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無能?勝手に言ってろ!  作者: カシム
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契り                                                                

「んっ?ん〜、えっ?」


 白雪は長時間の睡眠から目が覚めると白雪の体は先程の会話をしたメルに抱き締められている状態であり、白雪の事をとても大事そうに抱き締めていた。

 メルは白雪の体より大きいため抱き締めれば白雪の体全体を覆うことが出来る為現在の状況は抱きしめているというよりも包み込まれているといったほうがこの状況にはぴったりであろう。


 メルは白雪をさながら逃さない様にと思えるほどの力を加えしっかりと抱き締めており白雪が少し動いてもビクともしなかった、この状況をなんとかしようとするが残念ながら白雪の力ではメルを引き剥がす事はできなかった。

 白雪は一回引き剥がそうとすると断念しそれ以上は引き剥がす事をやめメルに包まれる事に身を任せた。


そのまま抱き締められていると引き剥がす必要もないのでは?と考え始めた白雪はこの状況に何の不都合もないことの気が付く、確かに動けないことはあるがそもそも動いたところで今寝ている

ベッドからは降りることは出来ない為起き上がったところで何もやることがないのである。

 

それよりも抱き締められている事の対しての安心感を手放すことのほうが重要であった、この場で身を起こせば彼女も起きこの安心感は消えてしまうかもしれないそう感じた白雪の行動は決まっていた。それはまさしく現状維持である。


 今白雪が感じているこの安心感は彼女が泣いた折にメルに抱き締められたがその時にも勝るとも劣らないほどの安心感が白雪を包んでいたためそれを拒む考えはその時には白雪の中から抜け落ち、寧ろ白雪からメルの胸の中に自身の顔を押し付け母親に甘えるかの様に抱き締め返した。


***


 メルはいつもとは全く違う何か異様な感覚を覚え目を覚まし、その正体を確認するために重い瞼を持ち上げその正体がいる自身の腕の中を確認するとそこにはなんとも可憐な寝姿の少女が自分の胸に顔を埋めながら寝息を立てて眠っているこの展開に驚きながらも内心かなり嬉しかったメルであった。


その後白雪を起こすかどうか迷い大いに悩んだ結果、まだいろんなことを聞かなければいけないことを思い出しもっと「この至福の時間を味わいたい!」という願望を鋼の意志で抑え込み白雪から体をゆっくりと離すと取り敢えず背筋を伸ばし自身の頭の覚醒を促す。そして段々頭が覚醒してきたところでようやく白雪を起こすことになった。


「白雪さん?そろそろ起きましょ?まだ聞きたいこともあるしいつまでも寝ているのは体に悪いわ」


乱れた服装を直し白雪がいた部屋に来たときと同じ格好になると、ベットに一人で眠っている白雪の肩を優しく擦りながら意識の覚醒を促し始めるメルであった。


「んんっ~」


しかし、そう簡単には白雪は目を覚ますことはなく少し揺すった程度では寝返るを打つだけであった。そしてその寝返りの結果、はだけた服の胸部からは決して小さすぎず大きすぎない胸がチラッと見えてしまっていた。そのまま下に目線を移すと際どい部分もはだけ始めておりなかなか扇情的な格好になってしまっていた。


”この子はまたこんな格好をして、全く仕方がないわね”


ここに来たときも白雪は他人には見せられない様な格好だったことを思い出しメルは丁寧に白雪の心もとない防御力の服をなれた手付きで直し始めた。そして乱れた部分を全て直し終えようとした時突然白雪からの声がした。


「一人にしないで」


寝言だろうか、その声がした瞬間メルは白雪が起きたのかと思い白雪の顔を確認したが残念ながら白雪は目を開けておらず、どう見ても寝言であった。


しかし寝言だからこそ、それが今の白雪の本心だと確信出来てしまう。白雪は寂しかったのだ急に前の命が終わり突然この様な場所に移されベッドから出ることも出来ずに長い時間一人で過ごしていたのだから寂しくないはずがなかった。


白雪の本心を聞いてしまったメルは今までの白雪には大切に思った人がいなかったのではないのか?だからこそ彼女はいつも一人なのだと感じ寂しがっていたのでは?とメルの場合は自身に才能がないために大切な人が離れていった他自身を産んだ拍子に亡くなってしまった。


