神獣
ようやくターゲットである少女がいる地点に到着したがどうやら其処には先に来ていた先客がいたらしい、どうやら彼らのターゲットである雪は彼らが来る前に木陰で眠ってしまったらしく先客を枕にぐっすり眠っている。
『私の質問には答えてくれないのですか?誰かと聞いたんですがもしかして伝わってませんか?』
緊迫した空気の中リーダーはどう返したら良いのか思案しながらもこのまま黙っているのはまずかったがリーダーは目の前にいる先客について知っていることがあった、それを確認するためにも話をするしか無いため少し遅れて返答を返した。
「急に押しかけて申し訳ない私どもは貴方の体に身を預けている其処の少女の保護者です、突然いなくなって探していたんです。本当に見つかってよかった、それで其処の少女をこちらに渡してくれませんか?」
(どうしたんです急に!こんな魔物なんて無視して奪えばいいじゃないですか!)
(黙ってろ!いいか!これは魔物なんかじゃない!今俺達の目の前にいるのは神獣だぞ!下手に刺激して襲われても俺たちに勝ち目はねぇ)
(しっ神獣?!なんでこんなところに聖獣が!話だとこの森のかなりの奥地にいるはずじゃ)
(そんな事知るわけないだろ!問題は其処じゃない!この神獣がターゲットを守っている点だ!)
リーダーは取り敢えずその場で考えた理由を聖獣に話すと相手の反応を伺うがなんせ相手は獣であるその考えなど分かるはずもなくその後の展開も予想することが出来ない。が無理矢理に奪うことも出来ない、先程もリーダーが言っていたが神獣はかなりの戦闘能力を有しており人間とも意思疎通が出来るそれほどまでの知性を持っている。
一節では人間以上の知性を持っているとさえ言われている。そして今彼らの目の前にいる神獣は聖獣の中で最も有名な『九尾』の名を持っている見た目は狐の姿をした金色の毛に覆われた聖獣である。
この聖獣にはいろいろな逸話が存在する、曰く九尾を捕獲し整体を調べようとした国があったそうだがその国は次の日には跡形もなく消えてしまっていたそうだ。曰く九尾は大地の神の化身と言われている。
そんな逸話を残している存在に実力行使などするほど彼らは馬鹿ではなかった。
「そうだったんですか、それは残念ですねこのままこの子をどうしたら良いか迷っていたんですが」
「残念とは?」
ほんの興味だった、この場では保護者が見つかれば良かったと表現するが図の場面でこの神獣は残念と表現したのだその違和感についつい質問してしまった。
「いえ、特に深い意味はないのですよ?ただ私はこの子をとても気に入ってしまいこの子が起きたらどうやって私の物にしようかと思案していたので、そんな楽しいことを考えているときにこの子の保護者かもしれない人達が来てしまったので残念と」
「そっそうだったのですか、だがその子の家族も心配しているので我々は一刻も早くその子を家族のもとに返さなければいけないのですが」
「そこで私からの提案のですがこの子は見つからなかった事にしてくれませんか?もしくはこの付近の魔物に殺されてしまったことに、どうですか?」
これはかなり不味い展開になった、こちらの嘘は取り敢えずは効果があったようだがこの神獣はターゲットの子をかなり気に入ったらしく手放す気がまったくないばかりかこの子を死んだことにして自身のもとに置こうとさえしている。
こうなってしまえば他に手段はない事になってしまう、そう彼らはターゲットを奪うしかなくなった。
いつもならこういった勝てない敵がいた場合すぐさまに逃げるのがやり方なのだが先方にターゲットの話をした時なんとしてもその子が欲しいとのことで前金としてかなりの額を貰ってしまい出来なかった場合彼らは消される可能性が高い、つまり八方塞がりな状況に陥ってしまったのだ。
ここに来る前はかなり簡単な仕事だと考えていたが蓋を開けてみればこの状況である文句無しで最悪の状況である。
「流石にそんな事はできないといいますか」
「そうなんですか?であればしょうがないですね」
話の内容からどうやらこの聖獣はこの娘を諦めた様子だと予想したリーダーは安堵のため息を漏らしターゲットを回収するために一歩近づこうと足を前方に踏み込んだ瞬間。
シュンッ!!
ドサッ!
????
