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こんぴけん  作者: ホワイト
第1章 (そして始まる新しい生活)
7/12

第6話 (休日の午後はシューベルトの調べ)

というわけで小分けになったものです。

微妙に手を加えたような何もしてなかったような……?


例によって(くどいようですが)サブタイの()の中の言葉には深い意味はありません。


まぁ、なにはともあれお楽しみください。








 日曜日、憩いと安息の日……なのだが、俺にとってはある意味非常につまらない日でもある。以前は日曜日もそこそこ面白かったのだが、コンピューター研究部に入ってから毎日が波乱万丈すぎて(主に桜木の暴走、当然あまりよろしくない方向の出来事も含む)日曜日が『平和すぎて』つまらない。

今現在午前九時三十六分……

「ヒマだな……散歩にでも出かけるか。」

昔から特にすることが無いと散歩に出かける。まぁ要はヒマつぶしだな。 ……え? 高校生なら休日には女子とキャッキャウフフしてろって? 残念ながらそんなことに付き合ってくれるヤツはいないんだな。

 今日は天気もいいし豊野川の土手でも行くか……

豊野川は水川市内を流れる川で、河川敷には運動場やサイクリングロードが整備されている。俺の自宅から豊野川へは一度学校の近くを通って水川大橋の方へ歩いてゆく。川が近づくに連れて家は少なくなり、川を渡ると一気に畑などが増え、家はまばらになる。とりあえず学校の方に向かって歩いてゆくと、前をどこかで見たような人が歩いている。

「……籠原先輩ですか?」

「え? ……あら、代々木君、こんにちは。」

「こんにちは、今日はどうしたんですか?」

「私は今日ピアノの発表会があるのよ。……それで、代々木君はどうしたの?」

「俺はひまで暇でしょうがないのでヒマつぶしにぶらついてるんですよ。」

「……『ひま』って言葉を三回も並べるなんて……よっぽど暇なのね……」

「……言われて初めて気がつきましたよ……というかなんで籠原先輩は制服なんですか?」

「う~ん、一応発表会だからちゃんとした格好をしていかなきゃでしょ? だからよ。」

「……そうなんですか。」

「そういえば多分ないとは思うけど、小金井くんを見なかった?」

「小金井さんですか? 見てないです。」

「そう、ありがとう。小金井くんも今日の発表会に来るはずなんだけど、なんとなく忘れてるんじゃないかって気がするのよね……」

「……小金井さんですからね……」

「まあいいわ、私はもう行くから、また明日ね。」

そう言って籠原先輩は駅のほうへと歩いていった。

それから二十分ほど歩いて水川大橋に着く。橋を渡って上流の方へ向かってしばらく遊歩道を歩いて行く。野球のグラウンドでは地域の少年野球チームが練習をしている。こんな休日に練習するなんて元気が良いと言うかなんと言うか……とりあえずお疲れさん、だな。

土手の上の遊歩道を自転車でサイクリングを楽しんでいる人々やジョギング中のオッサンとすれ違いながら歩いてゆくと、人影もまばらな辺りに来たところで、やや広めの運動場のようなところでなにやら白衣のアヤシイ集団が何かをやっているということに気づいた。無論運動をしているわけではなさそうだ。

遠めに見ていても何をやっているのかはよくわからない。……気のせいであってほしいのだが、その集団の中で約一名どこかで見たことがあるような人物が混じっている。

「……あれ、小金井さんだよな……?」

その運動場へ降りてアヤシイ集団に近づいてゆくと、白衣の人物がこちらにやってきた。

「キミ、ここはもれなくかなり危険になる。早めに立ち去ってくれないか?」

「……いったい何をやってるんですか?」

「答えられないな、禁則事項だ。」

……ネタ、か?

『あれ~、代々木か? 何やってんの?』

白衣の集団に混じっていたのはやはり小金井さんだった……

「……小金井の知り合いだったか……」

白衣の人物が戻っていく代わりに小金井さんがやってきた。

「奇遇だね、で、どうしたんだい?」

「いや……俺はヒマつぶしに散歩してたんですけど、小金井さんこそ何やってるんですか?」

「ん~、裏科学部の実験に参加させてもらってるんだよ。特に今日は面白そうな実験をやってるからね。」

「……裏科学部って確か……」

「そ、まぁアブナイ実験やってるけど安全管理もちゃんとやってるからあんまり気にしないこと。というより一々気にしてたらきりがないよ。」

「……で、今日はいったい何をやってるんですか?」

「えーっとね、BLEVEの実験とお茶の間レールガンの射撃実験、後はエグゾーストキャノンの試作品の試し撃ちだったかな?」

「……なんですか、それ……」

「んじゃ見てく? 口で説明するより実際に見たほうが分かり易いと思うから。」

「ついでに小金井さんは何で制服なんですか?」

「仕様。」

「はい?」

「いや、だから仕様。」

「……というと?」

「だから僕は基本的に制服なのだよ、ワトソン君。」

「俺はどこぞの名探偵の助手じゃないですよ!?」

「ラ○ホー。」

「あぁ……意識が遠のいてゆく……わけないでしょう!」

『お~い、小金井、もうすぐBLEVEの実験を始めるぞ!』

「はいは~い! 代々木、よ~く見てなよ?」

「はぁ……」

なにやら馬鹿でかいカセットボンベのようなものが設置されていて、その周りで白衣の人たちが忙しく動き回っている。

『準備完了! 総員退避~!』

号令がかかると全員がそのカセットボンベライクなモノから遠ざかるように全力で移動する。

「あの~、小金井さん、これから何が始まるんですか……?」

「みてれば解る楽しい実験!」

「……まともに答える気はないと……」

『点火せよ~!』

やたらとデカいカセットボンベのような物の下で火が燃え始める。 ……ヤバくないか?

