変態登場、その一でござる
今日も朝の食事処にて、ご飯、味噌汁、漬物を頼み箸を取る。
まずは熱い味噌汁をずずっと一口、濃い目に作られているのか、すぐにご飯が欲しくなる。そのため次に茶碗を手に取り米を一つまみ口の中に放り込み、一度たくあんで休憩。そしてもう一度ご飯を経由した後味噌汁をすする。米の回数が多いので、一度に多く食べすぎないようにするのがコツだ。
俺は向かいのニンゾーと同時に二度目の味噌汁へと移る。
ずず。
「味噌汁に大根と言うのがたまらんな」
「全くでござる。他の店ではやれ豆腐だやれわかめだとわかっていないでござる。やはり味噌汁には大根でござろうよ」
「だがなニンゾーよ。実はサツマイモというのもまた違ったよさがあるんだ」
「えー? サツマイモでござるか? それでは甘くなりすぎるのではござらんか?」
「ふふふ、一度食べてみると言い」
「む、そこまで言うなら食べてみたいでござるな。あ、お姉さん、今度サツマイモの味噌汁も作ってもらえぬか? おお! いいでござるか! やはりなんでも頼んでみるものでござる」
ニンゾーが店の女店員とメニューの相談を始めたのを見て、俺は傍らの手紙を開く。
昨日の運営からの手紙だ。その内容はやはり簡潔に、プレイヤーが十人以上すでに強制帰還させられたということを伝えるばかりだ。
これを読んだ俺の感想はただ一つ。
早すぎないか? ということだった。
俺達、現代からのプレイヤーが強制帰還させられるのは、この世界で死んだ場合だ。俺はこのテストプレイとやらが始まった時から、自分か、他人かはわからないがそれは当然起こりうるだろうと思っていた。死ぬ理由と言えば、真っ先に思い浮かぶのはダンジョン。確かに俺達はゲーム廃人だ。だが、どれだけゲームがうまかろうが結局は人間。全くのドジのような失敗がないとも限らない。少し油断して負け、望まぬうちにゲームオーバー、そして強制帰還というのもあり得るだろう。
しかしだ。果たして廃人と呼ばれるほどの高ランクプレイヤーがたった二日のうちに入れるような初級ダンジョンでゲームオーバーになるだろうか? しかもプレイヤーにはゲームで愛用していたキャラクターが側にいるはずである。
使い慣れたキャラクター。知り尽くしたダンジョン。圧倒的格下の敵。
負ける要素がない。
また、他の可能性として自殺と言うのもある。
俺達はわけがわからずここへ連れてこられた。現代に残してきた大切な人もいるだろう。すぐに帰りたい、何もそれはおかしい考えではない。だが、だからと言ってすぐに自らの命を投げられるか?
このわけのわからない世界。確かに、文面では死ねば元に戻ると書かれてある。だが死ねば天国に行けると言われて自殺する人がほとんどいないように、ましてそれを言ったのは神でも何でもないただのゲームプロデューサー、すぐに自殺という選択をできるとは思えない。
やはり、不可解だ。
俺はそう思わずにはいられなかった。
「やはり、プレイヤーは殺されたのではござらんか?」
お姉さんと話し終えたニンゾーが、俺の手紙を向かいからのぞき込みながら、そんなことを言う。
何を馬鹿なことを、と一蹴したい。が、上の二つを否定した場合、次に思い浮かぶのは当然そう言った可能性だろう。ダンジョンで死んだのでも自殺したのでもないなら、何者かに殺されたのではないか、と。
「しかし、英雄と呼ばれるようなキャラクターと一緒にいるプレイヤーを、一体だれが殺せるってんだ? もし俺を殺そうとした奴がいたとしてもニンゾーにかかればちょちょいのちょいだろ」
皆、専属の凄腕ボディガードがいるみたいなもんだ。
「まあ、それはそうでござるが、その前に主殿は前提を間違えておるでござる」
「前提?」
「キャラクターが友好的でない場合でござるよ」
は?
キャラクターが友好的じゃない?
