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襲撃

結月と二人の友人が、病室で会話をしていたその時に非常を告げる緊急連絡が流れた。




 シャシャシャシャ シャシャシャシャ シャシャシャ シャシャシャシャ!



 外から何か風を切るような音が聞こえると同時に部屋の照明が突然消え、警告音が鳴り響き、ドア上部非常灯がパッシングを始めた!



《 緊急連絡! It is an emergency call! 》


 チカッ! チカッ!

 キューイーン! キュイーン! キュイーン! キュイーン!


《 緊急連絡! It is an emergency call! 》

 館内の患者様ならびに関係者の方は、

 至急スタッフの指示に従ってください! 

 これは、避難訓練ではありません!


《 緊急連絡! It is an emergency call! 》……。


 紀子と陽菜の二人は、急な事に不安げに顔を見合わせている。


「なに、なにが起きたの?」不安そうな紀子。

「わからん。が、急ぎのようだな」冷静な陽菜。

「待って……。また訳分からない事……」と結月の顔色が悪くなって来た。


 紀子と陽菜の二人が、結月の言葉にその顔を覗き込んだ。


「待ってって、なんなの? 結月?」

「そうだ、結月。またってなんだ? 顔色が悪いぞ」

「あっ、……それは……」

 二人の言葉に返す言葉が見つからず結月は口ごもってしまった。



 非常灯のパッシングと警告音は断続的に続いている。

 

 チカッ! チカッ! チカッ! チカッ! チカッ!

 キュイーン! キュイーン! キュイーン! キュイーン!

 

 

《 緊急連絡! It is an emergency call! 》

 不審人物が複数、屋上へ侵入!

 銃器類を所持している模様!

 至急、スタッフの指示に従ってください!

 スタッフは誘導を開始してください!

 繰り返します! 

 これは訓練ではありません!


《 緊急連絡! It is an emergency call! 》……。



 ガッガッガッガッ。

 ドドドドドドドドドドドドドドドド。


 上から音と振動が伝わる。


 アナウンスを遮るように音と振動が伝わる。

 部屋全体が揺れている。

 結月の居る部屋は、7F建て病院の5F特別室。

 揺れが酷い。


 陽菜が、窓から外を覗くと、避難する多数の人影が見えた。

「これは、一体なんだ! ただ事ではない! 早く逃げよう!」

「やだ、怖い怖い! なに侵入者って!」


「…………あうっ……う」

 結月は頭を抱えて不明な言葉を発し始めていた。


「どうした! 結月! 行くぞ!」

 結月の顔を青ざめているのに気付いた陽菜が声をかけた。


 言葉がうまく発せられない結月は頭の中で考えている。

 ――こんな、そんなバカな事があるの、と。


 脳裏に今、浮かぶものがあった。


 そう、それはイブとVRMMOの中で見せられた光景。

 恐ろしい殺戮やテロの情景を思い出していたのだった!



 ドガガガガガガガガガガア!

 上から、何かを破壊する音と振動が再び伝わって来る!



「どうした! 結月早く行こう!」再び陽菜が促す。

「そうよ、早くしようよ!」紀子も次第と焦っている様子だ。



 ――怖い! 何故こんなことが起きるの! 絶対おかしい!

 結月は、思い出した光景と今を重ねて恐怖を感じて身動きが出来なくなった。


 ――また始まった。これは現実? それともVR?


「やだ、やだ、もういやだよ!」


 その様子をみた紀子と陽菜も何か尋常でないもの感じ取っているし、結月も考える事が怖くなりその身に震えも走り始めている。

 

 ……誰か、助けて。怖いのはやっぱりもう嫌だよ。


 そこには昨日の夜に、クリーチャーと戦った結月の姿は無かった。ただ怯える一人の少女が体を震わせてベッドで座り込んでいるだけだった。


 無理もない、いまだ、結月には現実と非現実の理解が出来てはおらず、心と気持ちの整理ができていない。いくら友人に少し癒されたとしても入院前の前向きな気持ちや元気な姿はまだ取り戻せていない。


 人は、一度叩き落されれば弱い。特に酷い精神的なダメージは被った者にとって想像以上に辛くて、すぐに回復できるものではない。それが長く続けば続くほど不眠や気分不快を訴えるのではないだろうか。

 一か月ほど、夜間に目が冴えて眠れず、食欲も減り、体重も落ち、何もやる気が起きない。そんな状態が続けば不眠症からきっと鬱になる事だろうし、真に心の優しい者、生真面目な者ほど陥り易いものだ。


 今の結月はそんな状態だ。


 心優しい結月が自信を取り戻して立ち直るには、きっと切っ掛けが必要だと思う。紀子と陽菜の温かさを感じて掴みかけていた結月にとって、今起きている非常事態はとても不幸なタイミングだった。


 君なら、落ち込んだり鬱になった友人や家族が側に居たらどうするのだろうか。


 頑張ってと励ます。

 医者に掛かりなさいと告げる。

 見て見ぬふりをする。

 

 どれも、本人を一層苦しめるかもしれない。

 壊れかけた心を戻すには、シンプルな愛が良いかもしれない。

 壊れすぎれば、もう元には戻らないのだから。

 




 ドドドオオオオオオォォォォ――ン!


 結月の病室のドアが震えるほどのでかい音がした!

 6Fから何かが近づている!


 ガシャ――ン! ベッド脇に置いた花瓶も振動で落ちた!


「うわ――――ッ!」

「キャーキャー!」紀子と陽菜がその音と地響きに声を上げていた。



 結月は虚ろな目をして動けなかった。



 そんな時突如、結月の頭に響く聞き覚えのある声が木霊する。




 ――『結月、|Sorry, late.《ごめん、遅れて》 今、助ける』


 同時に人影が、何も無い空間から舞い降りる。


 それを見上げて結月は、ぽつりと呟いていた。



「……イブ」


 結月の目線は、空を舞うイブに囚われてしまった。



イブの舞い降りた病室へ何者かが迫る。

次回;「パワードギア」


ここまで、読んだら「ブックマーク」頼んだぞ。Did you understand!

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