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こんぴけん  作者: ホワイト
第1章 (そして始まる新しい生活)
4/12

第3話 (わが道を突き進むと……?)

第三話です


例によってサブタイの( )の中の言葉に深い意味はありません、たぶん


そいではお楽しみあれ~


   授業が始まってから三日目の朝……



「ういーっす。」

「よう。」

家の前で神田と出会う。そしてどうでもいいような話をしながら交差点まで来ると、

「おっはよ~!」

桜木と出くわす。

「そういえば桜木はちゃんと入部届け書いてきたのか?」

「うん、大丈夫だよ。ちゃんとハンコももらってきたし。」

「……なんか親に言われなかったか?」

「え? 秋乃先輩がいる部活だって言ったら、『秋乃ちゃんによろしくね』としか言われなかったよ。」

「いや、お前のパソコンオンチについてのことなんだが……」

「特に何も言ってなかったけど?」

「そうか、それならいいんだ……いや、よくないか……」

「おい、代々木。あそこを歩いてる人たち、小金井さんと籠原先輩じゃないか?」

たしかに、どことなく見たことがある後姿だ。なにやら口喧嘩をしているようだが……

「……どうしてよりによって昨日休むのよ!」

「ん~、春の陽気に誘われてプチ旅がしたくなったからかな~。」

「そんなんじゃまた出席日数ギリギリで進級することになるわよ?」

「だ~いじょうぶ、ご利用は計画的、だから。」

「そういう問題じゃなくって、小金井くんは部長なんだからやらなきゃいけないことがたくさんあるでしょ!」

「一応そういうのは全部やってから学校をサボるように心がけてるから大丈夫。」

「昨日はやってかにゃ……やってかなかったじゃない!」

籠原先輩……噛んだ……

「心がけてる、と言っただけで完全に実行するとは一言も言ってないけど? だいたい今回は新入部員用のパソコンのセットアップは全部僕がやったんだからおあいこってことでいいじゃないか。」

