを浮かべる。
「それはそうと。
あーしは気にしないっすよ。
大人にだってそういうエピソードあるっす」
「体質だからしょうがないんだろう。
僕も気にしてないよ」
「初めてのバイトで、
しかも見知らぬひとたちに
囲まれて働いてる。
仲良くしてても、
どこかでストレスためてたんだろう。
ソソグは膀胱に来ただけだ」
そう言われてソソグは
目頭が熱くなるような感じがしてきた。
どうしてだろうか、
理由は分からない。
ホッとしたからか、
みんなに許されたことが嬉しかったのか。
「ね、大丈夫だったでしょ」
ナミがソソグの顔を覗き込んできた。
こちらも嬉しそうな笑みを浮かべている。
ソソグはどう返せばいいか分からないが、
「ありがとう」
それだけは言うべきだと思って口にした。ナミもコクコクとうなずいてくれる。
「ソソグ」
それまで黙っていた
ショウが声を上げた。
やや重たげな口ぶりで低い声だ。
それだけで場の空気は一旦静まる。
「店主、俺……」
忘れていた。
常連たちとナミに許されたからと言って、
ナミの父である店主が許したわけではない。
どんな罰でも受けるつもりで、
ソソグは向き合った。
目を見て、次の言葉を待つ。
「行きたくなったら
忙しくても行っていいぞ。
誰も怒らんし」
まるで『気持ちは分かる』
と言いたげな口ぶりだった。
ソソグは思わず口をぽっかりと開けてしまう。
「……えっ、ナミさんに
恥かかせたのに怒らないんですか?」
時間差でようやく聞くことができた。
ショウは真面目な顔でソソグの問いに答える。
「こんなの人生の恥にもならん。
それにソソグ自身が
悪いと思って反省してるなら、
なにひとつ言うことはない」
それから恥ずかしそうに
そっぽを向いて続ける。
「それにだ……
俺も大人用のおむつはする。
年をとったのか残尿感とか、尿もれがな」
ソソグはどんな言葉を
口にすればいいか分からなかった。
まるでソソグ、ナミ、ショウと
恥ずかしい告白が
連鎖したような流れになっている。
なのでここはショウの恥を
フォローしてあげるのがよいかもしれないが、
それも思いつかない。
「ほら、大人だっておむつはするし、
おもらしに困ってる。
ナミちゃんの言ったとおりでしょ?」
固まっていた空気を溶かしてくれたのは
ナミの眩しい笑顔だった。
空気は溶けたが、
ショウの顔が固まる。
「ナミ、いいふらしたのか?」
「ソソグくんにだけだよー」
悪気がなさそうな、
イタズラしたような、
バカにするような。
ナミはそんな感情を込めながら
言って舌を出した。
「いえ、前に言ったっすよ。
テラダっちも聞いてたっす」
「おいおい、こういうときは
知らなかったふりをしてやってくれ……」
楽しそうに話すリイに、
テラダは頭を抱えた。
まるで自分が同じ恥をかいたように
顔も赤くしていく。
ショウは咳払いをしてから、
「ま、コーヒーはほどほどにな」
そう言ってソソグの肩を優しく叩いた。
「いいはなしだなー」
「いい話か?」
「とりあえずまたサーフィン行くか」
「そうだな」
「あーしも大会に向けて育成再開するっす」
また何事もなく時間が進みだした。
ソソグはそれを見て
体の力が抜けたように、
カウンターによりかかる。
それから呆然と、
始まる日常を見つめていた。
するとだんだんリラックスするように、
口元がゆるんでくる。
「こういうのいいな。
こういう場所にひとが集まって、
いろいろなことがあって、
みんなで同じコーヒーを共有して、
またみんなそれぞれ好きなことしてる。
なにがあっても勝手に平穏に戻っていける場所、ほしいな」
「うん、ナミちゃんもそう思ったよ」
「コーヒー、俺の分も淹れるか」
ソソグはつぶやいてから、準備を始めた。
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