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ユエとリィアンの冒険  作者: 村咲 遼
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たぬきとテディベアを足したらベアポン

当日、トリスタンを始めとする十数人の兄弟達はにこにこと、他の特にリィアン達は緊張ぎみに待っていた。


シュタイフ社の女の子……しかもアエラちゃんを始めとするシュタイフ兄弟は、ミクちゃんベアも毛色などが独特で可愛いが凛とした印象もあって高貴だ。

でも、でかくて女の子で可愛いと言うのは想像できない。


ただ、リィアンの横のユエは、


「大きいの?ユエよりも大きいの?背伸び運動しないと……」

「そういう問題じゃないでしょ?その子が来たら、ボクたち要らなくなったらどうしよう、なの‼」

「え?何で?」


こてん?

首をかしげる。


「だって、ママ、元々シュタイフ社のベアが好きだって言ってたじゃないか……」

「それはそれで、ママこうも言ってたけど」


口を挟むのはママオリジナルの型紙の、シュミス。

ママいわく、元のオリジナル、スミスの小さいバージョンなので、子供言葉のシュミスなのだそうだ。


「『ママは無い物ねだりなの~。本当はお鼻ツーンの凛々しいベアを作ろうと思うのに、そんなベアちゃんの型紙を使わせていただいて作ってるのに、パンパン丸顔のあの、パンのヒーローみたいになっちゃうのよ~‼童顔ベアになっちゃうの~‼でも、初めてチーキーを見たときにギョロッとした目でお耳がぞうさんみたいで、にやって笑ってるんだもん‼こんなの作らないと思うのに型紙そのままで出来ちゃうんだもん~‼』だって。オリジナルスミスは、チーキーに似てて、『あぁぁぁ~( ̄▽ ̄;)』って言ってた」

「そうなの?」

「スミス、あれ」

「ハァウワァァ‼」


ユエが叫び、無表情のスミスが、


「いいよ。気にしてないし」

「と言うか……ユエたちより進化してる……」


ユエやリィアン達チーキーや、パンキーチーキーは基本、頭は丸く、口の回りは違う布で作り、鼻と目の高さが同じ、耳は真横で大きく、体が2、頭が1の対比だが、スミスは、短い純白の毛の布で、耳の内側と足の裏がブルー。手足は、体に近い辺りは小さくて、手の先が大きく、足の裏も大きく胴体がコロコロ丸い‼

顔は、目と鼻の位置が近くて、口は小さい。


「僕たちはスミス」

「歩けるの?」

「がに股……基本職人だから仕事をしているんだ」

「職人?」


リィアンは問いかける。


「あぁ。スミスは、『smith』と書くんだけれど、昔、スミスという人が多く職人の仕事をしていたという言い伝えがあって、『銀細工師』『銀職人』を『silversmith』っていうんだ」

「へぇ……詳しいね」

「ママが、私に、『テディベアの職人になれ』って言って付けたんだよ。職人は大事な知識や情報を頭の中に溜め込むのと、腕が必要。だからこんな姿だよ」


自慢げに告げる。


「何かあったらいってごらんよ。お手伝いできるよ」

「ほえぇぇ……スミスさん知らなかった……ユエ」

「時々ママと出張してるから。職人って言っても、まだまだ独立もできない見習いだからね。ママの……師匠の腕を見て、見て覚える、そして、本を読んで覚えるのさ」


白い腕に、青い刺繍糸で指を作って貰ったスミスは告げる。

自分は頑張っているんだぞと言っているみたいである。


「カッコいい‼スミスさん‼ユエ、スミスさんみたいになる~‼」

「まだまだだ。ユエは大きいけれど、私よりも知識がないな」

「むっ!頑張るもん‼」


ユエは分かっていない。

面白がられていることを。


と、扉が開き、


「只今~‼皆‼兄弟の月下美人げっかびじんちゃんだよぉぉ~‼」


ついに来た‼


振り返ったユエとリィアンの目の前で暖簾が上げられ、登場したのは、ピンクのウサギさん着ぐるみロンパースを着こなした、デッカイ……、


「たぬき?」


ユエは失礼ながら告げる。


「熊じゃないよ、たぬき‼」

「それはポンのコト?」


その名の通り、ベアポンが、声をかける。

ベアポンは、タヌキがテディベアに変身しようとして失敗した、頭に葉っぱと尻尾がフサフサ、キョトンとした顔の日本のテディベア作家さんのベアである。

テディベアの『ベア』とたぬきのぽんぽこの『ポン』からママがつけた。

でも、本当に可愛いのだ。

ユエより小さいし、仕草も可愛い。

仲良しである。


「ヨイショっと。はい、今日から家の子になる月下美人ちゃんです。月花げっかちゃんって読んであげてね?月花ちゃん。知ってる子もいると思うけど、この子がユエちゃん、リィアンちゃん、ベアポン、トリスタン、スミス、ママベア、それにミクちゃんは双子でね?もう一人はねんね中。後は、こっちにエリファス・レヴィ、アエラちゃんはあっち、それと、エリオットに……」

