初めての戦闘
「それじゃぁ準備はいい、雪?」
(うん!少し怖いけど頑張ってね!メル姉!)
「えぇきっと勝ってみせるわ」
【武装召喚】夜桜
メルと白雪の準備が整うとメルは能力の武装召喚を使用しその手に紫色の刀を持ちゆっくりと散歩でもするかのように優雅に歩き出し鎧騎士に近づいて行く、一定の距離に近づくと鎧騎士に突然魔力が宿り鎧騎士の兜部分が赤く光りだし鎧騎士は動き出したのだった。
次第に距離が近づいていく両者、獲物から見ると長い槍の武器と刀では鎧騎士の方が有利ではあることは明らかだが、メルはそんなことお構いなしに距離を詰めていった。
そして等々メルは騎士の攻撃圏内に入ると騎士は予備動作でメルを真っ二つにするために横からの薙ぎ払いを繰り出した。
(見た目よりも早い)
その攻撃は予備動作などがなかった故に早かったが問題なのはその攻撃派の威力がとんでもないことだった、予備動作がないのだからほぼ不意打ちといっても過言ではない一撃である。そんな一撃をメルはバックステップでなんの焦りもなく軽々しく交わすと次に襲ってきたのは薙ぎ払いの副次効果である突風である。
その突風はかなりの勢いでもっと近く似た場合吹き飛んでしまうのでは?と感じさせるほどである。予備動作がない攻撃でこれなのだ、この騎士が繰り出す攻撃はどれも即死級の攻撃であるとメルは判断する。
メルが騎士を観察している間にも即死級の攻撃は繰り出されており二人の攻防は激しさを増していった、騎士はメルを排除するために攻撃の手を緩めることなくその武器を奮っていた。
メルが騎士の動きを観察している数分間メルは騎士の攻撃を全て躱しているが、相手である騎士はどう見てもスタミナがあるようには見えないことからこのままではメルが先にスタミナが切れてしまう為、戦況を見ればメルが圧倒的に不利に見えた。
鎧の騎士は今の攻撃ではメルを仕留められなと判断し数歩距離を置くと次の瞬間体中から凄まじい魔力が溢れ出しその魔力は騎士に纏わり付くと戦いが更に一変した、その後からの騎士の攻撃は先程の攻撃とは比べ物にならないほどの数と威力に加え魔力を使った攻撃も追加されていた。
先程よりも激しい連撃を繰り出している騎士の縦横無心の攻撃を紙一重の見切りによって完璧に避けているメルだった、しかし攻撃が全て避けられると騎士は即座に次の攻撃として周りに火球を複数出現させるとメルに照準を合わせ火球を放った。
「!!」
とっさの判断で後ろに飛び直撃は回避したが余波までは回避することはできなかったメルだった、彼女の手には軽い火傷の痕が残ってしまっていた。
「魔法まで使えるなんてね、でもこれである程度のパターンは分かったし力の使い方も見せてもらったしこれなら」
ある程度相手の騎士の動きを観察したメルは今までの防戦を辞め遂に攻めに転じることにした。
「確かこうよね?」
メルは先程騎士がやっていたように魔力ではないが神力を騎士がやったように力を体に纏わり付かせるようにしてみるが・・・・
(意外と難しいわね?でも実際見た後ならなんてことはない!)
少し乱れたがメルは完璧に近いほどの精度で神力を身に纏った、一般的にはこの使い方は身体強化という技になる。この技は魔剣士になった者の中ではできて当たり前の技であり初歩中の初歩の技なのだったが魔剣士になる前では会得するには最終学年にならないと不可能に近いとされている為魔剣士の中では基本だが学園ではかなりの高等テクニックだったりする。
その高等テクニックをメルは見ただけで使えるようになってしまったのだ、ここに来て彼女の才は完全に開花した瞬間であった。
身体強化を終えるとメル自身にかつてないほどの力が内側から感じられた。
「すごいなこれは」
しかし、物思いにふけっている暇など目の前の騎士は与えるわけもなく強化の施された体で一瞬にしてメルの背後に回り込むと槍を勢いよく振り下ろすのだった。その一撃は一般の魔剣士どころか精鋭の魔剣士ですら受け止めることなどできないほどの一撃である、仮に防御に徹したところで盾にした武器ごと体を両断されてしまう結果になるだろう。それほどまでにこの振り下ろしは高威力なのだ。
(受け止めるのは不可能ならば!)