自身に大切な人がいない点に関してはメルと白雪は同じ境遇になっているのではないだろうか。

 そして人はそんな自信と同じ境遇になっている者を見つけるとその者に親近感を感じてしまう生き物なのだろう、結果メルも白雪に対して親近感を感じてしまっていた。


ない者同士お互いを埋め合えるのではないだろうか?と感じていた。


「ならば私と一緒に来ませんか?」


 その言葉は決して返答を求めた言葉ではなく完全な独り言であった、今のメルは家から追い出されることが決定してしまっているため今後の生活は保証されていない、そのためまともな人ならそんな不安要素を持っている人と一緒に生活などはあまりしたくないだろう。


”いけませんね、今の私にそんな余裕はないのに”


「ほんと?」


!!!!!


その独り言は聞かれてしまっていた、何故?と考えたメルだったが自身は今メルを起こそうとしていたことを思い出し自身の迂闊さを呪わずにはいられなかった。


「ホントですか?ほんとに私を連れてってくれるんですか?」


「いや!今の発言はただの独り言ですので」


「だめですか?」


白雪は必死である、なにせこれ以上こんな何もない空間に一人でいるのは耐えられそうになく目の前にいるメルには側にいてほしいと感じてしまっている。ここでメルを行かせてしまえば必ず後悔すると白雪の勘が叫んでいる。


「お願いします!仕事でも何でもします!だから私を置いて行かないでください!」


必死の懇願を前にメルは大いに悩んでいた。白雪を家に連れて行った場合彼女もひどい仕打ちを受ける可能性が無いわけではないからだ、特に弟には何かしらされそうとメルは考えていた。

 そして問題はそれだけではなく、白雪は仕事でも何でもすると言っていたが彼女の見た目は大目に見ても14歳くらいにしか見えない為働くことでが出来ない可能性もあるのだ。


そうなってしまえば働くことのできる者はメルしかおらずメル一人で白雪までも養っていけるかと言われれば安易に可能とは言えない。そうなってしまえばお互い不幸になってしまう。

 だがこのまま白雪をここに置いていくこともあまりしたくわなかったのも事実。この先の問題に対してメルは未だ解決策を持ち合わせていない状態なのだ。


「私に魔剣士としての才能があったら良かったんですが」


 魔剣士として国に仕える待遇になればもらえる給金は一気に跳ね上がり白雪を養うことも可能になるが、以下のメルは剣士としての才はあれど魔剣士として一番重要な魔力が存在しない。これではそうあがいても魔剣士になれないし他国の魔剣士や魔族達に勝つことや目の前に立つことすら出来ないのだ。


それはメルが家を追い出されるきっかけになった試合で十分に証明された事であった。この世界では魔力などの力が必要不可欠なのだ。


「才能?メルさんはなにか才能がないんですか?」


「えぇ、そういえば私のことを話していなかったわね、ごめんなさい。実はね私には魔力を扱う才能がないのよ、だから私はあと少しで今住んでいる家を追い出されるのよ。そうなれば貴方にも厳しい生活を強いることになってしまうから、だから貴方を連れて行くことは出来ないの。本当にごめんなさい」


自分で言っててこんなからだに生まれてきたことを再度悔やんでしまい気持ちが沈み始めた時白雪がメルに質問を投げかけた。


「あの、魔力ってなんですか?」


???


”魔力を知らないの?もしかしたらこの子生まれてからずっとここにいたのかしら?でも何故この子をここに閉じ込めて置かなければならないのか、不可解だわ”


今更初めてここに来たときの疑問を思い出したメルは再度考えるがやはり答えは見つからず取り敢えず白雪の質問に回答することにした。


「魔力というのはこの世界で生きてく上で必要不可欠の力で今では色んなものが魔力によって運営されています言うなれば魔力は生活の基盤になっているんです。」


「でもメルさんはその魔力が無いんですよね?生活に支障はないんですか?」


「えぇ、白雪さんのいうとおりで最初はとても苦労しましたが私の場合生まれた家系が良かったのでそこまで苦労はしませんでした、でもこの年にもなって魔力が扱えないのは流石に厳しいことにってしまっています。だから先程も言ったとおり私は家から愛想を尽かされ追い出されることになっているんです」


「魔力さえあればなんとかなるんですか?」


「そうね、魔力があれば私は魔剣士になることが出来たかもしれないわね。でもねもしもなんて話しても虚しくなるだけだから私は考えないようにしたの。意味がないから」


そう話したメルの目はどこか諦めたような感じがしていた、白雪はその感情をよく知っている、物心ついた頃から家族がほしいと望みついには諦めてしまった白雪と同じ目をしていたのだった。

