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夢をつなぐ  作者: キッド
5/9

2話

                   ーー渡会春奈ーー


私とアヤはサッカー部の練習にいち早く参加するため、クラスで解散になった後、すぐに着替えてグラウンドに向かった。

一番乗りを狙ったものの、私たちのほかにもユニフォームを着た女の子たちがいた。

私とアヤを含め、総勢12人。

入学式初日からサッカー用品持ってきてるの私くらいだと思ってたけど、さすがは有名校、新入生も意識が違う。


どうやら私たちのほか10名の女子たちは知り合い同士で、それぞれ2,3人位で固まっている。

青色のユニフォームが2人、白色のユニフォームが4人、赤色のユニフォーム2人、緑色のユニフォームが2人といった感じ。……あれ?白色のユニフォームを着たメンバーの中に一人だけトレーニングウエアを着ている子がいるけれど、もうひとり色が違う人がいるけど、見た感じキーパーのユニフォームだし、そのことはまた違ったトレーニングウエアだし……まぁおそらくユニフォームを忘れてきたんじゃないかなと思う。。

固まっているメンバー同士は同じユニフォームを着ているから同じチーム名と同士で固まっているんだろうけど……これからやっていく仲間になるんだし、話しかけたいんだけど、どうやって切り出したらいいんだろう。

隣にいるアヤにも聞いてみようかと思ったんだけど、泣きそうな目であたしを見ていた。


そういえば、アヤは私に話しかけるときも泣きそうになってたっけ。

もしかしたらアヤは人見知りの激しい子なのかもしれない。

だから私に話しかけたときも泣きそうになって……がんばったんだろうな。

そんなアヤには頼めない、私ががんばらなくちゃ。


何か話すきっかけを作ろうと一人うなる私と声をかけたくても人見知りが激しく実行できないアヤの前に、ちょうど3人組のグループが近づいてくる。


「やぁ、はじめまして」


声をかけようかかけまいかとする私たちに、なんとその女の子たちは声をかけてきてくれた。

声をかけてくれたのはその3人グループの中の、ちょうど真ん中に立っている割と小さな女の子で、白と薄い青色のユニフォームを着ていた。


「君たちも新入生だろ?

声をかけようか迷っていたんだけどね・・・・・・迷惑じゃなければ自己紹介をしてもいいかい?」


「え? あ、はい。 こちらも声をかけようかと思っていたところなので、むしろうれしいくらいです」


この女の子、アヤよりとはいかないものの、中学生にしては身長が低い。

少女にしては凛々しい雰囲気を持っていて、話すことに緊張してしまう。


「ふふ、そんなに緊張しないでくれよ。 僕たちは同い年なんだし。

これから一緒にやっていく仲間になるんだからさ」


「そ、そうですよね、すみません。 

どうも私、緊張しちゃって」


「それもそうか、ここ、異様な空気だもんね。 グラウンド集合っていうから集まったものの、まだ監督来ていないみたいだしね」


名門・白鴎女学院サッカー部の監督かぁ……どんな人なんだろう。

名門で知られるところの監督なのだから、やっぱり怖い人なんだろうか。

そもそも、男の監督なのかな、女の監督なのかな。

……ああ、考えてたらまた緊張してきちゃった。

それとは別に、隣にいたアヤはムスっとした顔になっていた。


「別に、緊張なんかしてない」


「えっ? でもアヤ、さっき泣きそうになってなかった?」


「ちがっ!……ハル、私、別に緊張してなかった」


「いや、でも」


「してなかった、よ?」


「……うん、そういえば、してなかった」


凄い威圧感でアヤは私に有無を言わさせないようだ。

……もしかするとアヤは極度の負けず嫌いなのかもしれない。

人見知りなのに負けず嫌い……何か色々と大変そうな性格であることは間違いない。


「ふふふ、君たち面白いな、僕はやなぎ 文香ふみか。 気軽にミカとでも呼んでくれ。 そのほうが私もうれしい。

今までは女子サッカーチームのリンスFCでDFをやっていたよ。 背番号は4番。

よろしく」


声をかけてくれた女の子、柳文香さんは笑顔で自己紹介してくれる。

リンスFC……お父さんから聞いた話だからあまり詳しくは解らないけれども、リンスFCというのは私たちの住む町、当摩市にある数少ない女子サッカーチーム。

この地区ではかなり有名で、小学生チームにとどまらず中学生チームもあり、アマチュア選手やプロ選手も輩出しているらしい。


背番号4番ということはおそらくセンターバックのスタメン。

有名チームで先発ということは並みの実力じゃないはず

・・・・・・くぅぅぅぅ、すごい!

