ただ不快なイタズラをされた。
授業の終了を知らすチャイムが鳴り、皆が一斉にため息をついている間も、俺は気が休まらなかった。
それは転校生「八雲ソウジ」の事がずっと気になって仕方がないからだ。
さっきは「まぁいいか。」で済ませられた。が、授業に入ったときの仕草、先生への受け答えのときの口の聞き方、そんな所から俺は前からアイツを知っているかの様な感じに陥る。「いわゆるデジャヴだなと初めて思えられたからいい体験になった!」といつもの俺ならそう思えるが、今回はそうはいかない。何故か突っかかる。何故なのだろう。何故…
そう思いながらロッカーに物を取りに行き、自分の席に座った。
…いや、座ったはずだった。
自分の太ももが椅子に触れたと思いきや、その瞬間、椅子が後ろに素早く引かれ、俺は尻もちをついてしまった。
「…え?……や…やったぁぁぁぁぁあ! 初めて成功したぁ!」
俺が普段しない考え事、よりによって出そうで出ない気持ち悪い時にこれをやられると、無性に腹が立つ。
まぁ集中を切らしていた俺も悪いが、今回ばかりは許せない。昔は短気で名が通っていた俺は即座に仕掛けた奴の胸ぐらを掴む。顔は見ていないがやる奴は大体分かる。
「っ……オイ! 今回ばかりはふざけるんじゃねえぞ。西田。」
西「あれ?今回はなんか感情的だねぇ?俺に成功されちゃったから悔しいのかなぁ?ねぇ?なんか言えるぅ?」
いつもより皮肉に言って来たので、自分の感情を出来るだけ俺の右手に溜めて、腹パンを奴に食らわせた。
……清々しい!
うずくまっている西田の姿を横目で見て、改めて自分の席に座った。
「ねぇ、君。いきなり申し訳ないけど…『いい夢』見れてる?」
背後から俺に向かい聞き覚えのない声が聞こえた。八雲だ。流石に話した事などなかった、ってか今日初めてあったのだから、目線を合わせるだけにした。すると、あっちからまた話しかけてくれた。
八「この後用事ある?よかったら『駆除』してあげるよ。」
駆除?別に家にシロアリとかスズメバチは居ないから聞き間違いかと思ったが、確実に「駆除」と言った。
あの俺の悪夢と関係があるのだろうか。その僅かな期待を持ちながら、「別にいいよ。」と言ってしまった。
そこから、俺の高校生活は波乱万丈となってしまう事を、俺はまだ知らない。