脳に潜む謎の天才
突如として黒の脳から聞こえてくる謎の声は何者なのか?
そして0bitの暗号を破る事が出来るのか!?
「う〜んと...う〜んと...は?」
何言ってるんだコイツ
コイツというのはボクの脳内に語り掛けてくる謎のヤツだ
(おい謎のヤツって言うな)
「いや...言うでしょ。何だよ藁人形って」
(あー...それは今は言えないな....唯、仮として有って呼んでくれ)
「有?」
仮で何で有って名前に?
(てかそんな事今はどうでもいい。アンタ、この暗号解きたいんだろ?)
「まぁ...そうだけど...?」
(なら俺が解いてやるよ。このバカみたいに長い方程式をな)
有は自信ありげに答えた
(良いか?よく聞いとけよ。まず四次方程式自体は、超複雑で人間が解けるような問題じゃねぇ。だから今から言う数値は、俺が脳内で作ったプログラムコードを元にして、そっから数値を割り出す。)
「う、うん」
何かよく分からないがとりあえず相槌を返した
(まず一個目のxは負の実数だ。グラフで表すとx軸との交差点の一つ。つまり代入すると−1.235となる)
有はすらすらと方程式の四つのxを求めだした
「うん?うん...うんうん...???」
さっぱり分からないのでさっきと同じようにとりあえず相槌をうつ
その後も呼吸をする間もなくペラペラと喋り続けていた
「...って事で最後の四つ目のxは1.443となるって訳だ。」
有が全て言い終わった頃にはもうボクの頭の中はパンクしていた
「へ...へ〜...」
苦笑いをしながらわかったフリをしようとしたが愚かにしか見えない
(んで?求めたらどうなんの?これ)
「え?えっと多分これ、このサイトのパスワードだと思うんだよね」
誰もいない中、独りでにデスクに話し掛けた
(ん?待てよ...これって確かさ)
有がそう言いかけるとボクの体は勝手に動き出した
「うわ!?何だこれだうなってんだ!?」
(安心しろ、俺が動かしてるだけだ)
全然安心出来ない
ボク、では無く有はサイトのコードを眺め出した
「ん?何やってんだ?」
(ん?脆弱性確認してる)
「いや、もう脆弱性はチェックしたよ?」
(いやそっちの確認じゃなくて、俺が疑ってる脆弱性があってるか確認してるんだよ)
「はい?」
ボクは思わず聞き直してしまった
サイトのレイアウトを見ただけで脆弱性を疑うなんて前代未聞だ
「いやいやそれで見つけたらボクハッカー辞めるわ」
流石に有り得ないと思い大きく出た事を苦笑いしながら言った
だがその発言を後悔する出来事が起こる
(見っけた)
「はぁぁぁぁ!?んなわけ」
ボクが意識して見るとそこには謎の文字列があった
「これが何なんだってばよ」
(まぁ一昨日ぐらいに見つかった脆弱性だから分からなくても仕方ないか...)
ボソッと口を零す
(これは『SQLインジェクション攻撃』が実行可能だ。一昨日発表されたばかりの脆弱性で0bitはその欠点をあえて残しておく事で黒の実力を測ろうとしたんだろ。黒の脆弱性の認知速度はどれくらいかってな)
「いや0bitも相変わらず意地悪いな...ってか有なんで0bitの事知ってんの!?」
(そりゃずっと前からあんたの事見てたんだから知ってるよ。てかあの頭痛の原因俺だし)
「あーそっか確かに...ってかずっと前からって何!?え!?怖!?」
あまりにも衝撃的な事実過ぎて驚きを隠せない
(まぁ無理もないか...んで?本当に入るか?)