ニンゾーは食後の昆布茶を一口飲んでから、少し言いにくそうにつづけた。
「拙者、正直なところ突然神、主殿が言うところの運営でござるか? その者たちに見ず知らずの人間に仕えろと言われてあまり気分がよくなかったでござる」
「え、まじで?」
「まあ、主殿のことは嫌いでないでござるよ? 食べ物の趣味も、価値観も生活習慣もそっくりでござるゆえな。でもやはり、会う前はちょっと嫌だったでござる。拙者の慕うものは、拙者が自分の目で見て決めると、そう言いたかったでござる」
たしかに。その通りだ。
俺はこいつを知っていた。ゲームのイラストとしても、そして自分の前世と同じアイデンティティを持つ人物としても。
しかしこいつは違う。
突然知らない男が転がり込んできて。しかも服部忍三は今、女の子である。
「そっか……それは、すまん……」
「何を落ち込んでるでござるか。言ったでござろう? 主殿は別に嫌いではござらんよ。まあ、主かと言われたらまだ疑問が残るでござるが」
「えー、そこまで言うなら納得しとけよ。まあ敬っとけよ」
「立ち直り早いでござるな。……くく、そういうところも嫌いではござらんよ」
俺は照れ隠しに昆布茶を飲んだ。
何を照れてんだ、俺。こいつは服部忍三だぞ。
「それにしてもなるほどね。そりゃ中には反発する奴もいそうだ」
「そのプレイヤーとやらは皆主殿のように武術のたしなみがあるわけではあるまい? なら気に食わないやつを殺すくらい、拙者たちにかかれば鴨を絞めるよりたやすいでござろうよ」
「まあ、ただのゲーム廃人だからな」
俺が少し特殊なのだ。
こういった戦闘の本番には慣れというのが重要だ。俺はそれを前世の経験で補っているが、普通の現代人に求めるのは酷だろう。それこそ鴨の方が野生の本能でもう少しまともな抵抗をして見せるに違いない。
「仲間割れ、か。二日で十人以上って多い気がするが、まあなくはないのか?」
「それは死んだ人間の性格がわからぬからな、何とも言えんでござる。だが逆に下衆がすぐに死んだのだと前向きにも思えるでござる」
「下衆は死なねば治らんからな」
「……拙者のようなことを言うでござるな」
おっと、これは前世の信条だったか。
俺は席を立って追及をはぐらかした。お姉さんにいつものようにコインを渡してごちそうさまと告げる。
「ま、他所を気にしても意味ねえか。とりあえずダンジョン行こうぜ」
「そうでござるな。確か今日は第二のダンジョンでござったか」
「第二と第三のダンジョンだ」
昨日賭けショーギで負けただろうが。
「第二のダンジョンは水場であったか、いやはや、厄介そうでござる」
「いや、第二の水のダンジョンと第三の木のダンジョンだ」
「だが拙者、昔から泳ぐのは得意でござる。ふふふ、田舎の友人からお前は川を上って竜にでもなるのかと言われたのは懐かしい話でござるな」
「聞けよ」
「さあ、では第二のダンジョン、行くでござるよ!」
こいつは。
まあ、適当に煽ればすぐに第三のダンジョンにも入ることになるだろ。服部忍三は単純だからな。……自分で言ってて悲しいが。
俺達はそんないつものやりとりとしながら、もう馴染みになりつつある食事処からポータルへの道を進むのだった。
*
追跡者に気付いたのは、ほんの一瞬だが俺の方が早かった。やはりこれは経験の差なのだろう。ニンゾーは少しだけ悔しそうに俺の方を見上げた。
「……むう、気配の察知がうまいでござるな」
「まだまだ小娘には負けんよ」
まだまだ小僧には負けんよと、前世で師匠が言っていたのを真似してみる。ニンゾーはそれこそ師匠にそう言われた俺のように、ふん、と鼻を鳴らす。まったく、改めてみると何とも子供らしい仕草だ。師匠もあの時、こんな気持ちだったのだろうか。
「まくでござるか?」
「それもいいが、どうして俺達をつけてるのか気になる。様子を見つつ林の方へ向きを変えよう」
「了解でござる」
俺達はそれだけ言うと、先程までと変わらない馬鹿な問答を再開した。
その合間にちらりと後ろを見る。