その場にいる全員がその物体Xから五十メートルぐらいは離れてじっと見ている。

『部長! そろそろ耐圧限界です!』

双眼鏡でそのモノを見ていた人が声を上げる。

「小金井さん、あの人は何を言ってるんですか?」

「ん~、双眼鏡であの容器にくっついてる圧力計を見てるんじゃない? そろそろボンバイエするってことだと思うよ?」

「ボンバイエっていったい……」

次の瞬間、あのカセットボンベライクな物体が爆発した。さらにそこから火柱が上がり、ちょっとどころではなくヤバい感じになっている……

「これぞリアルメ○ゾーマ!」

「……いっくらなんでもやりすぎでしょう!? 小金井さん!?」

「ザ○キ!」

「ツッコむぐらいなら死んでしまえと!?」

「パ○プンテ!」

「とてつもなくおそろしいものをよびだしてしまった!?」

「それはきっと『ぽりすまん』!」

「俺はまだタイーホされたくない!」

「『メガ○テのうでわ』ならあるって言ってたよ?」

「もう死亡フラグが!?」

「大丈夫、きっと生まれ変わったら幸せになれるよ?」

「まだ死にたくない!」

「ならば『全力逃走』あるのみ!」

「それでは逃げます!」

「しかしまわりこまれてしまった!」

「なんですとっ! ……もう終わりにしません? ところで『メガ○テのうでわ』があるってどういうことですか?」

「これからそれでちょっと遊ぶんだよ?」

「はい?」

「ほら、今準備中。」

小金井さんが指差す方向を見ると、もう爆発の後はキレイに片付けられていて今までカセットボンベライクな物体が置かれていた場所に、マネキン人形がセットされている。

「……今度は何をするんですか?」

「だからメガ○テのうでわの実験。」

「それと若干クレーターができてるように見えるのは気のせいですか?」

「誤差の範囲内でしょ? そんなの。」

「……はぁ……」

「……スキあり! ほ~れっ♪」

「なっ!?」

何かが腕にはめ込まれたらしい。手首を見るとなにやら怪しげなリングがついている。

「……これってまさか……」

「メガ○テ! ……ポチっとな!」

「ぎゃぁぁぁぁ! ……って何も起きない? これただの腕輪じゃないんですか?」

「中身はぎっしり詰まったTNT。」

「はっ……早く外してください!」

「……なのは今マネキンについてるやつ。」

「……冗談キツイです……」

「それの中身はニトログリセリン。」

「……もっとヤバくなった!?」

「……だったら代々木は今頃あの世。」

「……心臓に非常に悪いです……」

「……正解は酸化鉄とアルミニウムの粉末、ちょろっと飛び出してるのはマグネシウムリボン。」

「……なんなんですか?」

「じゃあそのマグネシウムリボンに着火してみる?」

「……やばそうなので止めときます。」

「ちなみに点火すると腕輪の中が三千度ぐらいになってその腕輪は鉄パイプ製だから融けちゃうだろうね。」

「……やっぱりアブナイ物じゃないですか!」

「テルミット反応バンザイ! それとここで渡されるものは基本的に危険物だと思ったほうが安全だと思うよ?」

「……よーく覚えておきます……」

『メガ○テのうでわ実験を始めるぞ~』

「おっ、始まるよ。」

再び白衣の人たちがマネキンを中心に大きく広がる。

『3・2・1……アフロ!』

そしてマネキンが派手に爆発した。もれなく俺の目の前にマネキンの手の残骸と思われるものが降ってくる……下手なホラーよりよっぽど怖いな……

「……掛け声は『アフロ!』なんですね……」

「そっちに着目するか~、なかなか面白い考え方をしてるね。」

「目の前に降ってきたマネキンの残骸に対してどうコメントしろと!?」

「それと濃硫酸に萌えられるようになったら裏科学部の門を叩くべきだね。」

「スルーされた!?」

『それでは次はレールガンの射撃実験を行う!』

「……レールガンって……」

「と○る科学の超電磁砲。」

「超能力者は実在した!?」

「あんな人間兵器じゃないから大丈夫。砲弾速度はマッハ10だから。」

「さらに速い!?」

「めざせポ○モンマスター! ……じゃなくって対戦車砲並みの威力!」

「ゆけっ! モ○スターボール! ……じゃなくって……もはや民間レベルの実験じゃありませんって!!」

「大丈夫、今日撃つやつはそんな威力で撃ったらもれなく砲身が吹き飛ぶから。」

「……どこが『大丈夫』なんですか!?」

「万が一事故が起こってもきっと楽に死ねるんじゃない?」

「そっちの安心!?」

「生命保険は入ってるかい?」

「もう逃げます!」

「そっちに行くとレールガンの餌食になるよ?」

「じゃあこっちに!」

「しかしまわりこまれてしまった!」

「またですか!?」

