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パワードギア

結月の病室に迫る脅威! それは、装備を身にまっとた襲撃者か!?



 緊急を告げる放送や鳴り響く音と振動。これらが、病室に居た結月と友人の二人の不安を募らせ精神的にも追い込んでいた。不幸にも院内関係者の救いの手は届いていない。


 そんな時突如、結月の頭に響く聞き覚えのある声がし、何も無い空間から舞い降りた人影を見上げて結月は「イブ」と、ぽつりと呟いていた。



◇◆◇◆


 結月の居る病棟5Fフロアを目指して、屈強な男達がデカイ音を立て、ブロックドアや隔離シャッターを破壊しながら駆けていた。その手には軽量コンパクトな銃器や扱いの容易なプラスチック爆薬C8を所持。


 彼らは屋上階へ着陸したガンシップから降り立ち、その身にオリーブ色の()()()()()()()()()()を着込み、そのヘッドギア内で通話をしていた。


 ――「目標は?」

 ――「ナノファージ、移動無し。over」


 戦術用パーワードギアは、ヘッドギアが感知した装着者の神経をA/AI(アイ)が解析し、本人の生体電流で動く流体メタル製の人工マッスルを操り、装着者がギアの操作を思考する必要が全くない。

 ストレスなく其れこそ宙を飛ぶような身軽な行動を可能としており、レアメタルによる特殊装甲板に全身を覆われているが疾走速度は100mを6秒フラットで駆け抜け、重量物を持ち上げたり格闘時の破壊力は、汎用のパワースーツとは性能が大きく異なり人間兵器として恐るべき商品だ。


◇◆◇◆


 この当時の、軍備は人口の減少と共に、このような戦闘用パーワードギアにより兵士の質を上げる競争を行っている。勿論、苛烈な核兵器や衛星兵器なども依然としてパワーバランスをとる抑制策に用いている。


 日本も西暦2026年に”非核三原則”を投げ捨て、国策で培っていたミサイル技術により、その1年後核配備。現在は衛星兵器までも数機保有している。


 また、30年前の経済戦争を発端とし各陣営がぎすぎすした時にタイミングよく起きたバイオテロの時も民主主義陣営と社会主義陣営は、ある程度の協調をもったがテロの主犯を見つける事は出来なかった。いや、お互いに猜疑心が強いため信用が出来ないと言ったほうが正しいだろうか。

 勿論、主犯格の国の自作自演を疑わぬ程、愚かではないが決定的な証拠が掴めなかっただけだ。様々な欺瞞情報が飛び交い、当時、世界の警察を自負した大国が、一番に経済的・人口減少の被害を受けた。自慢の空母を主とする機動部隊はほぼ行動不能に追いやられた。味方と思った自国にある団体に足をすくわれた為、情報の精査を誤り被害を大きくしてしまったからだ。


 人類は、依然として成長できていない。いつまでも仮想敵国を作り、武器製造メーカーや巨大カルテルのもとで富の集約を行う事をやめず、マネーゲームのように血税を投入し続けている。



◇◆◇◆



 結月の病室に出現したイブは、戦闘用パーワードギアを着込んだ襲撃者達が、一直線に結月の病室を目指し、その入口のドアに駆け寄る直前に病室へ舞い降りていた。


 バガッ! ガガガッ!


 それと同時に襲撃者がドアを蹴破ろうとする音が聞こえる。緊急時の為、自動ドアが作動せず蹴破るつもりだ。戦闘用パーワードギアの能力は異常に高くドアが大きくゆがむ。


 空中に舞っていたイブは、ちらりとその光景を忌々しそうに確認すると黒渦、”ワームホール”を即時展開した。イブのストロベリーブロンドの髪が空を舞う。


Shit(くそ)! やはり()()以外に二人!」イブが呟く。




 *****


 Eve's(イブは、)deploying(ワームホールを) wormhole(展開).


 Good(接続) connection(良好).     


 Emergency( 緊急) jump(ジャンプ) execution(開始>).


 *****



 先日、結月を誘った時より広範囲にワームホールを背に展開し、あっけにとらている結月、紀子、陽菜の間にイブは割り入ろうとした。同時に「手をとりなさい!」と三人に命令する。


 この時、怯えていた紀子と陽菜は、すでに二人で抱き付くようにしっかりと手を取り合っていたが、結月一人ベッド上でぽつんと座っていた。


No more(もう嫌)!」と吐き捨てるとベッド上に飛び乗り、呆然とする結月の首根っこを左手で掴み、右手で紀子の肩を掴んだ!


 そうして、イブ背後のワームホールへ三人を引きずり込もうとした!


Why(どうして) is it(こんなに) so heavy(重いの)!」常に冷静なイブにしては、珍しく必死な声を上げる。


――クウウウウ!


「きゃ~! なに~!」「これは、なんなんだ!」「イブ……」

 三者三様に声を上げたが、問答無用にイブのワームホールへ吸い込まれて行った!


 ギャシャン!


 同時に、ドアが破壊され襲撃者達が部屋に侵入!


 ドア一枚が吹き飛んだ。病室内を確認するが誰もいない。


「なんだ! 居ないぞ? 確認しろ!」

 焦りからか、ヘッドギア通話でなく直接一人が叫んだ。


 ――「目標ロスト。どうなっている」

 ――「ナノファージ通信ロスト。over」

 ――「そんなバカな!」

 ――「突如、遮断された模様。over」


 ――「ちっ、訳が分からん。で、目標の解析は?」

 ――「遺伝子解析は途中まで、血液O型……」

 ――「まったく、意味ねーだろが。糞め、……撤退だ」


 そう、一人が命令を発すると襲撃者達は再び屋上を目指し走り始めた。道中、逃げ遅れて、やっと廊下に出てきた入院患者数名を射殺しながら……。


 彼らはガンメタルのガンシップに再び搭乗すると、本体ローター、左右にある小型可変翼のダブルローターを唸らせて上昇し、ガンシップのステルスペイントを発動させると空中からその姿を消した。


 彼らが屋上に着陸して僅か15分足らずの時間で、死者5名、重軽傷者3名の惨事を後にして……。これはテロだ、現実世界で起きたリアルな現実だった。


襲撃者の魔の手からイブは3人を連れて脱出した。その先で驚くべき事実が次々と明らかになる!

なぜ、イブは結月を助けたのか?


次回;「抱擁と困惑」

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