緊迫した交渉
学校のサーバーに侵入し、ハッカーの組織に入ってくれる技術者を探していたIXVI
そこで親がセキュリティの社長である由香里という人物が同じクラスに居ることを知る
次の日の昼休み、ついに由香里と接触する...!!!
ピピピ...ピピピ...ピピピ
「うぅーん...あぁ」
スマホの目覚ましの音が鳴り響く
「もう朝かぁ...何時間寝たっけ...?」
昨日は学校のサーバーに侵入して情報を窃取したあと、ボクがお風呂に入っている間に白賭が基地を出て...ボクはお風呂から出た後もぶっ通しで色んなサーバーのネットワークを監視したりしていて...
そこからの記憶が綺麗に覚えてない
「はぁ、また椅子に座ったまま寝ちゃった」
そのせいで背中や腰が痛い
「やっべ、もうこんな時間か」
急いで椅子から立ちあがり、着替えをしながらパンを咥えて基地の中をドタバタと走り回った
「やばいやばい、ほんとに学校に間に合わない」
パンを食べ終えバッグの準備をしながら歯磨きをする
「えっと、これと!これと!...」
支度を終え出口のドアへ全力で走る
「あっ!まずっ....」
バン
鈍い音が自分の耳から抜けた
「っ、痛ってぇ...もう...」
勢いがあり過ぎて止まれずドアにぶつかってしまった
しかも止まろうと前かがみになったせいで頭をぶつけた
最善を尽くしたが案の定遅刻した
「はぁ、今朝は災難だったな...」
昼休みになり、校庭には沢山の人がサッカーボールや鉄棒で遊んでいた
頭の痛みはもう無くなっているが遅刻したせいで成績が多分下がった...あと先生に怒られた
「そういえば由香里って子どこに居るのかな...?」
ボクは席を立ち、入学したてで友達の名前を覚える為に机の端に貼られている名前シールを見ながら由香里という名前を探した
席に座ったままの人もおり、その人の机の名前を見るのは少し気まずかったが、これも外向的な性格になる為の訓練と自身を納得させ次々と見ていった
3列目を見終え4列目の最後尾に移ろうとした時だ
「何か捜し物?」
女の子の声が後ろから聞こえた
ボクに話しかけているようだ
というかこんな怪しい事してたら普通何してるか聞かれるよな
「あ、いや...捜し物...っていうか人探し...?かな...」
ボクがそういうとその女の子はしばらく首を傾げたが、ボクの顔をじっと見るなり、にやけながらこう言った
「知ってる人でも居るの?誰?教えてあげようか?」
随分ぐいぐい攻めてくる
「あ、いや...その」
いやここで「由香里って人」なんて言ったら好きな人とかだって勘違いされたりバカにされるかもしれない
ここは冷静に
「いや、大丈夫だよ。ありがとう」
はいこの返しが正解
自分の返答を頭の中で褒めちぎっていると女の子はとんでもない事を口にした
「そっか、困ったらいつでも私に頼ってね。私は紫九間 由香里。覚えててね!」
「えぇ!?」
思わず大きな声を出してしまった
周りが一気にこちらの方へ視線を向けた
「えぇ、私おかしな事言ったかな...」
由香里の顔は真っ赤になっており、とても恥ずかしそうだ
「あぁごめんごめん...その...実は、捜してた人...由香里って名前の人だったから...」
ボクがそう言うと由香里は驚いた様子でこう答えた
「ほんと!?...でもどうして私...?私あなたになんかしたっけ...?」
何か思い出そうとしている様子だが、恐らく解答は出ないだろう
「あ、いやその...ちょっと来て欲しいんだけど良い?」
流石にここでは話せないと思い、人が居なさそうな所に誘おうとした
しかし、ここで邪魔が入る
「おいおい、転校初日から由香里に手を出そうとか、お前どんだけ自分に自信もってんだよ」
教室の後ろに群がっていた陽キャラが笑いながら言ってきた
それに釣られて周りの奴らも笑いだし、とんでもない雰囲気になってしまった