 そこでふと白雪は自身の能力についていくつか思い出しその中にメルの気にしている魔力に関しての手助けができるのでは?と考えると・・・・


「あの~メルさん一つメルさんの悩みを解決できる方法があるんですがどうですか?」


”確か【神力】っていう力があったはず確か説明欄には魔力よりも高位って書いてあったよね?ならその力を使えるようになればメルさんの悩みも解決できるはずだし、それが解決すれば私も連れて行ってくれるかもしれないし”


 白雪の突然の申し出に一瞬驚きそんなうまい話などあるわけがないと直ぐに考えを一蹴したが、白雪の反応を見るとどうも適当に行っているわけではないと判断すると、白雪の折角の申し出を断るのも悪いと思い期待はしていないが話を聞くことにした。


「そうなんですか?それは是非とも聞いてみたいですね」


「えっとですね、この説明をする前に私の本当の姿を説明しなくちゃいけないんです」


「本当の姿?」


勘のいいメルはその本当の姿に自身が抱いていた白雪に対しての疑問の答えにつながっているのではないのか?と直感で感じとっていた。


すると白雪はいつも見ていた自身の色んな情報が記載されている画面を展開しメルの眼前に移動させ白雪の貴重な情報を全て開示した。

 突然白雪の間の前に現れた奇っ怪な画面がメルの目の前に来るとメルはその画面に記載されている文字を読み始め、次第にメルの目は真剣な眼差しに変わっていった。


神器「オリジン」 

         ・神眼

         ・武装召喚

         ・神力

         特殊技能

         ・次元魔法


”神器!?神器ですって!しかもこの最後の説明欄にかかれている内容が本当だとしたらこの【オリジン】っていう神器相当貴重な神器なのかもしれないわね。でもそれほどの神器なら私のこの問題を解決できるかもしれないわね”


メルにはこれ以上失うものはなくものの試し程度の考えていたが白雪の正体を知ると、その驚愕は次第に期待に変わっていき捨てたはずの魔剣士の夢をもう一度目指せるのでは?と考えずにはいられなかった。


「えっと正直な話かなり驚いているわ。でもそれ以上に私はこの問題を解決したいと思っています、だからその貴方の考えに乗るわ」


「本当ですか!ありがとう!メルさん!!それですねさっき見てもらった中に【神力】があったと思うんですけどこの力をメルさんに移植すれば恐らくメルさんも魔力と同じ力を扱うことができると思うんです!」


「なるほど、でもその【神力】とはなんですか?そんな力を使う者がいることは聞いたことがないので」


「えっ?書いてなかったですか?」


「何をですか、いろんな力の名前などは書いてありましたがその効果までは書いてなかったのでその力がなんの効果があるかまではわかりませんでした」


”なるほどつまり白雪さんには見えて私には見えない部分があるということね”


 メルは冷静に白雪の能力について分析し始める、ここで初めて分かったことは自身の情報が乗っている画面には白雪しか閲覧出来ないものがあるということ、自身の情報はある程度相手に見せることができること。

 この結果は都合がいい反面白雪の情報がある程度誰かに見られる可能性があることになり危険視しなければいけない案件になってしまった。


 無闇にこの画面を見せてしまい誰かがそれを見てしまった場合白雪の正体が割れてしまい白雪を狙う可能性を作ってしまう。原初の神器である恐らく彼女の価値は計り知れないだろう、この情報を知ればいくつもの国が白雪を手に入れるために軍や暗部を動かし手に入れようとするだろう、そして白雪は研究材料になってしまうそれは彼女の望むことではないことは容易に予想できる。

 

”なら、私が白雪さんを守るしか無いわね。もしもその力の移植がうまくいけば私にも力が生まれるそうすれば白雪さんを守ることだって出来るはず!しかもこんなかわいい子が私のパートナーになるなんて最高じゃない!”


