モノノケED
薄れ逝く意識で、彼女がみたモノノケの姿は…
モノノケの正体は黒い影だった
魂の色:モノノケ編
彼女の声に答えるように、闇より現れたのは何かの影だった。
黒く蠢くそれは、形を成しているようで成していない。
だが、明確な意思をもって彼女の体に襲い掛かる。
鈍い音いと共に、自らの肉が引き裂かれ、食われてゆく。
仰向けに倒れた彼女が目にしたのは、満点の星空。
なぜ、こんな風になってしまったのだろうか?
私はなにもしていないのに、突然襲われ、そして殺される。
彼女に切りかかった男が憎いか、
それを仕向けた男が憎いのか、
その状況を見ても助けなかった全ての人間が憎いのか。
彼女は分からないまま、虚ろな瞳で星を見た。
助けてもらえなかったことが悲しいのか、
己が切捨られる程度の存在であることが悲しいのか、
突然未来が断ち切られることが悲しいのか。
それすらも分からず、黒い影の成すがまま、自らが食われる音をどこか他人事のように聞いていた。
不思議と痛みはない。
否、痛みすらも超えてしまっているのかもしれない。
あるいは、既にこの身は死んでいるのかも知れない。
「このときを待っていた。あの男を唆した甲斐があった。輝く魂が、呪いと屈辱と悲哀の色を帯びるこの瞬間を!!」
「やはり、お前の謀か。……望みが叶っただろう。だから、私の望みもかなえろ。この恨みを……あいつに……」
「その願い。かなえよう。お前の恨みはワレと共に生きる。」
彼女は最後に口元を歪めた。
「この呪いこそ、私が生きた証だ。」
そう笑うように呟いたのを最後に、彼女の魂は闇へと沈んだ。