着流しを来た大男と、小太りの男。その二人が食事処を出て少ししてから、こちらの跡をつけているようだった。小太りの男は気配を消すなんて考えていないのか、ただ普通に距離を取って歩いているだけだ。対して着流しの男、こちらは大きな図体からは考えられないほど見事だった。本来ならもう少し近づかないと気づけないほど気配が希薄だ。多分、気付けたのは小太りの方が足を引っ張っているからだろう。
そして俺はそいつらを肉眼で確認して、何者なのか推測が立った。
しかし、どうして俺達の跡をつけるのか。
ニンゾーはそれとなく道を変え、ダンジョンの方ではなく林へと奴らを誘導する。もしかすると誘導に気づいて何かアクションがあるかもしれない、とも予想したが、そんなことはなかった。おそらく、あちらは俺達に気づかれてるとは思ってないんだろう。気配を消すのは得意でも、誘導までは感知できない、と。俺は着流しの男のスペックを記憶する。
だが街を出て人っ子一人いない林へ入っていこうとする俺達を見てさすがに気付いたのか、着流しの方が小太りへ何か言っていた。
「あの太刀を振り回せそうにない場所まで行こう」
俺は着流しの男の腰に刺さった大太刀を見ながらニンゾーに言う。ニンゾーは了解でござると言い、そして二人で林が森へ変わろうかというあたりで立ち止まった。木は太く、またその間隔も狭い。いい場所だと言える。
俺達は振り返り追跡者を待つ。
一分もせず、その二人は現れた。俺はその小太りの方を見る。
黒髪黒目。
「お前、プレイヤーだよな。どうして俺達をつけるんだ?」
この世界はタップ&ブレイバーズの世界だ。それゆえ、人間の容姿が現実では到底ありえない配色をしている。俺は前世である服部忍三は黒髪黒目だった。しかし、目の前の女体化したニンゾーは紫の髪を持っている。つまりこれはイラストに準拠した結果の配色というわけだ。
着流しの男を見てみる。この大男は一見黒髪で普通の容姿をしているが、その瞳は輝くばかりの金色をしていた。目鼻立ちも整っていて、おおよそ着流しを着るような容姿をしていない。
それらに対して、小太りは違う。
全く純粋な黒髪黒目。顔立ちも悪くはないがよくもない、平凡なものだった。
「やはり誘い込まれていたであるか。吾輩としたことが油断したのである」
しかし小太りのプレイヤーはこたえない。
着流しの方がふむ、とそんなことを言いながら周囲を見渡すばかりである。
「おい、質問に――」
そう言いかけた時だった。
俺の中の忍者がけたたましく警鐘を鳴らした。
とっさに後ろに身体を倒す。
ひゅん、と。
すぐ目の前を冷たい軌跡が走った。
「――っぶねえ!?」
「む、かわされたであるか」
俺は尻餅をつかないよう片手を突き、それで跳ねるように着流しの男から距離を取った。ニンゾーは俺の前に立ち、忍者刀を構える。
「さすが主殿でござるな。拙者にも放つまで見えなかったでござる」
「……居合か」
「まさか吾輩の居合をかわせるとは思わなかったである。貴様、プレイヤーにしては反応がいいであるな」
着流しの男は大きく太刀を回してからもう一度鞘へ戻す。
ここは一抱え程の太い木々が狭い間隔で生い茂る森の中。しかし、男はその大きな太刀を横に薙ぎ、それがどこかで詰まることはなかった。
と言うことは。
男がカチリと鞘へ納めきると、ず、と音がして。
その軌跡上にあった木々が一度に倒れた。
俺たちはもう一度飛び退き倒木をかわす。舞い上がった落ち葉を払いのけながら男が進み、そして倒木をだんとその足で踏みつけた。
豪快。
まさにその一言に尽きる立ち振る舞いだった。
「これがほんとの英雄か。まったく……忍三とは大違いだな」
「む、拙者だってやるときはやるでござるよ」
「修行さぼろうとしてた奴がよく言うぜ」
ニンゾーはそんなやり取りをしつつ身体の影で手裏剣を取り出す。
いい判断だ。
「それにしてもその太刀捌き、“鬼面の武蔵丸”で間違いないか」
着流しは笑った。
