#007「八月十日水曜日」
――昨夜の十八時から二十四時に入っているニュースは、と。
フゥム。中国船の領海侵入は、一向に改善される気配が無いな。
それどころか、エスカレートしていると言えるかもしれない。
これが中華思想というのなら、傍迷惑な信条なことだ。
父親を迎えに来ていた部下の息子に頭の骨を折る重傷を負わせたとして、暴行容疑で逮捕か。迂闊に上司に預けられないものだな。
*
「おはようございます、清水課長」
「おはよう、小川くん。おや? そのイヤ・リングは」
「えぇ。昨日の帰りに、お掃除の池波さんから渡されたんです。階段の観葉植物の裏に落ちていたんですって」
「なくしたのが社屋内で良かったね。――それでは昨夜のニュースを報告するよ。野党の執行部が女性代表を擁立しようとしているが、非執行部系は反発しているというニュースと、大手スーパーが、大手コンビニと経営統合するというニュースがあった。前者については、面倒なことが多いときになると、ここは若い人にとか、ここは女性にとか言って、トップの重責だけを押し付ける姿勢には感心しないし、後者については、安く大量に仕入れて売り捌く時代は終わりに近付いていると感じた。あとは五輪のメダル獲得に関するニュースが順次、入っているが、ほうぼうで取り上げられてるから省略するよ。昨夜のニュースは以上とする」
「政治や経済の先行きが暗くなると、古株さんたちは、誰も総裁や代表になりたがらないんですね」
「責任は負いたくないけど、自分の意見を通したいから、ナンバー・ツーを狙う傾向があるね」
「卑怯というか、姑息というか」
「まぁ、悪いことではないが、心象の良い方法ではないね。スーパーについては、どう思う?」
「郊外や臨海の大型店舗に集中しているせいか、最近は足が遠退いてます。三十分かけてスーパーまで行ったとして、五分で行けるコンビニと十円二十円しか違わないのなら、コンビニで買いますね。特に、暑さや寒さが厳しい時期や、雨の多い時期は遠出したくありませんから」
「なるほどね。ここ最近、台数が増えつつあるセルフ・レジについては、どう思う?」
「比較的空いてますから、買う物が少ないときは重宝してますよ。でも、ポリ袋や紙袋が欲しいときは、普通のレジに並びますね。この季節だと、ドライ・アイスも」
「そうか。セルフ・レジには、レジ袋しかなかったな。実は、息子と二人で買い物に行ったときに、息子が使い慣れているのを見て驚いてね。バー・コードがどこにあるか、よく把握してるものだと思ったんだ」
「感心な息子さんですね。若ければ若いほど、古いことに拘りませんから」
「発想が柔軟だから、変な色に染めないように気を付けないとな」