ラブレターの書き方って知ってる?
私は物心ついた時には、欲しいものがなんでもあった。幼稚園も小学校も中学校も全て親に決められて、生きてきた。小学校は近いところにあったが、わざわざ遠いお嬢様学校に入学させられた。その学校に自由なんてなかった。全て決められた通りに動く、先生も機械みたいだった。何か問題を起こしたりすると、すごい怒られる。友達と少しお喋りするのが、楽しかった。休み時間の5分間だけ。放課後はすぐに迎えがきて、帰宅する。公園や駄菓子屋行くことなんて、絶対出来なかった。
中学に上がったら少しは改善されるのかと思ったが、対して変わらなかった。私は9年間縛られて、生きてきた。窮屈で仕方なかった。
しかも、結婚の相手まで決められている。
レールの上を走る電車のような人生だ。
しかし、親は高校入学時に入る時、チャンスをくれた。結婚相手を自分で決めていいということだ。
でも期限が高校卒業までだ。あまりにも無謀だった。
親にはどうせ今まで男子と話したことなんてないから無理だと言われた。9年間もお嬢様学校つまり女子しかいない学校、しかもまともに会話する時間すらも与えてくれなかった学校だったから。
私の過去はこんな感じ
私は今、奏君に渡すラブレターの内容を書いている。何を書けばいいか検討もつかない。ペンが走らない。自分の思い、自分の思い
自分に問いかけながら、ペンを走らせては止まり、紙をグチャグチャにして捨てる。ゴミ箱はすぐに紙の山ができ、近くに転がっている。
なんで簡単なことが出来ない自分を責める。手紙を書くことがこんな大変なんて、知らなかった。
「もーう」
思わず声が漏れる。
書くのに2時間くらいは使った。それなりのものは出来たと思う。
僕は目覚ましに音と共に起き、朝ご飯を食べ、学校に向かう。昨日と同様に朝の時間を使う。
「いってきます」
と家を出て。、自転車に乗り学校へ向かう。横から照りつける太陽が眩しい。途中、彼女がどのようなラブレターを書いてくるのが楽しみだった。中学の時はこうゆうのに無縁だったから、なおさらだ。
教室に着くととうまと俊斗がいた。他のクラスメイトはそれぞれのグループで談笑している。
「おはよう奏」
「おはよう」
「早速だが、昨日のことはなんだ?」
やっぱり聞かれますよね。あれってなんて説明した方がいいのかな。見知らぬお嬢様に告られて、付き合いましたって言う?それとも勘違いでしたって言う?勘違いの方は後々バレる可能性があるので却下だ。だとすると前者の方が良い。
「見知らぬお嬢様に告られて、付き合うことになりました」
「は?なんだそれ」
「ラノベかよ」
当たり前の反応が返ってきました。具体的って大事ですよね。でもこれ以上どうやって話せばいいのだろう?
困っていると、前のドアから噂のお嬢様が入ってきた。教室にいるクラスメイトの視線が一気に集まる。そしてこちらに来て、
「昼休みに昨日のとこ来て」
といい、僕が返事する前にいってしまった。
「奏、とりあえず死んでくれ」
「俺も同意見だ」
二人とも酷いことを言ってくる。
キーンコーン カーンコーン
とチャイムが鳴ると同時に先生が入って来て授業が始まった。教室の雰囲気が一瞬にして変わる。
授業とはいえ、最初の授業は大体ガイダンスで終わる。今日は楽なものだ。
授業が四限まで終わると昼休みだ。彼女が教室を出るのを確認して、後をついて行く。
お互いが空き教室に入ると
「書いて来たよ、読んでみて!」
「どれどれ」
手紙は可愛い封筒に入っていて、いかにもラブレターらしいものだった。中身を見ると
奏君へ
貴方のことが好きです
私は少しかっこいいところと無難そうで普通なところが気に入りました。
付き合ってください!
澪より
だった四文くらいの短い文章だった。
うん、言いたいことがある。
「二文目って僕のこと馬鹿にしてる感じ?」
「思ったことはありのままに書いただけだよ」
嘘は書けないにしても、少しカッコいいってところの(少し)これ絶対に書いちゃダメなやつだよね。
「少しってところいらないよ」
「だってー」
「これラブレターではなく、ダメレターだね」
「なんでー思いを正直に書いたんだよ」
「相手と付き合いたくて、書いてるんだからこれはダメだよ」
「わかったよ....」
よっぽど時間をかけたのか、その反動ですごく落ち込んでるみたいだ。彼女が落ち込んでるか落ち込んでないか一目で分かる。
でもこの手紙を貰っても、ほとんどの人がオーケーしないと思う。自分のことを少し馬鹿にされたような感じだからね。
「ラブレターって難しいね」
「うん、そうだね」
ここは適当に返事をしとく、自分も書いたことがないから詳しいことは分からない。
キーンコーン カーンコーン
と予鈴が....
お互い顔を見合わせる。そして大事なことを思い出す。
「「ご飯食べてない」」
ラブレターのことに気を取られすぎた。僕は急いで教室に戻ったが、食べるような時間はなく、まもなくして、授業が始まった。
午後は睡魔よりも空腹との、戦いだった。
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