力の把握
帝国との話し合いが終わるとメルはそそくさと家に帰るために天幕を後にし来た道を早い足取りで戻りながら今後のことについていろいろ考えていた。今後帝国のラウンズになった場合恐らく生活の保証は確実である、しかし何らかの役目を負わされる可能性は十分にあるが雪に関することについては拒否することができる為そこまで不味いことにはならない。
だが確実に何かしらの柵が纏わり付くことは許容しなければならない、この提案はメルにとって渡りに船なのだから受けないという選択はなかったがやはりメリットとデメリットは紙一重である。うまいだけの話などは存在しなった。
予想外の結果になったが自身が考えていた予定よりも良い方向に転がった今後に期待をしながらメルは今後どうやって雪を隠していくかを考えはじめた。
先ほどは妥協点を作るために雪の能力の一部を公開したが今後何かしらの方法で雪の能力について言及されるのは目に見えているため如何にかして雪の事は伏せなければならない、他にも同じ神機同士は感知ができてしまうためもし雪が他の神機に近づいた場合雪のことがこの国に知られてしまう。そうなれば高い可能性で雪はこの国に押収されてしまうだろう。
”何か良い方法はないだろうか?この国にも神機使いが存在している為、もし彼らに遭遇したら雪が感知されてしまう”
しかしその問題については簡単に答えなど出ず歩きながら考えていた為いつの間にか家にまで辿り着いている事に気がついたメルは正面玄関からではなく裏口からこっそり入ると誰にも見つからないように気配を殺しながら家にある自室に向かった。
”どうしてメル姉は自分の家なのにこんなにこっそりしているの?それに誰もメル姉を出迎えもしないし”
メルの事象を知らない雪に取っては当然の疑問である、その質問に対しメルは顔を曇らせながら「私はこの家にはいらない存在なんだよ」とだけ言い黙ってしまった。
その対応に雪は自身の無神経さを公開しながら口を閉ざした。
ガチャっ
ようやくメルの部屋の前に着きその扉をあけると中は真っ暗になっていた、家に着いた時は既に夜中になっていたので仕方がない、そして自身の部屋に明かりをつけると中は弟に荒らされたままになっていたのだ。
本来ならこんなに長く部屋を開けるつもりは無かったが成り行きに任せているたらいつの間にか丸2日帰ってなかったのだ。
”いつの間にかそんなに時間が経過していたのか。ん?・・・・・あっ!”
部屋に着いたのに雪から何もアクションがなかった事が気になり指輪を凝視すると先ほどかなり嫌な対応をした事に気がつき目に見えてやらかした!という表情になったメルであった。
「雪?ごめんね!さっきは無意識にだったの!考え事してて!」
何も反応がない指輪に向かって弁明をしている一人女性、はたから見ればかなり危ない人のようであるがメルは至って真面目に弁明している。
先程は今後のことについての答えを模索していたため雪の質問に対して適当に返していたかもしれない、恐らくそれが気に食わなかったのだと勘違いをしていたメルであった。
「ここがメル姉の部屋なの?」
弁明の直後にようやく話し始めた雪だったがその声音には戸惑いの色が感じられた、どうやら予想以上の惨状に感情の処理がうまくいっていないのだろう。
「取り敢えず出てこない?ね?雪」
実体化を促すと思いの外雪は素直に指輪の中から姿を表しメルの抱きついた。
「メル姉、大丈夫?」
メルの胸に顔を埋めながらこの部屋の惨状を見た雪はメルがかなりひどい扱いを受けていたことをしり、自分にもなにかメルの役に立てないか考えるも何も思い浮かばず抱きつき心配するしかなかった。
「あぁ、この部屋を見たらこういう反応になるよね?でもね前だったら辛かったけど今はこんなことは、どうでもいいと感じられるほどには余裕が出てきたんだよ?だからそんなに気にしないで早く寝るぞ」
「・・・・うん」
