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プロローグ 崩壊した街



 

 私が降り立った場所は、炎と煙と悲鳴に溢れていた。崩れ落ちたビル街のあちこちから火の手が上がり、道には横通しの車両が溢れ、時折人影が通り過ぎて行った。


 みんな我先にと罵声を上げながら地下鉄の構内にかけて行く様子に異様な緊張感が、私に走る。


 ものが焦げる臭い、炎からの熱感、耳の奥底にこびりつく声……暗くなり始めた街で、雨が降り始めた中、私は自分の置かれた状況を上手く理解できずに立ち竦んでしまった。



 ゴゴゴゴゴゴゴオオオオオオォォォォォ――――ン



 上空からの轟音に空を見上げると3機編隊の戦闘機らしきものが通りすぎてゆく。その音にやっと我に返りここは、バトルフィールドだと思い出す。


 意を決して瓦礫の中を進むと、ビルから落下したものから逃げ遅れたのか、それとも知らずに押しつぶされてしまったのかわからないが、逃げ遅れた人々の無残な屍が目に付く。中には爆発に巻き込まれたのか、肉片を四散し人の形さえ留めていない。


「うう……うえぇ!」


 その光景に思わず嘔吐しそうになった。


 この惨状には眩暈めまいもしそうだったが、いやいやこれはVRMMOの中だと自分に言い聞かせ、胸をなぜながら気を取り直して歩みを再開した。


 敵を探さないと、そうよね。


 ――早く終わらせて帰りたい、その一心で私は歩いた。気持ちとは裏腹に心臓は高鳴り、変な汗が体中から湧き出すのがわかる。


 瓦礫の山を越えながら、街をワンブロックほど過ぎた所で、足に当たるモノがあった。何かと足元を見ると小さな赤い鞄と小さな手……。


「ひっ!」


 ビルの外壁に挟まれた中からそれだけが飛び出していた。指がまだ少し動ていた。まさかと思ったが意を決して恐る恐る触れるとまだ温かい。

 ……視覚や嗅覚だけでなく触覚までこんなに精密に再現をする必要があるの!?


 なんなの、これは! 判っていた! 知っていた! 


 でも、これは酷い。


 いくら、VRMMOの電脳世界とはいえ、これはリアルに酷過ぎる。


 私は手に持っていた剣を落としそうになるほど、この光景には身震いしてしまった



 バラバラバラバラバラバラバラバラバラバラバラバラ―――――――!



 突如、小型の戦闘ヘリらしき機体がビルの合間を縫うように降下すると、私の頭上を舐める様に前方ビルの角を曲がった瞬間だった。閃光と共に金属の軋む音が聞こえたんだ!


 デャキキキキイ――キキキキイィィィィ――!


 ビルの陰に隠れた筈のヘリが、ローターを機体をへし曲げられて、再び眼前の空中を舞っていたのだ!

 しかも次の瞬間には、機体から炎が上がり地面に叩きつけられていた。爆風が押し寄せて目すら開けていられない。


 眼前の光景に、私の神経はもうマヒしそうだが、恐怖を感じてしまい思わず瓦礫に身を寄せて息を殺して潜んだ。


 ――なにこれ、ヤバいよ……ヤバすぎるよ。


 瓦礫にしゃがみ込んでそっと覗いているとビルの角から音がする、ミシミシとあらゆるものを踏みつぶしながら現れたのは巨大な生物。そう生物にしか見えない。


 4足歩行するその姿は恐竜にしか見えない! 


 ただ、体中は金属らしき物に覆われており、背の上にはネットで見たことのある電磁加速砲レールガンやレーザー兵器らしきものを載せている。


 ――あれが敵!? いくらゲームでもこれは一体何? あんなのに勝てる訳ないよ! 


 私が持っている武器は、剣一本だ。いくら強力だと言われていても、ビル10階分約50mの体高を持つ巨大なクリーチャーなんて手の打ちようなんてないんじゃない!?


 再び瓦礫に身を潜めて、どうしよかと考えていると、彼女が私の後ろに現れた。


「結月。移動する。少し座標がずれた。ここはもうお終い」


「えっ! ちょっと待って! 何の事!?」


「相手が大きすぎるから移動。近くの公園に小さいのがいる」


「はあ~、だったら頼むよ。目の前のでかいのなんて絶対にムリ!」


 会話を終えると彼女は私の背中に手を添えて、有無を言わさずに空間を押し広げて、私を引き連れて移動を始めたんだ。


 イブ、このゲームは一体なんなの。やり過ぎだよ。リアルな表現にも程がある。


 これが、このゲーム〝VRMMOGメンフィス〟への私の第一印象だった。

いきなりのメカ怪獣大進撃の様相を表してみました。またゴジラの新作でませんかね。

スピルバーグ監督の『レディ・プレイヤー1』の続編も見たいですね。


次回;「最初の戦い」剣一本を武器に結月がクリーチャーと戦います。

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