まだ実力を見たわけじゃないけど、それでも背中に背負う番号で凄さが伝わってくる。

私が入ったチームはこんな選手がごろごろいるんだ。


この人も、そこの人たちも、あそこの人も。

・・・・・・鳥肌が立ってきちゃった、もう夢の中にいるみたいな感覚だよ。

でも、なんで中学の部活に入ってきたんだろう。

いくら白鴎のサッカー部が強いからって、それはあくまでも学校の中でお話。

クラブチームやユースチームと比べたら、いくら白鴎とはいえ劣るはずだ。

リンスFCの中学生チームに上がらなかった理由が・・・・・・何かあるのかな?


「それじゃ、ミカの次は俺の番だな。

俺は西条さいじょうチカ。 ミカと同じリンスFCでGKやってたぜ。

背番号は13番。 まぁ気軽にチカとでも呼んでくれ。よろしくな」


男の子のようなしゃべり方をするのは、西条チカさん。

力強いしゃべり方に、長い髪を後ろで結んだポニーテール。

まさに男勝り、勝気な女の子。

頼りがいのありそうな女の子だ。


「え、えと、リンスFCでFWだった及川おいかわ 瑠琉るるです、ルルでいいです。

14番でした。よ、宜しくお願いします」


私から見て右側に立っていた恥ずかしそうに喋っていた長身の女の子は及川瑠琉さんというそうだ。

にしてもかなり大きいな、神堂先生を見たときも大きいなと思ったけど、及川さんを見ていてもそう感じる。

及川さんの身長は神堂先生と同じとはいかないものの、高校生同等、いやそれ以上で、大人と勘違いされてもおかしくない身長と身体、・・・・・・もちろん胸も。

……何を食べたらこんなに大きくなるんだろう、・・・・・・・胸の方も。


「あの、よろしくお願いします。 渡会春菜といいます ハルって呼んでください

チームに入るのはこれが初めてです」


「松井綾香。 アヤでいい」


ぺこりと私がお辞儀すると、それに続きアヤも軽く自己紹介を済ませる。

・・・・・・幻滅しちゃったかな、私、クラブチームに入ったことなくて初心者も同然だし。

やってたとは言っても一人で壁当てとかお父さんや友達の男の子とサッカーやってたくらいだし。



「よろしく、二人とも。 あんまりかしこまらなくて平気さ。

これからうまくなっていけばいいんだ、大切なのは気持ちだよ。

お互いがんばろう」


ミカは笑顔で、いや、ミカもチカもルルもみんな笑顔だった。

ミカは何気なく言った言葉だったろうけどうれしかった。ただうれしかった。

何がとはうまく表現できないけど、明らかに自分よりうまいこの人に、お互いがんばろうと認めてもらえたことが。

よぉし、がんばるぞ。


「アヤ。 君もそうなのかい?」


ミカはアヤにそうたずねた。


「何故?」


「いや、どこかであったような気がしたんだが・・・・・・気のせいかな?」


何か思い出せない、そんな表情でミカはうなっていた。

そういえば私も聞いてなかった、アヤについて。

お互い自己紹介くらいしかしてなかったから。


「どちらにせよ変わらないか。

と、僕達はこんな感じかな。 まぁ大体、小学校の時に同じチームだったメンバーで固まっているようなものさ。

……まぁ、一人は除いて」


一人を除いて?

