表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/7

瞬きの襲夜

金融機関のモザイク処理が施された表データを解読し、データの表計算にズレがある事を知った黒は、個人的に金融機関の関連企業の調査を始めた

黒は関連企業である『風島銀行』に目を付け、『風島銀行』サーバーの侵入に成功したが...

「ふぁ〜、ねむ...」

時計の短針が1時の方を指した

これは午後では無い、午前だ

気づけばもう深夜になっているにも関わらず、ボクはモニターと睨目孤(にらめっこ)していた

こんなこと、昔から当たり前の事で、慣れてしまった

「あぁ、こういう挙動だったんだこれ」

ボクは今、例の金融機関の関連企業である『風島銀行』のサーバーに隠されていたサーバー拡張ファイルを解析していた

基地はガランとしていて物静か

キーボードの音だけが空間に響く

「あ...ここの関数、もしかして」

ターミナルを開きターゲットサーバーに特殊なデータを含んだパケットを送信した

「これでいけるかな?」

薄暗い空間の中、ターミナルには赤の文字でエラーの文字が現れた

次々に赤の文字が流れていき、次第にターミナルにドルマークを残し流れは止まった

肩の力を抜き完全に油断した

あくびをかます程だ

「よし、侵入成功。あとは重要ファイルを盗めば___」

完全に安堵し、キーボードから手を離そうとした瞬間だった

「緊急事態発生!Pravos(プラブォス)デバイスに侵入を検知!」

さっきの静かさを消し飛ばすように大音量で内蔵のAIの警告音が基地内に響き渡る

「うわぁ!なんだなんだ!?侵入者!?」

「検出ナンバー7!ボット攻撃を推測」

ボクはこの警告を聞いて驚いた

ただPravosに侵入者が入ってきたから驚いている訳では無い

「ありえない...」

ありえないのだ、ボット攻撃など。

ただでさえPravosに侵入するのも不可能に近いのに、それをボット攻撃で侵入するなど、前代未聞

「検知ミス...!?」

ボクは直ぐにキーボードに手を置き、Pravos内のユーザーの挙動をマークするコマンドを入力した

するととんでもないスピードでファイルを移動するユーザーの姿が見えた

「マジのボット攻撃だ...これ...!」

「いや待て!関心してる場合じゃない!データが盗まれる!」

気を取り戻し、全てのファイルをルートファイルに移動させようとした

「あ〜もう!侵入される事想定してなかった!」

中には重要なファイルが沢山あるが、侵入される事を想定していなかったため、ルートファイルに入れるのを忘れていた

焦って上手くコマンドが打てない

その時、扉が開く音がした

「よ〜IXVI!...って何が起きてんだこれ!?」

白賭が基地に入って来たのだ

「あぁ白賭!ちょうど良かった!今やばいことなってて...!」

「侵入者か!?珍しいな。」

「い〜やもっと珍しい事に、ボット攻撃なんだ!」

「な、何!?ボット攻撃!?は?...え?」

「ハハハ、笑えるよな...現状は笑えないけど...とにかく白賭もPravosに入って全てのファイルをルートファイルに移してくれないか!?」

ボクは画面に顔を向け手を動かしながら言った

「あぁ、わかった!」

相当まずい状態だ

中には未知の脆弱性のデータもある

「あぁもう!常に気を付けてれば良かった...!」

ボクが急いでコマンドを打っていると新しいターミナルがデスクトップに現れた

「なんだよ!今要らないよ!もう...」

焦っていて間違えてターミナルを出したのかと思いウィンドウを閉じようとしたその時

「ん?なんだ...?」

キーボードに触れていないのに何故か新しく出たターミナルに文字が打たれていく

しかも日本語でだ

「は、はぁ...?」

ターミナルに打たれた文字は驚きのものだった

「どういう事だ...?」

驚きのあまり頭の理解が追いつかない

『やぁ、こんばんは』

『月宵 黒君』

「ボクの...本名...!?」

何故かボクの本名が入力されていたのだ

(侵入者が書いたのか!?)