騎士が放った一撃必殺の一撃はメルに対して無慈悲にも振り下ろされた、振り下ろされた結果地面は大きく陥没し余波で周りに散らばっていた床の破片や死体が吹き飛ばされるのだった。そんな一撃を振るってなお騎士が持っている槍には傷一つ無かったのは騎士が持っている槍もまた神器であったからに他ならなかった。
振り下ろした槍を持ち上げようと腕に力を入れた騎士だったが動かそうとした槍がビクともしない事に気がつくと、躊躇いなく自らの獲物を離し距離を取るのだった。そして距離を取った瞬間騎士の首あたりがあった空間に何かが通り過ぎ騎士の一撃によって舞い上がった土煙を払いのけるとそこには、槍をかわし地面に刺さった槍を動かないように足で固定しながら騎士に向かって刀を抜いているメルの姿があった。
確実に仕留めたと確信していた騎士はメルの生存に同様?したのかその場から動くことはなくじっとメルを見つめているかの様であった。
騎士が放った一撃には確かにメルをしてもまともに当たれば絶命は避けられなかったほどの一撃であった、メル自身も結果をすぐさま予測し受け止めることを諦め流すことを優先した結果がこの状況になる。
真正面からあの一撃を受けるのではなく刀を傾け攻撃のベクトルを地面に向け自身にはこないよに完璧にコントロールしあの一撃を凌いで見せたのであった。今言った内容は本来かなりの技術が必要になる、メルの様なまだ若い者が習得できる類の物ではないが彼女の才能がそのあり得ない結果を生み出してしまっている。
「次はこちらから行きますよ?」
獲物もなくじっとしている騎士をメルは見据えると刀を鞘に戻し剣に神力を纏わせ騎士との距離を無くすべく足にも力を纏わせると一瞬にして騎士との距離をゼロにした。
(全体的に硬そうな鎧だが鎧には確実に隙間があるはず、ならばそこを狙えばいいだけ!)
メルのスピードに騎士は全く反応することができず気が付いた時には目の前にいたメルは騎士の後ろに移動しており抜き放ったであろう刀の刀身を見る暇さえない程でありいつの間にかその刀身は鞘に収められていた。
そして次の瞬間には騎士の鎧にはいくつもの傷が生まれ鎧の関節部分全てに斬撃の跡が残されておりそこから魔力が流れ出てしまっていた。
メルが行ったのは重装歩兵に対する対処方法である、鎧を着る際には何があっても覆えない場所が存在する。それが関節部分である、そこを鉄や何かで覆ってしまえばそれを身に纏うものは動けなくなってしまう為どうしても関節部分は防御は薄くなってしまう。メルはそこを騎士の知覚できない程のスピードで接近し関節すべてに斬撃を放ったのだった。
関節全てを切られた騎士はその場に膝をつき動かなくなってしまった、はたから見ればメルの勝利に感じるが、未だメルは警戒をいていなかった。
確かに動かなくなったが依然と騎士からは大量の魔力が感じられているからである。
ゆっくりと近ずいていくメル、いつ何を仕掛けてきても対応できる様に慎重に慎重を重ねゆっくりと観察しながら騎士に近ずいていった、ゆっくりしていても確実に近ずいている為確実に距離が縮んでいきメルと騎士の距離はあと少しで0になると言った距離で騎士に異変が起きた。
「!!!」
膝をつき顔を地面に向けていた騎士は急にメルを見る様に顔を上げたのだ目には以前に赤い光が宿っており何を考えているのかは理解できなかったが攻撃をしてくる気配はなかった為さらに混乱してしまっているメルであった。
(攻撃の意思は無いみたいだけど一体何がしたいのか分からないわね)
「ヴァイ・・オレット・・・サマ・・ノ・・ケイ・・ヤ・・ク・・カク・・ニン」
(ヴァイオレット?誰なんだそれは?契約といえば私と雪のことだ思うが名前が違うしな)
それを最後に騎士は全く動かなくなってしまい通っていた魔力も尽きた様に反応がなくなった。
『近くに魔装に再利用できる素材があります』
(なに?魔装?確かに私と雪が契約した時にそんな名前の項目が増えていたともったが使い方が分からなかったからほっておいたんだった)
『素材を変換しますか?』
目の前にYES/NOの文字が出現し取り敢えず物は試しとYESを選択するメル。そして次の瞬間には目の前にあった鎧の騎士が明るく発光するとその形を小さな球体に変化させるとその面積はどんどん小さくなっていき限界まで小さくなるとメルがはめていた指輪に吸い込まれて行き消えていった。
【灰騎士の鎧】
・生涯ただ一人を主人と定めた忠誠に熱い騎士が身につけいていた鎧、其の者は主人が長い眠りについた後も其の者に不届きものが近づかぬ様に長い年月守護し続けたという、それはまさに騎士の中の騎士と言えるだろう。
この鎧は長い年月を鍛えられた鎧であり長い年月を得て進化を果たした鎧であり鎧の形を任意で変化することができる。
(この説明からするとこの騎士は」やはり白雪を守っていたのではないのか?だが先ほどこの騎士はヴァイオレットと言ったがそれが白雪と何の関係があるのか?)
「まぁ、取り敢えず難しいことは帰ってからにして先ずはこの場所から抜け出さないとね。でもやっぱり少し試したのよね」
そしてメルは騎士を取り込み新たな力を得ると魔装をまとった、力を発動させるとメルの体には灰色軽装の鎧が体全体を覆い尽くした。体部分は普通の鎧とそこまでの変化はなく問題は兜にあった、この魔装の兜は敵を威嚇する為なのかどうかは知らないがかなり厳つい見た目をしている。だた威嚇するという重要性を知っているメルはこのデザインを有効と判断したが色だけは看過できなかったのか灰色から黒に変化させた。
(灰色は確かに目立たないが暗闇に紛れるには余りにも頼りない)
その結果この場にはかなり厳つい殺戮者の様な見た目の黒騎士が顕現しその黒騎士の背景には死体が散らばった形になっており何故かかなり様になっていた。
「では行きますか!」
鎧を身にまとうと満足したのかそのまま鎧を脱ぐ事なくこのダンジョンを抜け出すために足を進め始めたメルであった。
「面白そう!」
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