小金井先輩は華麗にスルー……

「うっ……」

なにやら朝っぱらから壮絶な口論(と言うよりも一方的なお説教、しかもおそらく効果ナシ)が展開されているが、とりあえず挨拶はしておこう……。

「えーと、おはようございます……」

「ありゃ、おはよ。悪かったねぇ、昨日は。まあ時々こういうことがあるから覚えといて。」

「お……おはよう、みんな……」

「あはは~、怒ってる籠原さん怖かったでしょ?」

「…………」

「ん~、正直じゃないな~。まぁこの場合は答えたらアウトって判断は間違いじゃないと思うよ?」

「そ、そうですか……」

「ね、だから言ったでしょ? すぐにバレるって。」

「べ、別に私は隠そうとしてたわけじゃないわよ!」

「さっきから怒りすぎだよ、だいたい昨日駅で散々説教を聞いたじゃないか。」

「や、やっぱりホントに駅に行ってきたんスか……」

「うん、ビックリしたよ。改札を出たら籠原さんがいてさ、あんまりにも怖かったから思わず逃げ出そうかって思っちゃったよ。あー、本当に怖かったなー。」

「その全く反省してない態度が問題なのよ!」

「そりゃそうだ、だって僕は僕のしたことを悪いことだとは思ってないから。」

「…………」

言い返す言葉がないのか、籠原先輩は怒りで肩をぷるぷると震わせている。

「大体さー、そんなに怒ってばっかりいるから。」

「怒ってばっかりいるから、なに?」

「その先を言うわけないじゃないか~、僕の命が危ないからね~。何のために文の最後にまるが付いてると思ってるのさ~。」

どうも火に油を注いだ感が否めないが……

「いったいなんなんですか? その先って?」

「ん? 知りたい?」

籠原先輩がキッと小金井さんを睨む。それを見ると小金井さんは籠原先輩に聞こえないようにそっと囁いた。

「胸に栄養がいかないんだよ、って続くんだよ。」

次の瞬間、ボグッと鈍い音がして、小金井さんの顔が激しくブレて視界から消えた。

「…………言ったわね……」

「痛い、痛いって! カバンの角で頭を殴らないで! ホントに痛いから! っていうか聞こえてた?」

「……ええ、ばっちりと。」

「ヤバい…… みんな! 僕は逃げるから後はヨロシク! BGMはオッフェンバック「地獄のオルフェウス」第三幕への間奏曲で!」

それだけ言うと小金井さんは猛然と走って逃げ出した。

「待ちなさい!」

籠原先輩も後を追って走り出す。

「…………」

「………………いや、決して無いわけではないと思うっス、籠原先輩……」

「秋乃先輩……気にしてたんだ……」

神田のコメントは籠原先輩に聞かれたら間違いなく地獄送り確定だな、本人にしたら慰めのつもりなんだろうが……

「でも確か小金井さんと籠原先輩って同じクラスだったような……」

「……なぁ、神田。今日小金井さんが部活に来るか賭けるか?」

「あの人のことだから来るんじゃないか?」

「やっぱりそう思うか……」

「無事じゃあ済まない気もするがな……」

「じゃあ無傷で来るかどうかならどうだ?」

「もう既に負傷していると思うんだが……」

「……か。」

とりあえずこんな所で立ち止まっていては始業に遅れてしまう。歩き出してしばらく行くと、立ち止まって肩で息をしている籠原先輩に追いついた。

「……振り……切られたわ……」

見ると小金井さんの姿は既に無い。

「秋乃先輩、お疲れ様でした!」

桜木……それは励ましなのか?

「見事に逃げられたっスね。」

「こういうときはあの無駄な体力が鬱陶しいわ……」

籠原先輩、相変わらず目がめちゃくちゃ怒ってて凄まじく怖い。



  そんな一件があった日の放課後……


俺たちが部室に来た時に、部室にいたのは小金井さんだけだった。

「こんちは。……籠原先輩はまだ来てないんですか?」

「あー、うん。今日籠原さんは掃除当番だから。遅れてくるってさ。」

「そうですか……」

「……君たちさ、今朝の籠原さん見て怖いと思った?」

「ええ、まぁ……」

「やっぱりねー。でもね、本当はとっても優しい人だからあんまり気にしないであげてね。」

「そうなんですか?」

「うん、僕がサボってるときに心配して連絡くれるのはいまや籠原さんだけだからね。それになんだかんだ言ってもちゃんと君たちの面倒を見てくれて、その上に年間予定表もしっかり作っておいてくれるし。そういうことをちゃんとやってくれるから僕は籠原さんを信頼してるんだ~。」

「でも、じゃあ朝の件は何だったんですか……」

「あー、あれは聞こえないように言ったつもりだったんだけど、聞こえちゃってたみたいだね~。」

「言うつもりはなかったんですか?」

「うん。だってさ~、アレを言っちゃうとその場ではメチャクチャ怒るんだけど、その後でとっても悲しそうな顔してるんだよ。なんかこう見てるこっちが悲しくなるぐらいさー。おかげで籠原さんの友達に『小金井君、いったい何を言ったの?』って詰問されちゃったよ。」