「つうこんのいちげき!」

「おうさまに怒られる!?」

『3・2・1……発射!』

すさまじい轟音と共に何かが撃ち出され、川面に巨大な水柱ができる。

「……小金井さん、お願いですからもう帰してください……」

「だめだよ~、これからもっと『あんぜん』で『たのしい』実験をするんだから♪」

「その『安全』と『楽しい』は絶対に一般的な意味と違います!!」

『ポテトキャノンE1J1型の射撃実験を行う。 担当者はすぐに集合されたし!』

「……ポテトキャノンE1J1型って……」

「ポテトキャノンって知らない?」

「知りません。」

「子供のおもちゃに大人が本気を出したらタイヘンなことになっちゃったシロモノ。」

「具体的にどう大変なことに!?」

「威力がすごい。」

「全然わからない……むしろわかりやすい!?」

「どっち?」

「分かりません!」

「百聞は一見に如かず!」

「見てけと!?」

「そのとーり、よく分かったね?」

「結局E1J1って何のことですか!?」

「E1は発射方式『ヘアスプレーを使用した爆発方式』、J1はジャガイモのサイズ『まるまる一個』」

「意味があった!?」

『砲撃手は一列に並べ~!』

バズーカにしか見えないものを持った白衣の人たちが一列に並んでそれを構える。

『撃て~い!』

一列に並んだバズーカのような物から何か(小金井さんの話から想像するにジャガイモ)が放たれ、日曜日の、素晴らしく晴れ渡った青空に吸い込まれて行く。

「……なんかここまでくるとむしろすがすがしいですね……」

「科学バンザイ! いやー、やっぱこうでなきゃ!」

「……俺的にはもう帰ろうって気も失せました……」

『ポテトキャノン部隊は引き続き射撃実験を続けるように。エグゾーストキャノン担当は準備を始めてくれ!』

「……あれって……消火器ですよね?」

「ピンポーン! 正解! 正確には消火器『だったもの』!」

「……いろいろとアウト!」

「気にしたら負け!」

「負けた!?」

そしてその消火器『だったもの』を地面に向けて撃つ白衣の人たち。 ……なんか気のせいでなければ地面に穴を掘っている気が…………ちょっと待て! シャベルも何も無いぞ!?

「小金井さん……なぜ地面に穴が開いていくんですか?」

「何言ってるのさ、空気圧で地面に穴を掘ってるんだよ?」

白衣の人たちの内一人が空に向かってそのナントカキャノンを構える。

『総員頭上に注意せよ! ……撃てい!』

そしてその消火器だったモノから巨大な火の玉が撃ちだされた。

「あれはいったい!?」

「多分中にガソリンを入れて撃ったんだね~」

「危険すぎますって!!」

「これぞリアルメ○ゾーマ!」

「……もはや人殺しの道具にしか見えない!」

「そう見えるんだったら君はかなりキテるから早めに診てもらいな?」

「まさかの変質者扱い!?」

「代々木が一番アブナかったか……」

「そんな深刻そうな顔をしないでください!」

「冗談だよ?」

「分かりにくい!!」

「さて、今日の実験はこれで一通り終わったからもう帰っていいよ?」

「いきなり解放された!?」

「それじゃあまた明日、かな? 多分。」

「なぜ多分!?」

「明日は学校をサボるかも?」

「……籠原先輩が怖くなるんで来てください! ……それと今日はピアノの発表会は無いんですか?」

「発表会? う~ん、……あったかも。」

「……時間は大丈夫なんですか?」

「大丈夫大丈夫、午後からだし。でも何で代々木がそのことを知ってるんだい?」

「今朝籠原先輩に会った時に『小金井さんも発表会に来る』っていう話を聞きました。」

「そうかそうか~、ありがとう。それでいくとそろそろ時間がヤバイから僕はドロンするね。」

「やっぱり大丈夫じゃなかった!」

「それじゃね~。」

小金井さんは白衣の集団の一番偉そうな人(おそらくは裏科学部長)になにかを手早く言うと全力で土手に上がって水川大橋の方へ走り去っていった。 ……さて、俺もこんな物騒な場所からは早めに離脱することにしよう…………

『投下~!』

後ろの方では何やら茶色い噴水が上がっている……まさかアレがメントスコーラの実験!? 吹き上がってる液体の入っている容器はどう見ても二リットルペットボトルだし……しかも噴水の高さはかなりある……確かにアレを小金井さんがやったら籠原先輩は怒るだろうな……それより運動場の後始末ってどうするんだ?

……まぁ気にしてもしょうがないことを気にするのは止めることにした。

 土手道を引き返して水川大橋を渡り、今度は駅のほうへ歩いてゆく。

『お~い、代々木~!』

後ろから声をかけられる。振り向くと声の主がこちらに向かって歩いて……いや、あれでも走ってるのか!?