複雑な感情を処理しきれないまま雪はメルに促されるまま大きすぎるベットに散乱したメルの部屋にあった物を避けながら連れて行かれた雪だが移動するたびにこの部屋の惨状がより鮮明に把握できてしまいこれをやった犯人に対し怒りを感じずにはいられなかった。
そんなことを思っている雪を見ていたメルは内心かなり嬉しい気持ちになっていた、雪が自分のためにこれほどの怒りを感じていると思うと今までほしかった優しさが心のなかに広がってきなんとも言えない満たされる感じがメルの中を支配していた。
「雪、そんな顔しないで。以前の私はもういないの前はこの暮らしが辛かったけど今はあと少しでこの家から出られると思うと楽しみでしょうがない程なの。こう思えたのは全て雪のおかげなのだからそんな顔するな」
二人でベットに入ったあとも雪の表情は変わらずにずっと落ち込んだような表情になっていた為流石にこのままでは眠れないと判断したメルは雪を励まし始めた。
初めのうちは効果ないのかと思ったが次第に雪の表情は柔らかくなっていき全て話終える頃には機嫌はすっかり直っていた。
「ほんと?」
「あぁ、ホントだから今はゆっくり寝な」
「ねぇ、メル姉」
「なに?」
「なんか初めてあったときと口調が違う」
雪は気がついていた初めてあったときはお淑やかな感じがする話し方だったが今はかなり砕けた話し方になっていた。
「あ~アレは令嬢としての話し方だけど雪はそんな他人行儀な話し方嫌だろ?」
こっちの方がどうやらメルの素だったらしく口調は似ても似つかないほど変わってしまっている。
「うん!私しもそっちの方がいい!」
「おっと!こらこらそんなにくっついたら寝にくいただろ?」
今日一番の笑顔をしながら再びメルに抱きつき瞳を閉じたのだった。
「ゆき?」
「ZZZZZZZZZZZZZ」
「寝てしまったのか」
メルは雪を寝かしたら自身の能力について色々試してみようと考えていたが雪に抱きつかれたことによりその予定は頓挫してしまった為メルも雪を抱きしめながら眠りに落ちていくのだった。
***
メルは朝の強い日差しが顔にかかり眩しさによって目が覚めた、普段ならカーテンがこの日差しをある程度カットしてくれるはずなのだが弟の気まぐれの暴走によって部屋の中はかなり荒らされ調度品やその他のものまでことごとく破壊されていた為、もちろんカーテンに関しても破れてしまっており太陽の日差しをカットできなくなっている。
強い日差しによっての目覚めはかなりキツが体の疲れに関してはある程度なくなってい事を確認するとメルは横で未だに眠っている雪に目をやる。そこには天使がいた、白というよりは純白といったほうがふさわしい程の長い髪に手にちょうど収まるほどの胸顔は愛らしく眠っている今の寝顔は
メルの胸の中の庇護欲をこれでもかと刺激してしまう。
そんな雪は今だに熟睡している、恐らく眠るのが好きなのだろうと思えるほど彼女はいい顔で眠る。
「んぅ」
サラッ
雪が寝返りをうつと横になっている状態から仰向けになった、すると寝る前に雪に渡したシャツの胸部分が一部乱れ雪のキレイな谷間が完全に露わになってしまっている。その破壊力は凄まじく同性であるメルも何やらイケナイ感情が沸々と湧き上がってくるのをどうにか制御し、寝返りによって顔にかかってしまった髪を丁寧に直しながら昨日までの奇跡のような出来事は決して夢ではな事を噛みしめるメルであった。
朝と言っても今日は特にメルにやらなければいけない事はなく学校も休みとなっていた、朝食の時間にもまだ少し時間があった為昨日できなかった自身の能力について改めて確認する事にした。
神器「オリジン」
・能力創造
・神眼
・武装召喚
《嘆きの歌姫》
【伝達】する能力に特化した武器、広範囲に影響を及ぼす攻撃や支援が主な用途。この武器は悲しみにくれた女神が型どられている。その姿は一体誰の似姿なのか?