「一杯いる……」

「月花ちゃんの兄弟だからね?あ、リィアンちゃん。一番仲良しね?お願い」

「エェ‼」


リィアンは、ビックリする。


「ママ‼ユエや、他の……」

「はい、お手手繋いで、遊んで来てね?ママご飯食べるから」


ママは暖簾の向こう、台所に消えていく。

ママのお食事スタイルは徹底していて、前に一回、ユエ達には直接の被害はなかったものの、お部屋で食事をとっているとそのまま気絶して、目が覚めると、うどんがすさまじい状態になっていた。

ユエ達はママによって絶対に食べ物や水の出るものなどには近づくなと念を押されていたのでそのままクローゼットに避難して、ママは、毛布と布団カバーを全部はぎ、洗濯機に直行。

そのあと布団を引きずってお風呂場に行き、シミの部分を丁寧に擦り叩きを繰り返してシミを落とし、中綿ももみ洗い、良く絞って外に干した。


それ以来、台所で食事をとる。

ママを見送り、手を繋いでいる月花を見る。


「えっとリィアンだよ。よろしく」

「よろしくお願いいたします」


立ち上がった月花は、頭が大きく、リィアンと変わらないのに、身長も変わらなかった。


「42センチです。えと、1909年のテディベアのレプリカです」

「エェェ‼じゃぁ、とってもたかい‼あのトリスタンとおんなじ?」

「いや、月花はレプリカベアだけど大量生産品なんだ。でも、俺を見ると解るけど、1902年にテディベアはできて、7年で、今風のベアになってるだろう?大きい瞳に大きな頭、リィアンたちと同じ頭が1なら、体が2の比率で、瞳も大きくて……で、大きさをいくつか変えて、何年かレプリカが売られてたんだ。その中でも大きいタイプだよ」

「ポッチャリで、すみません。皆、残念がるんです……」


大きな体を小さくして、もじもじする。


「えと、大丈夫‼ユエを見てよ。あんな感じだし。隣にいるママは喜んでいたでしょ?」

「えっと『うっひょぉぉ~美人さん、べっぴんはん~‼お出迎えの音頭を』『ど阿呆~‼』って、連れてきてくれた女の人にされてました」

「……うん、そんなママだから気にしないで」

「き、緊張したぁぁぁ……」


と、しゃがみこみ、そのまま倒れ込むと、『クオォォウ』と声がした。


「おなかがすいたの?」


ユエが問いかけると、月花は、


「グ、グロウラーって言って、横になると音がなるようになっている器械がお腹の中に入っているのです。け、決しておなかがすいたって言ってません‼」

「いや、思ってないよ。皆」


リィアンは慰める。

多分言われてきたのだろう。

丸顔で童顔、その上お腹が鳴る。


「それは眠たいよ~って言ってるんだよね。昔は特にテディベアは鑑賞用ではなく普通に傍にいるお友だちだったから、夜ねんねするお友だちに『一緒にねんねしようよ~』って。月花は大きくてとってもお友だちが安心できる、特別だったんだね」


リィアンは告げる。


「ようこそ、月花。僕たちのおうちに。よろしくね?」




テディベア屋敷に、また一人、住人が住むようになったのだった。

『smith』は、名前や姓ですが、職人の名前に多く、名字以外で使われる用語には『職人』です。


『silversmith』は『銀細工師』という意味があります。


特に『ギルド』は元々『職人組合』を指し、徒弟制度で組合に所属し、自分の仕事の腕を磨きつつ、弟子を育て、その弟子に技術や技法、そして新しいものを作らせる。

そしてギルドに登録することによって仕事を回してもらい、日本でいうのれんわけがあっても、安心になっています。

でも、仕事を怠ると、ギルドから追い出され、それは小さいものではないので、職を失う事を意味しました。


べあぽんは、本当は正式名称は別にありますが、分かりやすい名称にしてみました。

とても可愛い子で、尻尾がキュートです。

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