「ふぅ、はぁ、やっと追いついたぞ……」

「……神田、一応聞いとくがあれは『歩いて』たんだよな?」

「何を言う! オレは全力でお前を追いかけてきたんだぞ!」

「……もちっとでいいから運動しないか?」

「無理だ! そんな時間があればいろんな物が食える!」

「食った分のカロリーはどうするんだ?」

「カロリーなんか気にしてたら上手いモンは食えん!」

「なんか含蓄があるっぽく聞こえるだと!?」

「にんげんだもの、み○を。」

「いまさらそのネタの復活を狙うか!?」

「このネタは永遠だろう!」

「最後に聞いたのは入学式の日だった気がするが!?」

「我ら不滅のロケ○ト団!」

「なんだかんだと聞かれたら!?」

「答えてあげるが世の情け!」

「世界の破壊を防ぐため!?」

「世界の平和を守るため!」

「愛と真実の悪を貫く!?」

「ラブリーチャーミーな敵役!」

「ム○シ……じゃねえ! 乗せられた!?」

「まだまだだな、代々木君!」

「まだまだだよ! 神田君!」

「とまあそれはさておき……なぁ、代々木、今からアキバにラーメン食いに行かないか?」

「ラーメン食いになぜアキバ!?」

「あそこはラーメン激戦区だぞ!」

「だからなんだよ?」

「ハシゴするからついて来い!」

「俺はいやだ!!」

「なぜだ~!?」

「いつもお前ばっか食ってんじゃん!」

「そんなのは想定内だろ?」

「い~や、断固行かない!」

「ちぇっ……つれなくなったな、代々木~。中学の時は来てくれたのによ~。」

「もう勘弁してくれ!」

「はっ! まさか、代々木、お前自分だけ俺の知らない間にカノジョつくってキャッキャウフフしてるのか!?」

「してねーよ!」

「そうか、良かったぜ……もし本当にそうだったらオレはお前をコンクリ詰めにして東京湾に沈めなきゃいけないところだったぞ。」

「彼女つくったら俺はお前に殺されるのか!?」

「抜け駆けは許さん憎!」

「憎って……なんかもう既に恨みを買ってるのか!?」

「ん? いや、そんなはずはないだろ?」

「さっきお前さりげなく『憎』って使っただろ!」

「ただの誤植(?)だ。気にしたら負けだ。」

「気にするわい! 変なところで間違えるな! しかもさりげなく誤植って字の後に(?)ってつけたな!?」

「間違えるさ、にんげんだもの、み○を」

「なんか妙に説得力がある!?」

「おおっと! いかん! そろそろ行かないとマズい! ……だがここで代々木とだべってるのも捨てがたい!」

「もういいからとっととゆけい!!」

「おうよ! さらばだ、戦友よ!」

「いつお前と戦いに出たんだ!?」

「ああ、思い出す…・・・お前と共に並んだ夏のあの日……」

「……嫌な事を思い出させてくれるな!」

「ちゅーわけで今年も行くか?」

「断る!」

「ちぇっ、つれなくなったな、代々木~。」

「い~や、断じて無限ループには入らせないぞ!」

「なにっ!? 読まれていただと!?」

「分からない人は『い~や、断固行かない!』辺りから読み返してくれ! そして神田、もう行け!」

「おうよ! じゃあな!」

嵐が去った…………引き続き駅のほうに向かって歩いてゆく。すぐに神田を追い越すとかはもちろん誤差の範囲内な。

 さて、神田よりもだいぶ早く駅前に着いたわけだがこの後どうするか…………とりあえずメシ食うか。

 近くのファミレスに入る。席に案内され、メニューを見て食べる物を決める。 ……何にするかな……………………決定、ベタにハンバーグだな。そして呼び出しボタンを押して店員さんを呼ぶ。

「はい、ご注文はお決まりでしょうか…………ってなんで代々木君がここにいるの~!?」

「はい? ……って桜木!? お前こそなんでここにいるんだ!?」

「わたしはここでアルバイトしてるんだもん!」

「初めて聞いたわ!!」

「あ……とりあえず注文をとらなきゃ! 何にするの?」

「ハンバーグ。」

「はーい、それじゃあちょっと待っててね~」

なんつーか客が知り合いだと一気に応対が馴れ馴れしくなるもんなのか?

 待つこと数分、頼んだハンバーグを桜木が運んでくる。

「はーい、おまたせ~! できたてあつあつハンバーグだよ~」

「ありがとな、……じゃあいただきます。」

「めしあがれ~……あ、いま行きま~す!」

桜木はどこかのテーブルの応対に行った。日曜日のお昼時とあって、家族連れなどで賑わっていて店員さんはみんな忙しそうだ。 ……ハンバーグを食べ終え、貰った水を飲みながら店内の様子を窺ってみるが、桜木が見当たらない。まぁ休憩中なのかもしれないが。