確かによく見ていると二人ずつで固まっているのをよそに、一人だけポツンと立っている子が一人。

もしかして、同じチームだった人がいなかったり、私みたいにチームに所属したことが無いのかもしれない。


「あの、彼女は何故ひとりで?」


「ん? あぁ、僕もさっき話し掛けて聞いてみたんだけどね? どうやら上の空だったらしく、なにも聞こえていなかったみたいだったよ」


う、上の空?……ってなんだっけ?

この子はやたら難しい言葉を使うみたい。

ま、まぁ話が聞こえてなかったってことだよね。


「結局何も解らずじまいだったかんな。 ルルと違ってガード固そうだし、ボディタッチ作戦もパンツ作戦も出来なさそうだったからなぁ」


「なっ!? だ、だめですよチカ!! あんなことを初対面の女の子にするなんて!!」


「へぇ~、ならルルにはしてもいいってことか?」


「えっ!? ・・・・・・わっ、私にもだめでしゅ!!!」


なにやら怪しげな話で盛り上がるチカとルル。

・・・・・・私もチカにはシールドを張っておかなくてはいけないようだ。

大体予想はつくけど、突然そんなことをされてはたまったものではない。

ルルを助けてあげたいけど・・・・・・まずは自分のみを護らないと。


ともかく私は気になり、ひとりでいる女の子のことを見つめる……親近感が湧いたのかもしれない。

私もアヤと一緒にいるとはいえ、もともとは一人、アヤが声をかけてくれていなければこの中で一人だったはず。

……あとで話し掛けてみよう。


「まぁ、どうせこの三年間、一緒にやっていくメンバーだ。 どうせなら全員で自己紹介しようか」


そう切り出したミカはその場にいる人達にオーイ、と大きな声で集合をかける。

その光景が私には、とてもやり慣れているように映った。


            神堂 祐志


「うんうん、どうやらメンバーは集まったようね。

とりあえず第一段階、クリアよ」


窓越しにグラウンドに集まったサッカー部侵入部員であろう彼女達を見つめながらうんうんと頷くクー姉。


「やりましたね、神堂先生」


その隣でも同じように、伊藤先生がグラウンドの彼女達を見ながら喜んでいる。


「喜ぶの早いって、まだ人数揃っただけだろ?」


「全く解ってないなぁ、ゆうちゃんは! 小さなことでも大事なこと、人数が揃わなかったらサッカー出来無いでしょ!」


「そうですよ、なんでもコツコツと! 教育の基本ですよ!?」


いや、いま教育関係無い気がするんだけど。

てか、いつのまにかクー姉と伊藤先生が意気投合している?


「んじゃ人数も揃ったことだし、練習の方、早速頼んだわよ。

さぁ、ゆきなさい!ゆうちゃん、伊藤先生」


指をビシッとグラウンドへ向け、サッカー部始動よ、といわんばかりにクー姉は俺達に命令する。

はい、とそれに呼応する伊藤先生に続き、俺も二つ返事をしようと思ったが……最後に聞いとかなくちゃいけないことが残ってる。


「クー姉」


そいつは特に差し当たり問題ないといえばないが、俺個人として聞いておきたいことだった。


「なに? せっかくビシッと決まったのに」


「なんで、サッカー部は廃部扱いになってたんだ?

聞いた話じゃここは女子サッカー有名校なんだろ? その立役者の現3年生や2年生がいないのは何でなんだ?」



                 渡井 春菜


「さてと、それじゃ皆集まったことだし、それぞれ自己紹介しておこうか」


グラウンドに集まっていたサッカー部新入部員達をひとつにまとめてしまったミカ。

さっき、この人が集合をかけるところを見て、あまり不自然に感じなかったのはこの人にキャプテンシーがあるからかもしれない。

そう感じたのは私だけではなく、周りの人達もそうだろう。 でなければ、見知らぬ人に集合をかけられ、文句ひとついわずに、こうして円になることなんて無いはずだ。


「ちょっと待ってよ、自己紹介もなにもここにいるメンバー、ほぼ顔見知りじゃない」


赤いユニホームを来ていた女の子が口を挟む。

あれ? 顔見知り?

