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ユエとリィアンの冒険  作者: 村咲 遼
7/18

ママのおしゃれ。

ママは、お洋服に無頓着。

そこら辺にあれば、サイズが合えば何だって着る。


リィアンたちには入れ替り立ち替り着ぐるみロンパースを探しては、譲ってもらったりしているのにである。


「ママー‼お洋服はぁ?」

「ん?デニムパンツに長袖のねこさんTシャツ‼」

「なんで‼おしゃれは‼おしゃれ‼」

「ほら、ねこさんおしゃれ‼」


表から裏までネコネコネコのTシャツは紺の布で、白い線で描かれているが、おしゃれとは言いがたい。


「もっと可愛い~の着よう?ねぇママ?」


ユエはママを見上げる。


「エェ?ほらバッグも最近こだわりが……」


示す。


前は巨大なバッグだったのだが、がま口バッグになった。

それも、おしゃれだがダークグレーに白い英語の文字が踊る。


「暗いよ~⁉ママ。ママもっと可愛いの着て欲しいなぁ……ユエは」

「そうだよママ。せっかく月花げっかが来たんだもん。ママ、昔みたいにだっこの写真とるように、可愛いかっこうして?リィアンもママの淡い色のお洋服見たいなぁ……」

「ママ‼月花と写真‼可愛い可愛いしようね‼」

「えぇ、ママおばちゃんだよぉ?それに、お洋服も……」


タンスではなく、なぜかクローゼットの中の段ボールのなかに、テディベアを作るぬいぐるみ用の布のなかに埋もれているのは、


「……薄いボレロ……ママ、結婚式の出席者じゃないんだから」

「エーじゃぁ……」

「それは、水着‼しかもブルーのビキニ‼ダメじゃん‼」


それからも、


「デニムのすれすれ短パンにボディースーツ……ママ、こんな格好で何してたの?」

「ウェイトレス!」

「犯罪だよ~⁉他には?」

「うーん……」


出してきたのは男物のデニムのシャツ、チェックのシャツ、これまた男物のTシャツ……着古した感がありまくりである。


「この間、3000円で半袖に上に着られる春用の毛のワンピースが二組買ったから。デニムは、傷だらけだけどファッションと思えばいいし、あとは、スパッツ‼」

「おーい、皆~‼リサイクルに回してくださーい」

「さーい‼リサイクルって、何?」


ユエにリィアンは、


「最近はスーパーに古着を持っていくと預かってくれる場所とかがあって、それを引き取ってリサイクルして、リメイクしたり、古い着物だったら布を裂いて、1本の太い糸にしてそれで織り上げた『裂き織り』という、方法で織り直した布で服を作ったり、バッグを作ったりするんだって」

「へぇーそうなんだ。でも、ママのシャツ……穴空いてるし……くたびれてるよ?」

「だからこれは、油を捨てたり、するときに使うんだよ。それに雑巾がわりにとか」

「ふんふん……ママ、良かったね」

「よくないよぉ~‼ママの夏のパジャマ‼ないじゃない~‼」


取り返そうとするママから兄弟はひらりと逃げる。


「この間譲ってもらったのあるでしょ」

「着替え‼着替え‼」

「って、いつまで溜め込んどくの。指令‼『ママはシャツかスモッグか、好きな服を二枚購入すること‼新品、古着問わず‼』」

「エェェ~‼」

「『柄は花柄‼』」

「ちょ、無理~‼」


首を振り、訴える。


「ママはボーダー柄か、無地、もしくはTシャツは文字とかくらい……花柄嫌なら、水玉……」

「もっと無理~‼ママ、水玉って水疱瘡みずぼうそうとか、あせもとか、はしかとか、アレルギーとかの湿疹しっしんみたいで、見るのもあまり好きじゃない……」

「ドット柄か花柄二つにひとつ‼」

「……似合わないのに……」


ベソベソと呟く。


「思い込み。はーい。ママ、いってらっしゃーい‼今日も病院でしょ?男物じゃなく、可愛いのだよ⁉」

「意地悪ぅ……」


言いながら、イジイジと出ていった。

要らない服は一旦お風呂場に入れておき、ユエたちはうんしょっと、タンスの中身を確認し言葉を失う。


「これ、何?」

「あぁ、ママの趣味の空き缶集め。ふたつきの缶を集めるんだ。で、お宝入れるって」

「中身は⁉」


リィアンは確認するが、缶の中には缶、その中も缶。


「マトリョーシカ‼」

「まどろーしか‼」

「違うの‼ロシアの工芸品で、お人形の中にはお人形がパカパカ開けると出てくるんだよ」


で、最後の缶の中には、


「……『オーストラリアの1セント硬貨』……何故?」

「昔、ウェイトレスをしていたときにお客様にいただいたんだと。良いことがあるよってさ」

「……ふーん……」


リィアンは思う。

ママは幸せなのだろうか?

この小さい硬貨を、こんな風に何重にも重ねた缶に納めて、幸せなのだろうか……。


首を振ったリィアンは、


「この缶は全部、出しちゃって、服入れる、服入れる‼」

「ほーい‼で、缶は?」

「こっちの箱に入れて、何かに使う」


そして、順番に入れていく。

ママのタンスは籐製のタンス3つ。

そのうち大きいものに服全般と、タオルは一番よく使うお風呂場の前の棚の上に移動。

ハンドタオルも、その横。そうすれば入れれるものは増える。


「くつ下に、上着はここで、シャツは下」

「どんなになるだろうねぇ?ママ」


ワクワクするユエに、リィアンは、


「可愛いと思うよ絶対」




お昼が過ぎて、ママが帰ってきた。


「おかえりなさい‼ママ‼お洋服は?」

「あ、えっとねぇ……ワンピース」


ぴらっと出したのは、花柄は花柄でも、主な布地の色は沈んだ濃緑色で、白い花びらのシックなデザイン。


「エェェ~‼ママ‼せっかく‼」

「いや、これは昔風の柄で、襟元がかわいかったの。216円だったし‼」

「力一杯値段言わないでよ」


リィアンは拗ねる。


「まぁまぁ。こっちは、シックでしょ?で、こっちは可愛い系なの」


ぴらっと広げたのは、生成きなりの生地の長袖と背中も生成り。

でも、前が、可愛い花柄のシャツワンピース。

着て見せてクルッと回る。


「これは可愛いでしょ?皆と写真とるのもおかしくないもん、ね?」

「うん‼」


喜んでいた僕たちにママは一言。


「216円だった~‼お得だった~‼」




これがなければいいのに……残念、ママ。

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