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西川のエッセイ

苦しいし辛いし悔しいけどね、

作者: 西川 新

しいなここみ様の『フェイバリット企画』参加作品です。少し趣旨がズレてるかもしれませんが、憎くも好き吹奏楽、サックスについて語りました!

唐突ですが、私は運動がめっちゃ苦手でした!

ガチの運動音痴。圧倒的インドア派閥。

私の中学はとても規模が小さくて、文化部が二つしかなかったんです。一つは、美術部。もう一つが、この話の主題となるブラスバンド。またの名を、吹奏楽部!


中学は全員が部活所属しなければならず、ガチ運動音痴だった私は、文化部に入ることを即決意しました。


絵を描くのはまあまあ得意だったので、美術部に体験入部。このまま入部しようかな、と思ってた時、音楽室から響いた美しい楽器の音色。

美術室と音楽室は隣同士で、美術部のドア窓越しに、楽しそうに笑う吹部の先輩たちがいて。


それを見た時、私は吹奏楽部に入ろうと決意しました。


すこし壮大に書いてみましたが、その実、それは先輩たちが楽しそうで可愛かったからとかいう、驚くほど不純で軽い動機でした。


そんな感じで、入った吹部。漠然とただ漠然と入ったにも関わらず! 中学の時は何度も辞めてやろうと思ったにも関わらず!


高校でも無事に続けてます!

なんでだろう!!


辛かった思い出もたくさんあったはずなのに、あろうことか部活の選択肢が何倍も増えた高校でも吹奏楽部を選び、まさか親にねだって自分の楽器を購入までしてもらった私!


なんでだろう!!

ガチでなんで?!


のほほんと入った部活動が、どうしてこんなにも手放せないものになってしまったのか。最初の頃はいつ手放したって構わなかったサックスが手放せなくなったのは、いつからだったか。


最初から、好き好き大好き! ってわけじゃなかったのに。つか、今も別にそんな大好きなわけじゃないし。

高校に入ってからもこんな部活なんて、吹奏楽なんてやめてやるって、サボってやるって、思ったこと何度もあるし。


飽き性なはずなのに、今も続いているサックス。嬉しいことに高校でも中学と同じ楽器を担当させていただいています。


やめられないから続けている。

三年間培ってきた技術が惜しいから続けてる。

楽器を何十万もかけて買ってもらったから続けてる。

つい最近まで、私は吹奏楽に対してそう思ってたんです。


でも、それって普通に好きなんじゃね?


これが、最近気がついた衝撃事実。えぐい単純。しかも誰でも気づけそう。でも、これに私はずっと気付けなかったんです。


部活が強制加入だったから。文化部が二つだったから。私はやらされている。そう思うことばかりの部活動だけど、本当は全てが私の選びとった道でした。

やらされていると思っていたいだけでした。いやぁ、なんていう愚か者。


吹奏楽のみならず音楽って、まわりの環境と指揮者によるところがすっごく大きいんです。

たまにいるじゃないですか、音楽家族で〜みたいな人。三歳からバイオリン、ピアノ! みたいな。


そういう人たちには、どうやったって勝てない!


お金が無い、環境がない。そういう悔しい思いを、何度も噛み締めてきました。私より音楽性がある五歳児とか全然いる。くそう。これだから音楽ってやつは! 憎いぜ。

音楽に年齢は関係ないって、とても素敵なことであると同時に、とても残酷なんですよね。


最近まで私の中では、『好きであること=上手であること』とか『好きであること=楽しいこと』とかいう方程式があったんですよ。


これ、全然違ぇですね。


私は吹奏楽やサックスのことが、下手で楽しくないなと何度も思ってきましたが、やっぱり好きです。


好きなら結果が伴うべきだとか、好きなら楽しいはずだとか、好きになるのは自分が選びとったものだけだとか、ずっと思ってましたが、そんなことはなさそうです。

好きでも上手くいかないし、好きでも苦しいことはあります。強制されたものでも、好きになることはあります。


上手くいかなくて苦しくて辛くて、でもそれでも手放せないなら、それはきっと好きってこと!


私にとって吹奏楽は、苦しいし上手く出来ないし悔しいし、ほぼ強制的にやってきたもの。好きだなんて認められませんでした。

だけど、やっぱり辞められなくて続けてる。


サックスの音色とか見た目って分かりますか? いろんな音を出して感情を表現出来る万能楽器なんですけど、基本的に音が明るいんです。

音だけじゃなくて、そもそも見た目からどちゃくそゴールドで、とっても明るいです。


コミュ障で暗い私を、明るい場所に連れていってくれる、サックスはそんな大切な楽器です。


高校でのサックス吹きの友人もどちゃくそに明るいんです。性格が。

杖が魔術師を選ぶみたいな感じで、楽器が人を選んでるんだと思います。


サックスやサックス吹きの友人のおかけで、最近は色んな人と話せて、私も明るくなってきました。中学初期の私と今の私は、たぶん同一人物とは思えないです。


吹奏楽って、苦しい。悔しい。だけど、楽しい。サックスって、どうも上手に出来ない、お金も時間もかかる。だけど、やめられない。


薄暗いところも含めて、全てをまとめて好きと最近やっと呼べるようになりました。


今思えば、サックスを選んだ理由も、みんなが選んでないからとかいうクソしょうもない理由でした。

そんな理由でも、どんな理由でも、続いてるってことは、紛れもなく好きなんだと思います。認めます。


なんか世間では、好きっていうのはすごく純粋で不純物のない高尚な気持ちのように語られがちですが、そんな単純明快なものではないのかもしれません。


好きでも苦しいものは苦しいし、やりたくないときだってある。楽しいウヒョーみたいに一途で単純なものじゃない。


楽しいウヒョーじゃなくても、私は吹奏楽が好きだし、サックスが好きです。きっと、これからも続けていきます。


何十万で買ってもらったサックス、まだ元取れてないし! まだまだ不完全燃焼で悔しいことばかりだし! やめてらんない!!


皆さんにも、きっとあるんじゃないかと思います。好きだと認めたくはないこと。

心当たりありませんか? こんなに卑屈でねじ曲がってるのは私だけ?


嫌いだ嫌いだ言うとりますけども、たぶん好きなんだと思いますよ。

好きと認めるのって簡単なことのように思えて、けっこう難しいことなんですよね。


苦しいし辛いし悔しいけど、私は吹奏楽やサックスが好き!

これが、最近になってやっと気付いたことでした。

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― 新着の感想 ―
目から鱗です。 確かに楽しくなくても『好き』ってあるかも……。 読みながら成る程とすっと内容が入ってきて、感動しました。 つらくたって離れられない、それってやっぱり好きなんだ! 新発見です。 西川さん…
(๑•̀ㅂ•́)و✧
 音楽はある程度年齢が上がってから良さがわかってくるといいます。私も親に言われてピアノを習っていましたが、中学くらいになってやっと曲そのものに感動できるようになってきました。吹奏楽は集団でやるものです…
感想一覧
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