「なんだ?」
不意に後ろを向くとそには先程までは生きていたはずの部下たちの成れの果てが転がっており全員首から上が存在していなかった、辺りを見渡すとすぐ近くに先程まで話していた部下たちの首か転がっている。
一瞬のうちにて誰の部下を数人殺されたことに流石のリーダーも何も考えられなくなり呆然としてしまっている。
「なっ何故急にこんな事を」
「何故?だってあなた達わ私の提案が飲めないんでしょ?ならこのままあなた達を返しても私に利益はなくとも不利益は存在するからよ?それにあなた達この子の保護者ではないでしょ?」
「なっなにを?我々はその子を家族のもとに」
「いいえ違うわね、あなた達はこの子を拐いに来たのではないの?そんな匂いがします。まぁそれが間違いであってもどっちでも良いのだけれど、私の提案を飲まなかった時点でここにいる全員生かすことが出来ないの」
ゆらゆらと揺れる九つの尻尾、先程まではキレイな金色の尻尾だったのに今では部下の血がベットリ付いており中々禍々しい尻尾に見えてしまう。
(クソクソクソっ!!何だこれは!ただの誘拐のつもりが気がつけば今までやってきた部下が一瞬で殺され俺まで殺されかけている!なん何だこれは!)
「へくち!」
突然のこの緊迫した場にはふさわしくない間の抜けた音が聖獣を背にしながら眠っている少女から発せられた、幾ら日があっても今いるのは木陰流石に少し冷えてしまったようで無意識でくしゃみをしていた。
すると聖獣はゆらゆらさせていた尻尾を戻し汚れていない尻尾を使い彼女の体に尻尾を乗せた、聖獣の尻尾は武器にすればかなりの攻撃力を持っているがその毛は最高級のシルクよりも尚ふかふかで気持ちがいいのだろう事は容易に予想がつく。
それを証明するかのように寒そうだった少女の顔はとても幸せそうな顔になっていた。
聖獣はその表情を見るとどこか安心したように笑った気がしたが今の男にはそれを感じる余裕など無かった。
(よし今なら聖獣はあの少女に気を取られている!今なら逃げ出せるかのしれ無い!これが最後のチャンスだ!「グサッ!」へ?)
「何だ?・・・・・これは?俺の体からなにか出ているような?」
「あぁ、そうだな今お前の体を私の刀が貫いているからな」
最後の望みにかけこの場から逃げ出そうと決断した矢先突然の出来事であった。
***
「誰だ?お前ら」
「さ~ね~誰でもいいじゃん?別に」
「おい!不用意に敵と話すな!」
「大丈夫だって、こいつここで殺せばいいだけでしょ?」
突然メルの前に現れた全身を覆い隠した怪しい集団、メルの問いかけに反応したその中に一人はかなり過激な発現をしている。しかもその手にはいつの間にかナイフが握られていた、他のものに視線を向けると他の者達も同様に武器を抜いていた。
「何者だ?と言っても答える訳無よな?」
「あぁそうだな、そんな事言うバカはどこにもいないよ?」
「いいさ、お前は随分と口が軽そうだからボロ雑巾にした後にゆっくりと聴くとするさ」
「あ”ァ”?舐めてんの?俺のこと?」
わかりやすいメルの挑発に簡単に乗ってきた敵は誰でも分かるくらいの殺気をメルにぶつけて来たが当の本人はそれを真っ向から受けても涼しい顔をしている。
【武装召喚・夜桜】
「いや舐めてるのではなくお前なら何か喋ってくれそうだからさ」
「それを舐めてるって言ってんだよ!」
「おい!よせ!一人で殺ろうとする「うるせぇ!」」
おそらくはこの集団のリーダーと思われる男からの声にも従うことなくメルの挑発に乗った男はメルに向かって剣を構えながら接近していく、その速さは常人ならば目で追えるものではなくいきなり消えたと錯覚してしまうほどであるそれを証明するかのように足場になった太い木の枝は跳躍に合わせて粉々になってしまっている。
メルと男の間の距離は一瞬で無くなりメルに向かった男はメルに切りかかると二人が接触した瞬間にその場に砂埃が蔓延し二人を覆い隠した。
その砂埃のせいで二人を視認できなくなった彼らは事の顛末をジッと見守りながら少しするとだんだんと砂埃が晴れてきた。メルに突進していった男はこの集団の中でも一番最後に入ってきたいわゆる新入りだ、態度も悪く仮のリーダーである彼ではなく本来のリーダの命令しか聞かない面倒なやつなのである。
今回に至っても集団で戦うと話し合っていながらこのざまでだ、敵の挑発に簡単に乗りサッサリと
作戦を台無しにしていった。この展開をある程度予想はしていたが彼は目の前の女の予想以上に落ち着いた様子にどこか嫌な予感を覚えながらも視界が戻るまでひたすらに待った。
「作戦変更だ?やつに関して無視しろ、いつもどうり俺たちだけで連携を取るぞ!」
「「「はい!」」」
作戦を伝えている間にようやく砂埃が消えていきようやくどうなったのか知ることが出来る為その場を全員が凝視した、すると中には2つの影が立っていた。
「ぶぁぁぁあぁあ!ゴホッ!ぐぞ!なんだごれ?!」
砂煙が晴れた其処には突撃したはずの部下が標的に首を鷲掴みにされ悶え苦しんでいる姿があった。
「面白そう!」
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