「ふ、貴様も吾輩を知っているか。プレイヤーという奴等は皆、物知りであるな」
そう言いながら着流しは懐から一枚の面を取り出し、その顔につける。
真っ赤に彩られた、一本の太い角が尽きだす鬼の面。その瞳の部分には穴が開き、鮮やかな金色が覗く。
“鬼面の武蔵丸”。その赤い鬼面をつけることでタップ&ブレイバーズ内のイラストと完全に合致した。
武蔵丸は俺の前世よりもさらに前の時代、現代から数えると約六百年前に実在した人物だ。しかし、ブレイバーという呼び名には少しばかりそぐわない人生を送っている。
人斬り。奴はただその生涯において強者を追い求め、国内にとどまらず海を渡り山を越え、自分の太刀の通らぬ相手だけを探した。亡骸をたどれば武蔵丸に会える。その噂は唄になり俺の時代にまで残っていたほどで、語られる所業は豪快かつ惨忍だった。
そんな奴の噂が広く残ったのは、奴の興味がすべて強者に向いており弱者には一切手を出さなかったためである。強いものだけを殺し、弱いものはまるで視界に入っていないように無視する。
ただ、その噂が本当だとすると疑問が残る。さっきの発言から考えて、奴は俺を弱いと思っているはずである。ニンゾーはまだしも、俺が真っ先に狙われる理由がわからない。
「なぜお前が俺達を襲う?」
「吾輩はただ、ユウトの願いをかなえてやろうというだけである。願いをかなえる代わりに、強者の情報を吾輩は得るのである」
「願い?」
ユウト。俺は武蔵丸がちらと振り返った先を見る。黒髪黒目、小太りの男ユウトが、俺を憎々しげに睨んでいた。
「お前が俺達を殺したいのか? 正直、恨まれるようなことをした覚えはないんだが」
「拙者も理由もなく戦いたくはないでござるよ」
ニンゾーがそう言うと、睨んでいた男が破顔して素早くそちらに顔を向けた。
俺はその笑顔に一瞬、嫌な予感を感じた。
どこかで見たことがある。にちゃっとした笑顔。
つい最近、似たような顔を見た気がする。
……そう、ニンゾーのエロ画像を探してるだとかほざいていた男の顔に似ているのだ。
「だ、大丈夫なんだな。ぼ、僕は“ニンゾーたそ”に危害を及ぼす気はないんだな」
ぞくっと、背筋を気持ち悪いものが走る。
ただ当のニンゾーはまだわかっていないらしく、たそ? と首を傾げるばかり。
ただ男はそんな姿にも“萌え”ているのか、体をくねらせる。
「ああ、か、かわいいんだなニンゾーたそ。だ、大丈夫、すぐにその男から解放してぺろぺろしてあげるんだな。そ、それで一緒に一年半過ごして、現代に連れて帰るんだな。デュフフフフ」
わきわきと、男は気持ちの悪い手の動きをしながら舌なめずりをした。
*
運営さんこいつです。
ニンゾーはユウトとかいう男の発言でしばし思考が停止していたようだが、当のユウトがわきわきさせたまま一歩踏み出すと“瞬身”を使ってるんじゃないかと勘違いしそうになる速度で俺の後ろに隠れた。
おい、主を盾にするな。
「ああ、ニンゾーたそ、そいつに近づいたらいけないんだな。ぼ、僕の方に来るんだな。大丈夫、お風呂に入らなくてもいいくらい毎日僕がぺろぺろしてあげるんだな」
「き、キモチワルイでござる……」
たしかに、こんな奴が突然やってきたら仲間割れだってあり得るか。
ぺろぺろておい。
「ユウトはそいつをご所望なのである。そいつさえ捕えれば、吾輩は数多の強者の情報を得られるのである」
「良心が痛まないのか」
「……正直、情報だけ得てさっさと吾輩もこいつと別れたいのである」
あちらも苦労しているようだ。
しかしだからと言って、こちらが折れてやるわけにもいかない。前世の俺でもある服部忍三をあんなペロリストに渡すなんて、何が何でも御免だ。てか自分のことのように気分が悪い。
「なあ、武蔵丸。俺でも少しは強いキャラクターのことを知ってる。強者の情報なら俺が教えてやるからそいつとは縁を切ってはどうだ?」
伊達に俺も廃人していない。一応、名前を聞いてどういったステータスかくらいはそらんじることもできる。
しかし、武蔵丸は首を振った。