「ありがとうございました~」

会計を終えて外に出る。 ……さて、どこに行くか……

「つ~かま~えた~♪」

「ぬおあっ!? 誰だ! ……って桜木か。お前、バイトはもういいのか?」

「うん、わたしがここで働いてるのは土曜日の午後と日曜日の午前中だけだもん。」

「……つーか桜木がここでバイトしてたなんて知らなかったぞ?」

「だってみんなにはナイショにしてるも~ん! ……あ、代々木君も誰かに言っちゃダメだよ?」

「分かった分かった。しかしそういえば桜木の私服って初めて見るな。」

「えへへ~、かわいいでしょ~?」

「どっちかというと子供っぽい?」

「ひ……ひど~い、どうしてみんな同じこと言うの!?」

「『みんな』ってだれだよ……」

「えーっとね、秋乃先輩と小金井さんとみっちゃんとあやちゃんと……」

「……全員挙げる必要はないぞ?」

「……とにかくいろんな人から言われるの! どうして?」

「それは多分服の問題ではなく桜木自身の問題じゃないかと俺は思うぞ?」

「わたしが子供っぽいの? ……それならなんか納得するかも……」

「納得した!?」

「それお母さんにも言われたんだもん!」

「まさかのおふくろさん登場!?」

「でもいいか、わたしはわたしだもん!」

「……自己完結かい……ま、それでいいんじゃないのか?」

「これでいいのだ~♪」

「そんな旧石器時代のギャグはせんでいい!」

「む~っ! 神田君のときみたいにもっと面白いツッコミしてよ~!」

「俺にはそんなものが求められていた!?」

「そういえば代々木君はこの後どうするの?」

「俺か? 特に決まってないな……あえて言うなら夕方までは時間を潰そうと思ってるぐらいだな。」

「ねぇ、それじゃあ一緒に買い物に行かない?」

「……荷物持ちか?」

「それをやってくれるととってもうれしいけど、そんなことはないよ~」

「……まぁいいか、どうせヒマだし。……で、何を買いに行くんだ?」

「いろいろかな? お洋服とか文房具とか。」

「わかった、それじゃあ行くか……っていうかどこに買いに行くんだ?」

「駅前のお店だよ~。じゃあれっつご~!」

そして駅前のビル群の内の一つのビル、主に服や趣味の品々を取り扱っている店が集まっている建物に入ってゆく、そして洋服や小物(アクセサリーの類)といった品物を中心に扱っているお店の前に着いた。

「……俺は店の前で待ってるから、買い物が終わったら呼んでくれ。」

「えっ? お店に入らないの?」

「……なんか入りづらい空気を感じてな……」

「そうなの? じゃあ……えいっ!」

「ぬおっ!?」

桜木に腕をつかまれ、店の中に引きずり込まれる。

「ほら、もうお店に入っちゃったよ?」

「……強引だな……」

「だってこうしないと代々木君絶対にお店に入ってこなかったでしょ?」

「多分そうだが……」

「あっ! かわいいお洋服!」

「話を聞いてない!?」

桜木はあっという間に店の奥へと消えてゆく。 ……独り取り残される俺…………なぜだろう、悲しくないのに涙がでるよ……

桜木を追って店の奥へと進んでゆくと、桜木はいろんな服を手にとっては首をかしげて元の場所に戻していた。

「……何やってんだ?」

「う~ん、なんかピン! ってくる服が見つからなくって~……あっ! これなんかどう?」

自分の体に重ねるように服を持ってこちらに見せてくる。

「まぁ似合ってるんじゃないか?」

「じゃあこっちは?」

「それもいいと思うぞ?」

ここである事柄を思い出す。 ……そう、多くの場合において女性が物を買う時にはとんでもなく時間がかかるということを……

しばらく後……

「……俺は疲れたぞ……」

「あはは……ごめんね~、悪気はなかったんだよ?」

「……それは分かってるから心配するな……」

結局桜木が買う服を決めるのに二時間ほどかかってしまった。その間俺はひっきりなしに服を見せてくる桜木に返事を返し続けなければならなかったわけだ……

「……で、次はどこ行くんだったっけか……」

「文房具屋さんだよ~」

「で、その文房具屋はどこにあるんだ?」

「ここの上だから大丈夫!」

「……何が大丈夫なんだ?」

「じゃあ行こう!」

「またまた話を聞いてない!?」

そして文房具屋にたどり着く。当然のことながら様々な文房具が置いてあるわけだが、その中に混じって何やらアヤシイ系のグッズも置いてあるのが気がかりだ……

「ねぇねぇ、代々木君、コレ見て!」

「なんだ? ……うぉっ! なんだそりゃ!?」

桜木がこっちに見せてきた物はいわゆる指差し棒(たまにコレで黒板を指し示す教師がいる)なのだが、先っぽについているモノはどう見ても……

「……スラ○ム、だよな?」

「こんなのもあるけど?」

「スラ○ムナイトだ!」

「これなんかどう?」

「まさかのくさったし○いかよ!?」

「じゃあこれは?」

「トイレのかっぽん! 誰だ、こんなもん考えたのは! おもしろす……じゃなくってふざけすぎだろ!?」

「だってこれ『おもしろ指(?)差し棒』って書いてあるよ?」

「ちゃっかり『指』の後に『(?)』が!?」

「これなら代々木君も納得?」

「今度は東急ハ○ズの看板みたいな指がついているだと!?」

「これは『指』の後に『(?)』はついてないよ?」

「これぞ正しき『指差し棒』! ……じゃなくって桜木は何を探しに来てるんだ!?」

「え~っとね…………あれ? なんだったっけ?」

「まさか忘れたとおっしゃる!?」

「……忘れちゃった、てへ?」

「ここまで来たのに無駄足にしたくはないです! 桜木さん!」

「ちょっと待って……思い出してみるから……」

「…………」

「思い出せないことを思い出そうとしてみるのだ~……しかし思い出せな~い!」

「諦めないでくれぇぇぇぇ!」

「あっ!」

「思い出したのか!?」

「あっちにピコピコハンマーがある~!」

「全然関係ねぇ!」

「えいっ!」

「ピコッ! ……じゃねえ! 桜木、売り物で遊ぶな!」

「む~、生意気な~……えいっ!」

ピコピコッ!!