有は何か意味ありげに確認をしてきた
「もちろん...!そうしないと進めないしね」
(そうか...じゃあ行くぞ。)
またもや体が動き、不正なコードが打たれ、不思議な感じに包まれながらもエンターを押した
自分事じゃないからなのか、有自身は何の躊躇もしなかった
ログインに成功し、画面が切り替わった
(よし、ログイン出来たな。そんじゃ俺は用が済んだから寝るわ)
「え、おいちょっと待って...」
有を呼び続けても声が戻ってくる事は無かった
自然に体の違和感は何事も無かったかのように元に戻り、少し安心した
「でも最初は何で頭痛とか目眩とかしたんだろ...」
多分一、二回目は体がそれに着いて行けず、拒否反応を起こしていたのかもしれない
そんな事を考えているとドアが開く音がした
「さっきから一人言が酷いぞ。何かあったか?」
声の主は白賭だった
どうやらその名の通り脳内からの声なので周りには聞こえていなかったようだ
「ごめんごめん...なんでもないよ〜」
ボクは何故か咄嗟に隠した
有の仕業なのかボクの本能的な判断なのか
謎は深まるばかりだ
「そうか...まぁ休憩も適度にしろよ」
相変わらずの優男っぷりだ
「はぁ疲れた〜...ハッキングって本当に複雑なんだね。」
白賭の後ろから由香里が顔を出した
どうやら本を読み終えたようだ
すると由香里はボクの方へ駆け寄ってき、小声でこう言った
「ちょっと私トイレ行きたいんだけど...借りてもいいかな...?」
「あ、うん全然良いよ」
ボクが快くOKすると由香里は姿勢を低め申し訳なさそうにボクの指差した方へ走っていった
バタン
ドアが閉まる音がすると、白賭もボクの方へ近寄って来てこう言った
「なぁ、やっぱり由香里って子怪しいって...ずっと周りを見渡したり、こっちチラチラ見てきたり...絶対何か企んでるって」
「いやいや初めて来た所ならそりゃ周り見渡すでしょ。」
ていうか後のチラチラ見てるのは普通にイケメンが近くに居て気になってるからでしょ
「そんなもんなのか?」
「てか、どんな感じだったのよ、距離っていうか...その、位置関係」
「位置関係?普通に真ん中に丸い机があって、対面する様に座ってたけど?」
「いや絶対それが原因だろ!」
「いや何でだよ!?」
(これだから鈍感な男は...やれやれだぜ)
「てかこんなでかい声出してたら普通に聞こえるだろ」
白賭は急に冷静になった
「あ、確かに...まぁいいや...30分くらい経ったし、由香里も疲れたって言ってたし、そろそろ帰らそうかな」
「そうだな」
ボクは由香里がトイレから出るのを待った
「...」
「...」
「...」
「なんかさ...長くね?」
「おい!!!絶対そんな事言ったらダメだろ!!!」
モラルの欠けた白賭の言葉にまた思わず大声を出してしまった
「まぁ確かにボクも長いなって思ったけど...それをグッと抑えてこそ男だろ!?」
「いや黒は女子じゃん」
「いやそれはそう」
大いなる盲点を突かれた
ジャー
「あ、」
「ふぅ......って何...?何でジロジロこっち見てるの?」
「あーいや...うんなんでもないよ...!!!うん!」
由香里は身だしなみがおかしいと思ったのか服やズボンを気にしだした
「そういえば帰らなくて良いのか?時間的に大丈夫?」
「あ!ヤバい!もうこんな時間なんだ!んじゃ私帰るね!お邪魔しました!」
由香里は走って出口を出た
白賭のフォローで気まずい空気を回避出来た
「白賭ナイス過ぎる!」
「ふん、まあな」
ボクはミニ冷蔵庫からいちごミルクを取り出し、すぐさま飲んだ
「ん、ん、ん、...あ〜マジで美味しいなこれ。もう一種の薬だろ」
「そんなに美味いかそれ」
「一回飲んでみろよこれ、飛ぶぞ」
「いや、良いわ。やっぱ俺は大人なんでストレートティーでもキメさせて貰いますわ」
白賭もミニ冷蔵庫からストレートティーを取り出し飲み出した
「は〜...やっぱ大人だな〜俺って」
「うわ...自分に酔ってやがるコイツ」
「なんだと〜?」
由香里が居なくなった途端これだ
(こんな他愛も無い会話も有はずっと聞いてんのか...ってか今は寝てるっけ)
「あ、そういえば0bitのサーバー調査してたんだっけ、ヤバいヤバい」
ボクはモニターに目を向けるとインデックスサイトに飛ばされていた