「おそらく、情報と言う面では貴様ではユウトには勝てんだろう。何せユウトは」
「ニンゾーたそこと服部忍三、五百年前に実在した伝説の忍者、家事が苦手で家には帰るだけの生活をしている。愛用の忍者刀は『柳』と言い、名匠『森介』の手によって打たれた一品、手に入れてから生涯使い続ける。また、ゲーム内の設定では胸が小さいことにコンプレックスを抱いていることになっており、その身体データは身長147センチ、体重……」
「なんで知ってるでござるか!?」
あ、これは勝てませんわ。
「その忍三とかいうくノ一がここに住んでいると言い当てたのもこのユウトであるからな。また、どうやら他の者にも詳しい様子。情報源としてはこれ以上に正確なものはないであろう」
「なお、人気キャラクターランキング一位を取得した際、オリジナルキャラクターソングも作られており、そのタイトルは『恋はニンニン、忍ぶもの』である。“♪こころニンニン……」
と、とうとう歌いだしたぞ、こいつ……。
しかし武蔵丸がいやいやでもこいつに従う理由が分かった。
そして俺ではそれをどうにかできない。てかそういうデータって公式ファンブックだけじゃ補えないと思うんだが。もしかして実在した忍三のデータもあらかた調べたのだろうか。だとしたらとんでもない執念である。
「……ん? てかそんなにニンゾーが好きならなんでお前がニンゾーのパートナーじゃないんだ?」
ここではゲームで一番多く使っていたキャラクターがパートナーになるはずである。
これだけ好きなら、俺なんかよりこいつが選ばれそうなもんだが。
俺のその質問に、歌が止む。
「……なかったんだな」
「え?」
「いくらガチャ回してもニンゾーたそが出てこなかったんだなああああ!」
悲痛な叫び。
ああ、そうか。
「も、もう何十万もガチャだけに使ったんだな! な、な、なのに一向に出てくる気配がないんだな! どういうことなんだな!?」
「物欲センサーってやつだな」
「……というか、そのゲームの拙者もよっぽど嫌だったのでござろうよ」
そう考えることもできるか。
そしてニンゾーが出ないから強キャラと噂される武蔵丸を使い続けていたと。
「吾輩にも迷惑な話である」
「同情はしよう」
「ならさっさとそのくノ一を渡すのである」
「さすがに俺もそこまで堕ちてはいない」
「……吾輩が言うべきではないかもしれぬが、正しい判断であるな」
考え方だけなら三対一なんだがなあ。
武蔵丸は強者の情報を求めてるから二体二に引き戻されてしまうというのがもどかしい。
「しかし、俺を殺したところでニンゾーがお前を好きになるとも限らんだろうに」
「い、一年半も一緒に過ごせばきっと分かり合えるんだな! それに、クリア報酬でニンゾーたそを現代に連れて帰れば、現代の知識がないニンゾーたそは僕に頼らざるを得ないんだな!」
「ああ、そう言えば“コイン十分の一の現金”の他の報酬はそれだったか」
パーティのキャラクターを一人連れて帰れると。
でもぶっちゃけそれって画面の中のキャラクターが現実に現れるってことだろ? ありえなくないか? 俺はせいぜいそのキャラクターのオリジナルフィギュア辺りがもらえるもんだと解釈してたんだけど。
だがこいつはそう信じているらしい。
まあ、こんな世界を作れるくらいだし、よくよく考えるとありえなくもない……のか?
「ええい、もうおしゃべりは終わりなんだな!」
ペロリストユウトはびしっと俺に向かってその丸っこい指先を向ける。
「武蔵丸! さ、さっさとそいつを殺してニンゾーたそを解放してあげるんだな!」
「と、いうわけである。悪く思わないでほしいである」
「拙者は別に囚われの身ではないでござるが……」
「むしろ、これから囚われそうだな」
「はあ、はあ……ぺろぺろぺろ……はあ、はあ……」
「……うう、ここは精一杯抵抗させてもらうでござるよ」
武蔵丸が再び太刀に手をかけ、俺達はそろって忍者刀を構えた。
こうして俺のこの世界で初の対人戦、VSペロリスト&武蔵丸が始まった。