「二回もかよ!?」

「あっ、こっちの方が面白いかも~!」

「ゲンコツハンマーだと!? 見た目がとってもデンジャラスだぞ!?」

「うりゃ~!」

ゴッツン!

「ちょっと待て、それムチャクチャ痛いんだが!?」

「え? そうなの? ……ホントだ、ゲンコツの部分は鉄製だって~」

「まさに鉄拳!?」

「てっけんせいさ~い! えいっ!」

「ぬぉっ!」

ビュオッ!!

「あ~っ! かわした~!」

「桜木さん! 風切音がヤバイです!」

「だってこれ意外と重いんだもん!」

「自分の手に余るものを振り回さないでくれ!!」

「そんなこと言っても……あちゃあ!」

ゴツッ!!

「痛ぇ! 星が見えたわ!!」

「ふぅ、意外と重かった~!」

「だからそれ危ないって!」

「こっちならだいじょぶそう?」

「今度はジャンボハリセン!?」

「すぱぁん!」

「うぉっ! 危ねぇ!」

「あ~っ、またよけた~!」

「俺はツッコんでもツッコまれる役じゃねぇ!」

「だからこそ代々木君につっこんでみる~!」

「だから止めてくれ!」

「わかったよ~、しょうがないな~」

「それをお前には言われたくない!」

「む~?」

「いや、だから早くハリセンをもとあった場所に戻してくれ……」

「……これでよ~し! それじゃあシャーペン見に行こう?」

「唐突になぜ!?」

「やっとここに来た目的を思い出したんだよ?」

「いつの間に!?」

「さっきゲンコツハンマーで代々木君を叩いた時?」

「殴った方が思い出すとは画期的だな!?」

そしてシャーペンなどを扱っているコーナーに行くが、途中途中で見た物を見るに、この店イタズラグッズとかおもしろグッズの類がやたらと充実している気がするのだが……

「ねぇねぇ、水にとける紙だって~」

「それって子供向けだろ!?」

「だめだな~、代々木君。子供心を忘れたらだめだよ~!」

「お前の場合は子供すぎるだろ!?」

「大人もかつては子供だった、しかしそのことを覚えている大人は少ない!」

「とりあえずうろ覚えでごめんなさいって王子様に謝って来い!」

「どこの王子様?」

「星の!!」

「むりだよ~、わたしは宇宙にはいけないもん!」

「素直になりすぎだ!」

「いけないの?」

「だめじゃないが……」

「みてみて! おっきなボールペン!」

「切り替え速いよ!?」

「でもこれって筆箱に入らないよね……?」

「持ち運ぶ気満々!?」

「だってこれってちゃんと使えるんでしょ?」

「それはネタ系であって実際に使用するとかはあんまり考えてないと思うんだが!?」

「どうしよう……買っちゃおうかな?」

「なんというお金の無駄使い!」

「世の中はこういう無駄使いで回ってるんだよ?」

「桜木に世の中について語られるとは!」

「まだまだだなぁ、代々木君。」

「神田に続いてお前までそんなことを!?」

「あっ、みてみて! グニャグニャの鉛筆!」

「だからなんでお前はそうなんだ!?」

「なにが?」

「どうしてこの子は唐突に話題を変えるかね!?」

「なんかいけないの?」

「いけないの!」

「どうして?」

「こっちが話についていけないから!」

「頑張ってついてきてよ~!」

「無茶をおっしゃる!」

「そんな無茶じゃないよ~!」

「無茶です!!」


……とまぁエンドレスに近いやり取りが終わった後、無事(?)に桜木は買おうとしていた物を買い、俺たちは店を後にする。

「代々木君、ありがとね。今日はとっても楽しかったよ?」

「……俺はとにかく疲れた……」

「あはは~、ふぁいと! 代々木君!」

「……お前は改善する気はないのね……」

「じゃあね~! また明日~!」

桜木と別れた後、本屋に行こうと思い、たまに神田に連れてこられるゲーセンの前を通った時、見覚えのある人物がいるのが目に留まる。

「……また小金井さんか……?」

とりあえず小金井さんであることを確認して声をかける。

「……小金井さん、なにやってんですか……」

「ん? ありゃま、また代々木か、今日はよく会うね?」

「……そうじゃなくって……」

「見りゃわかるでしょ? UFOキャッチャーで遊んでるんだよ?」

「……小金井さんには二次元趣味もあったんですか?」

「違うよ~、コレは取った後友達に売るんだよ?」

「確定なんですか!?」

「もうメールで予約を取り付けてあるから。」

「ちなみにいくらで?」

「取るのにかかった金額の一・五倍で。」

「意外とおいしい!?」

「……またそんなことを……」

「籠原先輩までどうしてここに!?」

「私たちは発表会の帰りなのよ。」

「で、どうしてゲーセンに?」

「小金井くんが見てくって言うからよ……」

「いや~、だってさ、UFOキャッチャー見ると景品取りたくならない?」

「……私はならないわ。」

「代々木は?」

「俺は確実にふんだくられるタイプですからやりません。たまに神田がやって撃沈してるのを見ますけど……」

「そうなのか~、まあ僕も景品の使い道は取った後考えるけどね。」

「またまたお金の無駄使い!?」