「これは...?」
「ん?どうした?」
白賭はボクの隣に着き、モニターに顔を向けた
ボクは恐る恐るファイルを確認していった
「ん?この『JIFI Financial Data』ってファイル名...どっかで見た事が...?」
しばらくファイルを見ていると、白賭が急にそう零した
「これ?財務データか...ちょっと見てみよ」
ボクと白賭は気になり、財務データ表を見る事にした
データ表が表示された次の瞬間、ボクは思い出した
「これって...」
「あ、あぁ...俺が送った...」
「国際金融機関の機密表データだよな...しかもこれ、モザイク処理がされてない...」
そう、この表データはボクがモザイク処理を解析して消す事に成功したあのファイルだったのだ
「通りで見たことが...」
白賭は納得すると同時に疑問を浮かべている様子だった
「なんかまだ気になってる事があるのか?」
「あ、いや...黒は気にならなかったか?...何故データを盗むのが目的のはずなのに、DoS攻撃を利用したのかを」
「あ、そういえばボクもそれ思ってたわ」
どうやら白賭も気になっていたようだ
「それでボクの考えとしては、何らかの足止めが必要だったんじゃないかって考えてる。それならDoS攻撃もモザイク処理も説明がつく」
「なるほどな、その可能性が高そうだ」
白賭は納得した様子だった
「さ、じゃあ───────
「プルルルルル」
「うわっ!ってビックリした...電話...って事は0bitだな...」
「0bit!?なんで電話番号知ってんだ!?...って...そっか、そういえば個人情報とっくに知られてたな。」
「サラッと言える事じゃないけどね!?まぁ残念ながらそれが現実なんだけど」
うるさく鳴るスマホに手を伸ばし、面倒くさく思いながら電話に出た
(イライラしちゃダメだぞ!自分!)
「ジージージージーザザザザッ...........やぁやぁ黒くんこんにちは。」
「あーどうもどうも、さっさと斃れクソ野郎が」
「辛辣だなぁ、そう言われると僕は悲しくなっちゃうよ。ま、何にキレちゃってるのかは知らないけど、そんな事より僕、黒くんに凄いサプライズを用意してるんだ、きっと喜んでくれると思う」
「サプライズ?」
(何言ってるんだ?コイツ)
「まぁまぁそれは明日見せるから楽しみに待っててよ〜!」
「おいおい冗談じゃないわ、サプライズってのは事前に言わないモンなんじゃ無いのかよ。」
「あ〜そうだね〜...」
0bitの口角が上がっているのが電話越しで伝わった
すると急に声を低めてこう言った
「知っといた方が安全だから先に言っといただけだよ」
「安全...?」
ボクは驚きのあまり固まってしまった
「それじゃね」
「ぁあっ...!おいっ...」
ツーツー─────
ようやく声を出そうとした瞬間に電話を切られた
「安全って...一体なんなんだ...?」
「0bit...初めて声聴いた...」
白賭は0bitの声に衝撃を受けている様だった
(まぁそりゃなんかちょっと声カスれてるからな...)
「あっ、そうだ、0bitが言ってた安全って、一体どういう事なんだ?」
どうやら白賭もそこに引っ掛かっている様だ
「分からない...唯、恐らく何らかの事件に巻き込まれる様な気がする。」
「確かに、俺もそうだと思う。0bit...一体何をしでかすんだ...?」
「まぁ何が起きるか分からないけど...まずはこのサーバーの調査を続けるしか無さそうだよ。」
「そうだな」
ボクらは引き続きside killのサーバーの調査を続けた
───────「ふ〜んふ〜ん♪」
カチカチカチカチ...カチャンッ...
「まっ...国家サーバーのセキュリティレベルもこんなとこか...つまんないなぁ...」
チッチッチッ
「ふ〜...もうこんな時間か...じゃ〜準備にでも取り掛かろうかな?」
ポ〜ン♪
「よ〜っす...ちょっと忙しくて暫く顔出せなかったわ〜」
「も〜っ...今まで何やってたの!?まったく...しっかりしてよねっ!───────0bit!」
「へいへい」
第六話を読んでいただきありがとうございます。
また投稿頻度が落ちている希ガス...
本当に0bitは何者なのでしょうか?
最後のあの女は一体...?
第7話も乞うご期待!!!!