#015「夏の終わり」
「おはようございます、清水課長」
「おはよう、小川くん。久し振りだね」
「ご無沙汰致しました。あっ、池波さん。おはようございます」
「おはよう、文子ちゃん。しばらくだったわね」
「おはようございます、池波さん」
「おはよう、浩次くん。恵子ちゃんや悠真くんは元気?」
「おかげさまで、相変わらずです」
「そうそう、文子ちゃん。この度は、結婚おめでとう」
「ありがとうございます」
「池波さんも、ご存知でしたか」
「あたしを誰だと思ってるのさ。唯一、社内を自由に出入りできる人間だよ?」
「さすがですね」
「壁に耳あり、障子に目あり。わが社に池波さんあり」
「大洋くんって言うんだってね。写真では、取っ付き難そうなオーラを感じたけど、実際のところは、どうなのさ?」
「話してみたら、素朴で真面目そうな良い人だったんです。写真に関しては、レンズを向けられると緊張する性格なのが原因だと思いますよ。ツー・ショットだと、こんな感じです」
「笑うと、いい顔だね。優しそうな雰囲気だ」
「あたしも伊達に長生きしてないから、色んな夫婦を見てきたけどさ。これは、うまく行くね」
「そうですか? そうだと良いんですけど」
「きっと幸せにしてくれるよ。僕も保証しよう。しかし、寂しくなるなぁ」
「何言ってるんだい、浩次くん。すぐに慣れるわよ」
「今まで、お世話になりました。本当に、感謝の気持ちでいっぱいです。ありがとうございました」
「僕も、小川くんからを指導しながら、様々なことを学んだよ。こちらこそ、ありがとう」
「元気にやりなさい。忘れ物は無いね?」
「はい。また、お会いしましょう」
「またな」
「またね」