なんで? 私は一人も知らない顔ばっかりなんだけど。


「フフッ、確かに。 集まったメンバーの大抵が近くのクラブチームの選手だからね。

ある程度は顔見知りか」


「そうだな、地区じゃいつもベストフォーまで残ってたリンスFC、SCセラフ、キリヤFC、FCサクラの主力だもんな。

嫌でも顔覚えてるぜ」


文香の言葉につづき、チカは確認するように各メンバーを見ながらそういった。

確かに、ユニホームをみるかぎりでは種類は四つしかない。

チカはキーパーって言ってたから当然種類は違うけど、その他の人たちは同じようなユニフォームを着ている。

そうか、それで顔見知りなんだ。

それなら私は知らずに、顔見知りってことに納得。


「ハル、アヤ。 ちなみに紹介しておくと、赤いユニフォームがキリヤFC、総合的なチーム順位で4位のチーム。

青いユニフォームがSCセラフ、チーム順位3位のチーム。

最後に緑のユニフォームがFCサクラ、チーム順位2位のチーム。

……言わずもがな、白いユニフォームがうちのリンスFC、この中ではチーム順位1位。

とはいえ、割と試合は均衡しているから順位はあまり当てにならないけどね」


私たちがチームのことを知らないのを気遣ってか、ミカはひそかに私とアヤに説明してくれる。

均衡している、とはいってもやはり一番強いのはリンスFCのはず。

お父さんの話でもそうだし、なにより去年の優勝チームがリンスだから。

私は試合を見てないから細かいことは解らないけど、試合で勝ち残ったのだから一番強いはずだ。


「ということでそっちの子達から自己紹介してよ、そうすれば少なくとも私達は全員の名前を知ったって言うことになるでしょ?」


「そうよね、それじゃまず……そっちの子からお願いしようかしら?」


蒼いユニフォーム、SCセラフの二人が話に便乗するような形で口を開き、あなたからと、指名する。

指名された子とは


「えっ? あっ!、わっ、わたしゅですかっ!?」


私の隣に立っていた子、トレーニングウエアを着ていて、ミカたちが話しかけても上の空だった子だ。

いきなり指で指されたことに非常に驚いているらしく、言葉は噛み噛みで、私の隣であたふたしている。


「よぉ~し、はぁぁっぁ、ふぅぅ~~、はぁぁぁ~~~、ふぅぅぅ~~」


小さな独り言が聞こえ、その後深呼吸を開始する。

おぉ、なんか凄い感じがする。

そして、その隣の子は大きな声で


「はじめまして、私、内藤ないとう そらって言います。

サッカーは初めてなんですけど、がんばって走ります。

よろしくお願いします」


最後には力強くお辞儀。

この子、私が思っていた第一印象とは違う女の子みたい。

ミカが話しかけたとき、上の空って言うものだから全然しゃべらない子かと思ったけど、真逆の元気な女の子みたいだ。

多分、緊張しちゃって何も頭に入らなかったんだと思う、そうだとしたら気持ちわかるなぁ。


「よろしくね、内藤さん。

私は渡会 春奈。 気軽にハルって呼んで」


「あ、はい。 よろしくお願いします、あの、ハルさん。

私もソラって呼んでください」


私は隣であることも含め、最初に彼女に声をかけ、握手を交わす。

そして順々とアヤ、リンスや他のみんな……と握手を交わしていく。

なんかこういうのいいなぁ、一気に友達が増えるみたいで……くぅぅ、早く皆とダッカーしたいなぁ!!


「さぁ、次は私の番だね」


意気込んだ私は一歩前に出て、その場にいるメンバー達に自己紹介を始める。


「私は一年二組、出席番号ー番、渡会春奈です。 ハルって呼んでください。

毎日、近くの公園とか学校のグラウンドで練習してました、希望のポジションはFWで、あと好きな食べ物は梨で」


「……ハル、そこまで聞いてない」


「あ、あれ? しゃべりすぎちゃった?」


あぁ、またやっちゃったよ私。

小学校のときもしゃべりすぎる癖のおかげで私はいじられキャラが定着してしまったんだった。

それもあって、私は男子との方とばっかり仲良くなっちゃって女の子の友達も少なかったし、何よりサッカーばっかりやってたから、当然女の子と遊んだことなかったし。

どうしよう、引かれちゃってたりされてないかな?

