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ユエとリィアンの冒険  作者: 村咲 遼
9/18

ママのその後、寝込んじゃったお話

「はっ‼あの程度で」


そういったきり、ママはそのアプリを完全退会し、画面からも消去した。

そして、また熱が上がって寝込んだ。


ママは本当に体調が良くない。

氷枕で、うとうとと寝てはハッと起きる。

その度に、


「ごめんね……ベランダは、庭になってるし、みんなの遊び場とっちゃったね」

「大丈夫だよ。ママのおもちゃで遊んでいるから」

「ママ‼これ、読んで良い?えっと、『き、かんからよみとく、へいしろ……きょう』?」


リィアンに、


「『きかん』じゃなくて『木簡もっかん』って言うの。昔は、木を削った板にね、墨で文字を書いてそれを書類がわりに提出したり、ある人には『これだけの物をお贈りします。お納めください』って書かれていたの。それは時代によって紙に変化して廃れていったの。でも、時々見つかる木簡には大事な当時のことが書かれていて大切なの」

「ふぅーん。ママ勉強してたんだ」

「お友達の伯父さんや、お姉さんがそういうものを発掘してたの。それと、昔の天皇は、即位するごとに、もしくは悪い兆候が起こるごとに『みや』……宮廷を含めた、天皇の住まいを移していったの。で、710年に今の奈良県に『平城京へいじょうきょう』の『平城宮へいぜいきゅう』を都に置き、ここを都に定めるって決めたの。でもね、740年に『恭仁京くにきょう』、『難波京なにわきょう』って遷都せんと……都を移し、745年に『平城京』に戻って、784年に『長岡京ながおかきょう』に移るまでは都だったの。で、794年が、『平安京へいあんきょう』……今の京都に移るんだよ」


地図を見せてくれる。


「色々行ってるねぇ」

「そうなの。で、それまでの間の木簡が出土して、木はもろくなっているけれど、墨の文字は残るから、その文字からその当時の時代背景を読み解くの。その勉強本だね……それは、ラジオとかテレビとかでその勉強をしている先生が説明してくれるその副読本だけど大丈夫?」

「頑張る。ママの本もあるし大丈夫だよ‼」


と読み始める。


「他の皆もゆっくりしてね……天気が良くなったら……散歩行かなきゃ……」


呟きながらうとうとと寝始めた。


「大丈夫かなぁ……ママ」

「氷枕……取り替えようか?」


ユエと月花げっかがこそこそとお話ししていると、


「そのままで良いよ」


トリスタンの一言に、皆はなるべく静かに遊んでいた。


ゲホン、ゲホゲホ……


時々苦しげな咳をする。

本当に風邪を引いたのか、もしくはアレルギーか……。




しばらくして目を開けると、


「あ、心配かけてごめんね」

「あ、ママ‼大丈夫?」

「えっと……頭がガンガンして、ちょっと駄目かも。年だねぇ」


笑って、ママは体を起こす。


「今日は病院二つだし、行ってくるね。注射すれば大丈夫でしょう」

「エェェ?ママ行くの?」


珍しくリィアンが声をあげる。


「遠くの病院でしょ?やめようよ。近くの病院だけ行って、ねんねした方がいいよ」


かなり顔色が悪いママが心配で心配で堪らないのだ。

この前まではユエをだっこしていないと外に出られなかったママ……。

この間までは、ハートと言う名前の小さいベアを連れていた。

でも、最近になって、


「皆にもたれるのはダメだと思うから、一人で行くね」


と行くようになったのだ。

でも、それが心配で……、


「大丈夫だよ。無理はしないし、休み休み行くね。エヘヘ……ママうれしいなぁ……」


嬉しそうに笑い、ママは着替えをして出ていった。


「あ、ママ。またご飯抜いた‼」

「ご飯炊くの面倒だって言うもんね。あ、そういえば、ママ、計量カップ買ってないよ」


はぁ……


皆がため息をつく。

と、思い出したように、アルが、


「あ‼ママの日忘れてた‼」

「ママの日?」

「『mother's day』5月の第二日曜日。今月は第三日曜日が『father's day』パパの日。ママのお父さん。おじいちゃんに何か贈るんだって」


おじいちゃん……。


月花達やカラーボックスの兄弟は知らないが、ユエは、


「おじいちゃん、優しいよ」

「じゃぁ、おじいちゃんにパパの日なの?」

「うーん……」


月花が、声をあげる。


「ママの日のかわりに、パパの日にママにお祝いするの‼きっと喜ぶの‼」

「ママに?」


カラーボックスの扉が開き、兄弟達が顔を覗かせる。


「僕たちも~‼」

「お手伝いする~‼」

「じゃぁ、ママに内緒で頑張ろうね‼」




ユエやリィアンたちは、パパの日にママにお祝いすることを約束したのだった。

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