「あのー、小金井先輩、秋乃先輩にちゃんと謝りました?」

「そりゃもちろん。さすがにアレは僕が悪いから、でも許してくれる気配がないけど…………さて、じゃあ早めにトレーニングを始めちゃってもらえるかな?」

「はぁ……分かりました。」

そしてトレーニングを始めてしばらくしてから籠原先輩が現れた。


「……こんにちは……」

「おつかれ~。」

「あ、お疲れ様です。」

「ちわーっす。」

「あ……、秋乃せんぱ~い! 助けてくださーい!」

「わかったわ、今行くから少し待ってて……」

確かにどことなく元気が無い。まだ朝のことを引きずっているみたいだ。

「……はい、これで大丈夫……」

「ありがとうございまーす……秋乃先輩、元気出してくださいよ~。」

「……うん……ありがとう……」

桜木の救済を済ませると、籠原先輩は心ここにあらず、といった感じで自分の席に座った。ちなみに小金井さんの隣だが……

「籠原さ~ん、元気出してよ~。朝のことは悪かったって。」

「…………」

その大元になった人が言ってもあまり効果は無いと思うんです、小金井さん。

「うむむむむ……こうなったら、みんな! ちょっと席外すからヨロシク!」

小金井さんはそう言うなり部室のドアを開けてどこかへ行ってしまった。残されたのはなんとなく居心地の悪い沈黙だった。……空気が重い……

そして五分としないで小金井さんは戻ってきた。

「はい、籠原さん、これあげるから元気出して。」

小金井さんの手には『さわやかりんごジュース』と書かれている缶が握られていた。どうもこれを買いに行っていたらしい。

「ほら、これ好きなんでしょ? 飲みなよ。」

「……どうしてそれを知ってるの……?」

「だって籠原さんよくこれ買ってうれしそうに飲んでるじゃん。ほら、飲んで飲んで!」

「……そう、ありがとう……」

とは言っても籠原さんは受け取ったっきり飲む気配が無い。

「……まだダメか~……よし、少ししたら戻ってくるから、ちょっと待ってて。」

再びどこかへ出かけていく小金井さん。そして、小金井さんが部室を出て行った後に、籠原先輩がポツリとつぶやいた。

(……バカ……そんなに気を使わなくてもいいのに……)

神田と桜木には聞こえていなかったみたいだが、確かにそう言った後、先ほどの缶ジュースを開けて飲み始めた。

気づいた桜木が話を振る。

「あー、よかった~。秋乃先輩、やっと元気になってきた~。」

「ん、ごめんなさいね。なんかみんなまで元気が無いみたいだし……」

「いやいやいや、そんなことないっスよ。」

「うんうん、秋乃先輩は元気じゃないと!」

「うふふ、そうね。元気出さないと……ね。」

「でも秋乃先輩、ホントに気にしてたんですね。」

まて、桜木! 今ここでその話題はマズいだろ!

「おい、桜木、それは今は言わない方が……」

「ううん、大丈夫。気遣ってくれてありがとう、代々木君。本当に普段は気にしてないから。……それに人間欠点が一つぐらいはないと上手くやっていけないものよ?」

「……それは暗にお姉さまが○の○○○以外はパーフェクトだと言ってるんですかね?」

「神田君、わざわざ伏字にしなくても大丈夫よ。それに私はそんな完璧な人間じゃないわ。」

「そうですか? オレが聞いたところによるとこの学校で最もモテる女子生徒ぶっちぎりでナンバーワンっスよ?」

「……何それ……?」

「あ、いや……うっかり口が滑ってしまいました。はい。」

「……それと何回言ったらその呼び方で呼ぶのを止めて貰えるのかしら?」

「止める気はありません!」

「……………………」

「かっ……籠原先輩……その沈黙と非難の眼差しがとっても心に刺さるっス!」

「ま……まあとりあえず秋乃先輩の元気が出てきたからよかったよかった~!」

「そうね……ありがとう、春香ちゃん。それに小金井くんに悪気が無かったのは分かってるから。」

「そうなんスか?」

「小金井くんは本気で人を傷つける人じゃないもの。それに小金井君とは中学のときからずっと同じクラスだし。」

「え? そうだったんですか?」

「あれ? 小金井くんとは中学校からずっと同じクラスだって言ってなかったかしら? まぁ話すようになったのは中三からだけど。」

「そ、そうだったんスか、知らなかったっス……」

「ええ、まぁ変人っぷりもよく知ってるけどね……」

「やっほ~! たっだいま~! ……みんな、どしたの? やたらとしんみりしちゃって? あ、籠原さん、これ食べて元気出してよ。」

どうやら小金井さんは学校の前にあるコンビニに行っていたらしい。コンビニ袋を手に提げている。

「これって……小金井くんがよく食べてるプリン?」

「そ、おいしいから食べてよ。」

「今度は籠原先輩が好きなやつじゃないんですね。」

「ん~、それでも良かったんだけど……なんというか……僕の趣味? 甘いもの好きだし。」

「ふふっ、やっぱり小金井くんね。」

「ひどいなぁ……でもいつもの籠原さんに戻ったから結果オーライかな? やっぱり籠原さんはそうでなくちゃ。あ、そうそう、一応みんなの分のお菓子も買ってきたんだ。ほら、遠慮しないで食べてね。」