メルには男の兄弟しかおらず姉妹がいなかった為妹のような存在が欲しいと思ったことは何百とあった、そして今白雪という美少女がメルのパートナーになる可能性に歓喜が起きないわけがなかった。


「それで、どうすれば良いのかしら?」


歓喜に舞い上がる心をなんとか落ち着けて至って冷静な態度を崩すことなく白雪にこのあとの手順について問いかけるメルであった。


「えっと、まずこの力をメルさんに移植するには、その・・えっと・」


最初は流暢に話していた白雪だったが急に歯切れば悪くなり何故か頬を赤く染め何かを恥じらうように体をもじもじさせ何かを言いよどむような感じになってしまっている、さながらその光景はあまにも相手に告白する寸前の状態に酷似していた。


「どうしたの?何があっても私は大丈夫だから話して?ね?」


もじもじしている白雪をメルは姉の様な完璧な包容力で抱きしめ優しく先を促した、すると白雪は意を決したのか「はい!」と答えるとその内容をはっきりと話し始めた。


「メルさん!あ、あの!私の!私の所有者になってくれませんか!」


顔を真っ赤に染め目をつぶりながらも精一杯の気持ちを込めた白雪の懇願であった。


「あの、えっと、その私の力を移植するには一つだけ条件があってそれが私の所有者になることなんです。だから、そのメルさんには私の所有者になってほしくてデスネ」


「えぇ、喜んで。こんな私で良ければ喜んで貴方の所有者にならせてもらうわ」


メルもこの提案には大賛成であったようで、その言葉を聞くとゆっくり白雪に近づき再度白雪を抱きしめると優しく彼女の髪を撫でながら甘やかし始めるのだった。


「それで契約はどうすればいいの?私魔力がないから貴方にパスを繋ぐことは出来ないのよ?」


基本的な神器との契約方法は神器に契約者の魔力を流し込み神器ごとの基準値をクリアすることができれば神器に認めてもらいパスが繋がる、そうすることで神器との契約の証として体のどこかに神器ごとに異なる紋章が浮かび上がる。そしてそれが浮かんでいるものは神器使いになることが出来る。この基準値は神器のランクによって異なり高いランクになればそれに見合った魔力量が必要になる。

 この神器のランクはA→S→SS→SSSとなっている。神器を所有している者の殆どはAランクの神器になりその一つ上の神器の所有者はそう多くはなくSS,SSSに至ってはおとぎ話と言われているほどの神器であり一般的には存在していないとされている。


ちなみにだがA以下のランクの武器は神器ではなく魔剣や聖剣という部類になり神器とは数段劣り、中には希少価値が高いものも含まれているが基本的には神器の劣化版になっている。このランクよりも下の武器はなんの変哲もない魔鉄から作られたただの剣であったり槍であったりと特殊な力がない武器になる。


「それは大丈夫です、そのパス?がなんかは知りませんけど手順は分かってますから!」


「そうなの?ならその手順では私は何をすれば良いのかしら?」


「えっとそれはですね・・・・・!?!?!?!?!?」


当然の疑問をメルが白雪に聞くとまたもや白雪は顔を赤く染めもじもじし始め手元を遊ばせながらもメルに必要な手順を説明した。


「えっと、私と契約する条件は私がメルさんに移植する【神力】に適応で来る体かどうかの検査みたいな感じになります。それでその検査方法なんですけど・・その・・・ねん・まく・せ・っしょ・く・なんです」


「ごめんなさい、最後のほうがよく聞き取れなかったみたいで、もう一度言ってくれないかしら?」


白雪は恥ずかしさのあまり最後の重要な部分のセリフの声が小さくなってしまいメルには聞こえなかったようだった、かなり努力して説明したつもりだった白雪だったが努力が足りなかった事を知らされると絶望が軽く肩にのしかかってきたように重くなるのを感じていた。


”なんで!検査方法が粘膜接触なのよ!私今まで誰ともそんなことしたこと無いのに急にそんなこと言われても!・・・でもしないとメルさんに力を移植できないし私もここから出られないし、でもでも!かなり恥ずかしいし!”


 白雪自身も先ほどまで契約の方法など知らなかったがメルに契約の話をした瞬間に目の前に画面が出現し契約までの手順が順に表示されていき現在の画面には、契約者との粘膜接触による身体の検査と表示されており先に進まなくなっている。


「それで結局私は何をすればいいの?」


白雪のさらなる努力の時間がどうやら来てしまったようであった。






「面白そう!」


「続きが気になるかもしれない」


「期待できそう!」


なんて思った方が居たらぜひとも下の星を1以上お願いします!


ついでにブックマークもしてくれると執筆の励みになります!


感想も受け付けているので辛口でもいいです!ぜひお願いします!

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