よく分からない...だが、ひとつ分かることは

とんでもなくまずい状況だと言うことだ

「おい!どうなってんだ!?」

普段冷静な白賭も凄く焦っていて声を荒らげている

「わからない!風島銀行のサーバーに侵入したんだ!そしたら急にボット......」

ふと自分の発言に違和感を持った

「あ、あれ...?ボット...だよな...これって...」

ボットのはずだ。AIもボットの攻撃と言っているし、サーバー内の移動速度もボットのはずなんだ

なのにどうしてだ

「なんでこいつ...会話が出来るんだよ...!!!」

大きな疑問が全身を伝った

「そういえば...そうだ...こいつボットだ...!!!」

白賭もこの疑問に気がついたようだ

そしてまた新しくターミナルに文字が打たれていく

『君の────』

「なんだ...!なんなんだよ!!!」

警告音が、さらに不安を煽る

心臓が破裂しそうな程鼓動している

『情報は────』

情景がスローモーションで映る

ついに全文が見えた

『君の情報は全て特定したよ』

「あ...あぁ...」

終わった

真っ先にそれが頭に浮かんだ

このままその『情報』とやらを警察に届けられたら終わる

ボクらは世界的ハッカーだ

警察はすぐにでも調査を開始するだろう

「やばいぞIXVI!どうするんだ!?」

白賭が声を荒らげる中、ボクはただモニターに映った絶望の文字を見つめるしか無かった



「やばい.........はっ!」

しばらく頭が真っ白になったが、ようやくボクは気を戻した

その間恐らく白賭は何かをずっと言っていたのだろう

「ごめん!頭真っ白になってた!」

「そんなのは後だ!あいつ、既にルート権限を取得してパスワードを変えやがった!」

白賭の発言にまたしても驚かされた

「は!?早すぎるだろ!どうやって!?」

「わからない...だが考えてる暇は無い!俺はルート権限を昇格させる脆弱性を探すからIXVIはファイルをとにかく移動させてくれ!」

「あ、あぁ!わかった!」

手分けして作業を始めた

(白賭のやつ、こういう時めちゃくちゃ役に立つ!)

ボクは只管にファイルを移動させた


「よっしゃ!権限昇格出来たぞ!」

一分程経ち、白賭の声が聞こえた

「本当か!?じゃあPravos内のユーザーを列挙してくれ!」

「あぁわかった!」

ボクは白賭に頼んだ

何故、前からPravos内のユーザーを列挙しなかったかと言うと、ユーザー列挙のツールは白賭が作ったツールで、あまりにも強力なためルート権限を持った者にしか使用不可にしたのだ

そしてルート権限に昇格した今、ユーザーを列挙出来るのだ

「結果が出たがユーザー名がハッシュ値で暗号化されててわからない!どうすりゃ良い!?」

「どんな感じか送って!」

「あぁ了解!」

ピコン♪

ハッシュ値が送られて来た

「あぁこれか...!このハッシュ形式には最近脆弱性が見つかってる!ボクが解析するからまかせろ!」

ボクは送られてきたハッシュ値解読を始めた

(このデータ圧縮の度合い的に元数値はこう...)

ボクはコマンドを次々と打っていく

(つまりこの元数値から計算して暗号キーを特定。)

2進数数値がターミナル上を占拠する

(あとはブルートフォースで何とかなれ!!!)

ボクはエンターを押し、強く願った

「まずい!侵入者がPravosのファイアウォールのルールを書き換えようとしてる!とりあえず俺が食い止めておくから解析急いでくれ!」

白賭が基地の壁の大きなモニターに画面をミラーリングした

白賭は侵入者のコマンドログを1秒事に更新しモニタリングするコードを作り、監視していたようだ

「白賭ナイス!と同時にヤバい!...けどこっちもあとちょっとで暗号が解読出来そうな頃だから...!!!」

ボクの計算が少しでもズレていれば暗号は解読出来ない

(頼む!合っていてくれ!!!)

(せめて、ユーザー名だけでも!)

責任に押しつぶされそうなその時

ピピ!

ようやく暗号の結果が表示された

「こいつ!『0bit』って名前だ!」

ボクは解読結果の表示を見て白賭に大きな声で言った

「ちょうどその『0bit』ってやつの動きが止まったぞ?」

さっきまで慌てていた白賭が、一転して落ち着いた声で言った

その時ターミナルに新しく文字が現れた

『流石、プログラマーの娘なだけやるね。』

その文字を見た時、また改めて実感した

(こいつ.....ボクの過去のことまで...!)

また続けてターミナルに文字が現れた

『黒君、過去の『渋谷スクランブルサイバーテロ事件』について...詳しく知りたいかい?』

「は...?」

(こいつ...あたかも全て知っている様に)

ボクは冷めきった震える手を恐る恐るキーボードに乗せ、『あんた何者だ』と入力した

結果はすぐに帰ってきた

『元公安部隊所属の0bitさ』

そう打ち残し、『0bit』はPravosとの接続を遮断した

ターミナルにはセッションログが次々と表示されていく

警告音も消え、何事も無かったかのようにまた空間が静まり返った

ボクは確信した。

コイツはボットなんかじゃ無い、本物の技術者だ。と

そしてボクは初めて、ハッカーに負けた

『0bit』という最凶のハッカーに________


第3話 完


スクランブル・コード/第3話 を最後まで読んで頂きありがとうございます

今回結構書いた気がしたのですが3000文字しか書いていませんでした...(*´ω`*)マァエエヤ

さて、0bitは一体黒の過去の何を知っているのでしょうか!?

今後の展開も乞うご期待!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