小金井さんはコンビニ袋からポテトチップスやらチョコレートやらを出しながら言った。

「おぉっ! 食べちゃっていいんスか?」

「どうぞどうぞ。そのために買ってきたんだから。」

「じゃあポテチ貰いまーす!」

真っ先にポテトチップスを取る神田。

「じゃ、わたしはコレ!」

続いてチョコレートを持っていく桜木。

「俺は残り物か……」

「まぁそんなに落ち込まない! 残り物には福があるって言うだろ?」

別に残ったメ○トスが嫌いなわけじゃないので落ち込んではいないのだが……

「あ、そうそう、メ○トスは一粒だけ残しといてね。」

「? 何でですか?」

「ん、なに、ちょっとね。ふふふふふ……」

「小金井くん? メントスコーラの実験は許さないわよ?」

「ぎくぅぅぅ! な……何でわかったの?」

「袋の中に残ったコーラは何に使うのかしら?」

「いや~、見て見ぬ振りしてくれると助かるな~。」

「そんなことできるわけないでしょ!」

「わかったよ、しょうがないな~。」

「『しょうがないな~』はこっちの台詞よ! 全くもう……」


とまぁそんなことをしているうちに最終下校時刻が迫っていた。


「さて、みんな忘れ物はないね?」

「はーい、小金井さーん、忘れ物があるっス。」

「ん~、なんだい?」

「将来の夢を忘れてきましたー。」

「大丈夫だよ~、今から探せばまだ間に合うし、捨てたんじゃなければきっと見つかるよ~。」

……こんなことを平気で言う神田も神田だが、小金井さん、何気にさらっと流している。地味に凄い……というかアホ?

「はいはい、馬鹿やってないで早くかえりましょ。」

「籠原さんもノってよ~。」

「どうノれって言うのよ?」

「う~ん……例えば『あなたの夢はどうしたの?』とか?」

「……もう帰っていいわよね? 春香ちゃん、帰りましょう。」

「はーい。」

「あぁっ、ひどい、待ってよ!」

何はともあれ朝の一件は何とかなったみたいだし、これでいいのか……いいよな? 『これでいいのだ!』とかいうナイスなボケは期待してないからな?

「よし、これでいいのだ!」

……ナイスすぎだぜ、神田……

「それにしても秋乃先輩、いつも通りになってくれてよかった~!」

「そう? 私は必死に機嫌を取ろうとする小金井くんを見てるのもなかなかおもしろかったけど。」

「なっ……それホント?」

「冗談よ、半分ぐらい。」

「半分は本気なんだ……ちょっとヘコむな……」

「まぁそう気を落とさないで、小金井くんこそ元気が一番よ。」

「そうかなぁ……っと、じゃあここで僕はさよならだから、んじゃまた。」

「ちょっと、私もよ?」

「あははー、なんか色々と怒られそうだから僕だけで帰ろうと思ったんだけどやっぱり無理か~。」

「そうね、色々と言いたい事があるわね。」

「あー、怖い怖い……」

「そういえば小金井さんと籠原先輩、帰る方向同じなんですね。」

「あー、うん。同じっていうか、僕の家の隣が籠原さんの家だから。」

「え……そうだったんですか!」

「うん、だから今朝捕まったんだよ。ご丁寧に玄関前で待ち伏せしてたから逃げられなかったんだよ。」

「逃がすもんですか……今まで何回あのパターンで捕まったと思ってるのよ……」

「じゃあ籠原さんも今まで何回あのパターンで振り切られたと思ってるのさ?」

「う…………」

「ま、そーゆーことでじゃあね、また明日!」

「さようなら、みんな、また明日ね。」

小金井さんと籠原先輩は交差点を曲がっていった。交差点をあと三つほど過ぎれば俺たちと桜木の別れる交差点だ。

「それじゃあ代々木君、神田君、またね!」

「おう、じゃあな。」

「はいよー、おつかれー。」

桜木と別れる交差点を過ぎれば俺と神田の家はすぐそこである。

「さて、じゃあな、また明日。」

「おう、んじゃ。」

家へ入ろうとする俺に神田が声をかけてくる。

「なぁ、代々木。」

「ん? どうした?」

「今度メントスコーラの実験やってみないか?」

「やめとけって、籠原先輩にバレたら殺されるぞ……」

「そこは小金井さんを味方につければ大丈夫!」

「むしろもっとヤバい方向にいきそうな気がするけどな……」

「うーん、そうか~? まあいいや、ほいじゃな。」

「へいへい……」


こうしてこの日は終わりを告げた。


なんだか改めて後書きを書くのも結構めんどくさいですね……

なにせ以前も書いたものだけに、何を書けばいいのやら……という事態に陥っているのです(笑)


それではまた!


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