「代々木君、無駄使いがないと世の中は上手く回らないんだよ? ほら、金は天下の回り物って言うじゃない。」

「本日二度目の世の中講義!?」

「UFOキャッチャーやる時の敵は物理法則!」

「なんか名言っぽい!?」

「さらに言うなら払い出しのタイプごとに取るためのコツがある!」

「あなたはどこまで猛者なんですか!?」

「取れる仕様のやつなら三千円用意しておけば大体取れるよ?」

「取れない仕様とは!?」

「ゲーセンの ゆるゆるアームが 許せない」

「さりげなく五・七・五調!?」

「おっしゃ! 取れた!」

「取っちゃった!!」

「よし、さて、じゃあ行こうか、籠原さん。」

「……やっと?」

「まぁそんなに怒るようなことじゃないでしょ?」

「……そうだけど……」

「もう帰るんですか?」

「うんにゃ、その前に本屋に寄ってくんだよ。」

「鬼遇ですね、俺もですよ。」

「それなら一緒に行く?」

「そうします。」

「ところで字が間違ってるよ?」

「え? ……マジだ! 鬼が来た!?」

「漢字は正しく使おう!」

「そして指摘するのが遅すぎてコメントできない!」

「……いいからもう行くわよ……」

そして本屋へと向かう。

「ところで先輩たちは何を見に来たんですか?」

「楽譜だよ。代々木は?」

「特にこれといった目的は無いです。」

そういうわけで小金井さんたちについていくことにした。

「さーてと、どこだったっけな~」

「何を探してるの?」

「ベートーベン、ピアノソナタNo.15 『田園』の楽譜だよ~」

「小金井くんがベートーベン? 珍しいわね。」

「いやー、ベートーベンってあんまり好きじゃなかったんだけどさ~、あの曲聞いてから考えが変わったよ。」

「そう……私も小金井くんの意外な一面を見つけたわね。」

「どんな?」

「好きじゃない作曲家の曲はほとんど聴かないんだとばっかり思ってたわ。」

「一応聴くだけ聴くよ? たまにこうやっていい曲に出会えるから。」

「小金井くんにとっての『いい曲』ってなんなの?」

「『僕の』心に染みる旋律を持った曲、かな? 多分。」

「……で、そういう曲を見つけると弾きたくなっちゃうの?」

「そうそう、やっぱり自分の手で奏でるのが一番だから。」

「で、そうやって課題曲をやらないで自分の好きな曲を弾くわけね……」

「そうだよ~、だって弾きたくもない曲を弾くなんてつまらないじゃん?」

「別に小金井くんぐらいの腕前があるんだったら何も言わないけど……少しは先生を労わってあげたら? あんなに自分の言ったことを聞いてくれないんじゃ先生も困っちゃうわよ?」

「大丈夫、課題曲も一応こなした上で好き勝手やってるから。」

「……その結果が去年の『さすらい人幻想曲』?」

「そうだね~、何でか知らないけどつっちゃんがビビりまくってたな~」

「あんな大曲で難曲を弾きこなされたら誰でもそうなるわよ……いっそのこと今度は『超絶技巧練習曲』でも練習したら?」

「いま練習してるよ? 『マゼッパ』を。」

「……相変わらずみんなの想像の斜め上を飛んでいくのね……」

「どうでもいいけどさ~、『超絶技巧練習曲』って字がかっこいいと思わない? 特に『巧』の字の辺り。」

「……どうしてそういう不思議な物の見方をするのかしら……」

「いや~、字がかっこいいかって結構重要なんじゃないかな? たとえばプログラムなんかで目立つじゃん?」

「なにがどう目立つのよ……」

「他にも『即興曲』ってのもいい感じだよね?」

「……まさかそれでシューベルトの『即興曲』を全曲弾きたいって思ったの?」

「それは違うよ~、あれは純粋に曲が良かったんだよ。というかもはや紙の領域だよね~、あの曲の美しさは。」

「それは楽譜は紙でできてるんだから『紙』の領域?でしょうね……」

「ごめん、間違えた、神の領域だから。」

「……普通に訂正してよ……」

「めんどくさいもん。」

「こうやって書くほうがめんどくさいんじゃないの?」

「こうやって話が続いてく分にはめんどくさくない。」

「……そう、わかったわよ……」

いつも思うのだが、小金井さんと籠原先輩の掛け合いは入り込むスキがない……

「……で、籠原先輩は何を買うんですか?」

「私? ショパンの『前奏曲集』よ。」

「……とりあえず何のことだかさっぱり……」

「聴いてみる?」

「いや、俺はクラシックはさっぱりなんでいいです……」

「そう? やっぱり高校生でクラシックを聴く人ってそんなに多いわけではないのね……」

「……逆に籠原先輩はポピュラーなんかは聴くんですか?」

「ほとんど聞かないわね。小金井くんもそうでしょ?」

「うん、こういっちゃなんだけどあんまりきれいな曲がないから耳に毒だね~。」

「……さすがにその発言は世の中のアーティストを敵に回してると思うんですけど……」

「だってさ~、エレキギターの音なんかがうるさくって旋律もイマイチだしさ~、まぁポピュラーなんだから歌詞で勝負、ってのもわかるんだけどせめてもうちょっときれいな旋律作ってよ~……ってな感じ? 今時コード進行を先に決めて後から旋律を乗っけていくっていうのも多いらしいよ~。」