《ヴォルン&ヴェルン》
この2つの銃はもとは一つの個・体・であったというが、しかしある時期をもってこれは2つに分かたれてしまった。能力は【魔弾】自身の適性がある属性の魔弾を打ち出すことが出来る。
《夜桜【真】》
キレイな紫色の刀身をした美しい刀、その見た目は見るもの全てを魅了し切れ味は何人も止めることすらできないほどの切れ味を誇る、故に争いの火種になる。この刀はこの世に戦果をもたらすものとして長らく封印されていたもの。能力は【神速】使用者の熟練度によって幾らでも早くすることが出来る。
・神力
特殊技能
・次元魔法
以前にも見たが能力が多く未だに詳しいことまでは把握できなかったメルである、しかし今はゆっくりとその確認ができるため正確に自身の能力について把握しこのあとの実験を行うための糧としていった。
”まず神力とは魔力とは何が違うのか?”
神力【魔力や聖力よりも高位の原初の力。常人には扱うことすらできないほどの濃密で純粋なエネルギー、これを扱うことができるものは既に人の枠組みには存在していない。この力はどこからでも補充可能であり無くなることがない。】
なんとも見たくない内容が書かれていた。
”・・・・人ではない”
つまり今のメルはこの力を使えてしまっている為既に人の枠の外の存在になってしまっていることになる。これは流石に人ではないというのは堪えたメルだったが後悔はしていなかった、あの時雪と契約したことに関して全く後悔などしようもなかった。
そしてになったのは”より高位の原初の力”という部分であった。
この世界には2つの力が存在するそれが魔力と聖力である。この2つの力にはほとんど違いなどはなくその地域によってその名前は異なるだけであり本質的な物は何ら変わりない力である。
一般的には魔力だがある地域ではその力は神からの恩恵とされており聖力と言われていたりと様々な言い方をされている。
次にメルが気になったのが次元収納であった。
次元収納【多種多様な物を収納できる力、収納できる容量は存在せずいくらでも収納することができる】
どうやらなんでも収納ができるかなりの便利スキルであった、また容量がない為入れたいものはいくらでも入れることができると言った欲しい物からすれば喉から手が出るほどほしい力でもあった。
力の説明を読んでいるメルだったが中に何か入っているのか?とふと疑問に感じると好奇心の赴くままに次元収納を展開した。するとメルの目の前に魔法陣らしきものが浮かび上がり、その魔法陣に手を突っ込むとやはり中には何かが収納されていたらしく手を入れた瞬間メルの頭の中に収納されている物の情報が流れ込んできた。
”予想して通り中には多くの物が収納されているな、しかもどれもかなりの品ばかりだ”
中には多くの品が保管されており中には見たことのないものや危険なものまで存在しているようだった。
”なかなか使えそうなものが多かったな、だが今は使えないな。またの機会に試してみよう、次だ”
次にメルが確かめたかったのが自身が契約したことにより発現した【魔装】に関してだった。
【魔装】 変換可能な物質を取り込み魔装へと変換し装着する事のできる鎧にする。変換された鎧にはいくつかの能力が付与されることがある。しかしこの変換に耐えられる物質は少ない為多くの魔装を取得するにはかなりの運が必要だろう
”なるほど、確かに私が倒したあの騎士は見たことがなかったがこの変換に耐えられる事ができるほどの鎧を身に着けていた点からしてかなりの騎士だったに違いない、それにあの場で言ったセリフについてもかなり気になるが今は考えても仕方がないか”
その他の能力についてはダンジョンである程度ダンジョンで試しているため把握している。これであらかたの不明だった能力の詳細が確認できた事で満足したメルはベットから起き上がり顔を洗うために自室に備えられている洗面所へと向かった。
「面白そう!」
「続きが気になるかもしれない」
「期待できそう!」
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