恐る恐る周りの反応を見てみると


「私、好きな食べ物で梨っていう子、始めてみたよ」


「普通、お寿司とかだよね」


「なんか面白い子だね」


……なんか別のところでいじられてました。

いじられるポジションはかわらなそうだけど、でも皆いい人たちみたいだ。


「監督にもよるし、ポジションがかわったりするかもしれないけど、この中でフォワードの子は少ないからちょうどよかったよ、ハル」


「フォ、フォワードになったらよろしくやりましょう、ハルちゃん」


「いや、ルル。 別にフォワードじゃなくてもよろしくやるだろうが」


「はっ! そうでした」


励ましてくれるかのように声をかけてくれるリンスの皆。


「一緒にがんばりましょう、ハルさん」


「……ハル、がんばろう」


そしてアヤとソラ。

この中で私はサッカーをできる……なんて幸せなんだろう。



「次で最後みたいだね、よろしく頼むよ」


私の隣にいたアヤが、ひょこっと小さく前に出て、口を開いたそのときだった。


「……私は――」


「おぉ、おぉ、面白そうなことやってるね。 私達も混ぜてくれない?」


10人くらいの女の人達がぞろぞろとやってきた。

4、7、9……人数を数えてみるとちょうどフィールドに入れる人数、11人だった。


「いきなり来て、なんなんだ?あんたたちは?」


「そうカリカリしないでよ。私たちとミニゲームをしないかってだけよ」


いきなりやってきたリーダー格であろう人は自信ありげにそういった。


「は、上等だぜ! 今すぐやるぞ!」


今にも飛びかかりそうな勢いのチカをルルがギリギリのところで抑えている。というか、チカちゃん、喧嘩するんじゃないんだからなにも飛びかかろうとしなくても。


「ちょっと待ってください。……チカも抑えて。

悪いですけど私たちは監督を待っているんです。 たとえ先輩命令でも、私たちは勝手な行動は取れないんですよ」


チカとは違いミカは物腰柔らかい対応でなんとか場をおさめようと、先輩?とチカの間に割って入っていく。

というか、先輩って……この人たちが?


「先輩、ねぇ。

そんな権限がいまさら私たちに残っているのか、怪しいところではあるけれど」


「?」


先輩?権限?

何の話をしているのだろうか、この人は。

……うぅぅ~、あぁぁ~、だめだ。

私、頭はいいほうじゃないからもっと解りやすく説明してほしいよ~。

この学力が平均的な白鴎にだって、私は努力して、何とかはいったんだから。


「まぁ、私たちがあなたたちを試してあげるって話よ。

此処のサッカー部にふさわしいのか、ふさわしくないのかをね。

当然の話でしょ? ここは強豪校、選抜があったっておかしい話じゃないわ」


「先輩、私たちもサッカーがしたくてサッカー部にはいるんです。もちろん、やりたくない訳じゃないです、むしろやりたいくらいです。ですが、それは監督が来てからでも遅くないのでは?」


確かにミカの言う通りだ。私だって凄くやりたい、それは多分ここにいる人、皆がサッカーをやりたがっている。でも私たちだけで試合なんかやってしまったら、後でどうなるか。そういうことを考えて、ミカはいってくれたんだと思う。これには皆、賛成みたい。先輩?は少し考えた後でこういった。


「もしこれが、監督の指示だとしたら?」


それなら、と考えてしまう。やりたいし、監督の許可も出ている……ウズウズしてきてしまう。


「先輩たちはユニフォームがまとまっているからいいですが、私たちは別々のものを着ているんです。

ビブスがないのでは」


「サッカー部だよ? それくらい用意してきたよ」


なんとか試合を回避したかったミカに残された選択肢は一つしかなかった。




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