「とりあえず小金井さんがポピュラーが嫌いらしいっていうのは分かりました。それと専門用語がオンパレード過ぎて何言ってるのかよく分かりません。」

「ありゃ? 別に嫌いってわけじゃ……嫌いか。 いや、でもアニソンはものによっては聞くよ?」

「なぜにアニソンは別扱い!?」

「日本の二次元は完成度が非常に高い!」

「理由がよく分かりませんし、小金井さんはアニメとか見るんですか!?」

「見ないよ、例外が二つほどあったけど。」

「ではなぜゆえ二次元について語ったんですか!?」

「いや、単に傍から見ててもよくできてるな~っていう話。ついでに友達にアニオタ多いし。」

「初耳です!」

「アニオタは人にもよるけど愛すべき人たちが多いよ?」

「さいでっかい!」

「まぁ、今のポピュラーの有象無象の中でも本当の『名曲』の資質を持ったやつは生き残るだろうね。」

「何から生き残ると?」

「時間という名の強力なふるいから。」

「生々しい!」

「あと百年か二百年ぐらいすればそれがなんだったか解るだろうね、まぁ個人的にはそんなことより二次元がどこまで進化するのかの方が気になるけどね~」

「結局『そんなこと』なんですか!?」

「そんなくだらないことでギャーギャー言ってても仕方がないし。」

「今までの話を全て無に帰す発言!」

「……いいかげんに会計して帰らないの?」

「おっとっと! すっかり忘れてた! ついでに代々木に面白い物を見せてあげるよ。」

「……ヤバイものは勘弁してください……」

「心配ないよ、ここは一般人がたくさんいるから。」

「いなかったらヤバイことになると!?」

「かもね~♪」

「小金井くん? あんまり変なことを言ってると……」

「ごめんなさ~い、さて、こっちだよ。」

小金井さんについていくと、科学系の本の置いてある本棚の一角に着いた。

「これだよ。」

「なんですかコレ……アリ○ナイ理科ノ教科書? …………なんですか! この凶悪な中身は!?」

「それこそ裏科学部の必須テキストだよ。なかなか面白そうな本でしょ?」

「どう考えてもヤバいですって!」

「裏表紙に『分別のないお子さまの手の届くところには置かないでください。』って書いてあるはずだよ?」

「そういう問題じゃないです!」

「それと僕もⅠAからⅢCまでと『工作』全部持ってるから。」

「お願いだから実行に移さないでくださいよ!」

「大丈夫、『僕は』考えるだけだから。」

「『僕は』って!?」

「実行に移すのは裏科学部の連中。」

「やっぱり!!」

「彼らの目的はこの本の中身の完全習得だからね。」

「リアルマッドサイエンティスト集団!?」

「部長には僕も勝てないな~、化学はガチで対決しても向こうの方が上だったからね~」

「凄いのかどうかよく分からない!?」

「ちなみに歴代部長は全員グリニャール反応とLAHを使った還元ができるよ?」

「意味が分かりません!」

「確かウヒヒなモノも作った事があるって言ってたな~」

「さりげに法律に触れてませんか!?」

「さて、それじゃレジに行こう!」

「スルーした!?」

「科学は偉大だ! それを『危ないから』でいろいろ封印しちゃうのはもったいない! あ、でも『アブナイ人』になっちゃだめだよ? あくまで科学が大好きな一般市民でなくっちゃ。まぁどうしてもって人は『マッドサイエンティスト』って称号もあるけどね?」

「……俺はもう帰ります……」

「あ、そう? それじゃあまたね~」

「さよなら、気をつけて帰ってね。」

「ありがとうございます、それではまた。」

そして本屋を後にして駅前を歩いていると……

「うぉ~す、代々木~!」

「……神田!? お前何やってんだ?」

「食べ歩きに決まってんだろ?」

「……まさかお前昼から今まで……」

「おうよ、おかげでもう食えねぇよ。」

「そんなに食わんでいいわ!」

「食は明日への活力の源だ!」

「『医食同源』という言葉もあるがとりあえずお前には『食いすぎだ!』という言葉を贈っておいてやる!」

「オレは食べたいモンが食えればそれでいいのだ!」

「なんというすがすがしさ!?」

「さぁ、代々木もめくるめく食の世界へ来るんだ!」

「俺はお前のようには食えんから行かん!」

こうして俺のやたらと疲れた日曜日は終わったのだった……



さぁ、いかがでしたか?


コンピ研の面々の十人十色な休日の過ごし方、実験だったりバイトだったり食べ歩きだったり……

まぁ、いつもの軽いノリでさくっとお届けしました。

それではまた近々続きをUPできればいいなと思いつつ、今回はここで筆を置かせて頂きます。


それではまた~


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