あの言い様だと恐らく、由香里はこのクラスのカーストの上位層だと思う
最初の話してるだけならまだしも、人が居なさそうな所に誘おうとしたのが間違った選択だったのだろう
「ごめんね...なんか、変な空気になっちゃって...」
由香里がそういうと逃げるように教室から出ていった
「あ、待っ...」
ボクが口を零すと、周りはその無様な光景を見てさらに笑いだした
それに耐えられずボクも教室から飛び出した
「いやいや、ボク女の子だし!女の子同士で...って不適切な発言だわこれ。てか人に聞かれたくない話だから場所変えようとしたのに何も知らない奴が勝手に入ってきやがって...!イライラする〜!!!」
ボクは早歩きで廊下を歩き回った
するとポケットに何かが入っているような感触がした
咄嗟に立ち止まりポケットの中に手を突っ込むと折りたたまれた身に覚えのない紙が入っていた
不思議に思いながらも開くと『コンピュータ室に来て、話の続きを聞かせて欲しい』と書かれていた
すぐに由香里が書いたものだとわかった
が、しかし
「一体いつ書いてどのタイミングにボクのポケットに...?」
と疑問に思った
しかし、昼休みの終わりが近づいている
「考えてる暇は無い」
そう言いコンピュータ室まで小走りした
1分程掛かりコンピュータ室に着いた
ドアを開けると由香里が椅子に座って待っていた
「遅かったね、あの後何かに巻き込まれた?」
さっきとは何か雰囲気が違う
「いや、そのあとすぐにボクも教室から出たよ。でも、紙の存在に気づくのに時間がかかっちゃって...」
「まぁそれなら仕方ないね。それで私に何の用があって場所を変えようとしたの?」
由香里は椅子から立ち上がり言った
「その...変な事聞くけど、紫九間のお父さんはどんな職業をしてるの?」
ボクがそう聞くと由香里の目が安堵に変わった
だがすぐに疑問の目に変わった
「えぇパパ...?パパはセキュリティ関係の仕事をしてるって聞くけど...それがどうしたの?」
由香里はボクにさっきとは別の疑いの目を向ける
そろそろちゃんと話さないとまずいと思い、腹を括って口を開けた
「...ごめん...正直に話すね。でもその前に約束して欲しい事があるんだけど...良いかな?」
ボクが恐る恐る聞くと由香里は不思議な表情を浮かべながらもゆっくり頷いた
「今から話すことは絶対に誰にも話さないで欲しい。」
「う...うん...?わかった」
ボクがお願いすると由香里は戸惑いながら答えた
「ボクは実は世界的なハッカー集団のリーダーなんだ。」
ボクがそう言うと、由香里は少し驚いた様子を見せた
「信じられないよね...でも本当なんだ!それを踏まえて聞いて欲しい。」
続けて言うと由香里は頷き、黙って聴き始めた
「で、今ボクのハッカー集団に所属している人が一人しか居ないんだ。それで他にハッカーが居ないか学校を調査したら君のお父さんがセキュリティの社長だって知ってね」
「だから君にハッカー集団の一員になって欲しいなと思って...ダメかな...?」
ほぼほぼダメ押しだが、これしか方法は無い
これに掛けるしか無いのだ
心臓の鼓動がとてもうるさく感じる
全身が震える、寒い
由香里は目を瞑って考えている様だ
(もうちょっと関係置いてからの方が良かったかな...)
そう思ったその時、由香里が口を開いた
「面白そうだけど...もうちょっと考えても良いかな...?」
「う...うん!わかった...別に今急いでる訳じゃないから大丈夫...!」
まさか参加をちょっと考えてるとは、驚いた
「そう...?まぁなるべく早めに結果言うね。」
「わ、わかった、一旦飲み込んだ訳ね」
「そうそう、そもそもお父さんがセキュリティ関係で何してるか気になったし、君が転校してきた時から不思議で気になってたから。でもちょっと危なそうだから迷ってるの」
「あぁ、なるほど」
ボクはひとまず安堵し、昼休みが終わりそうなのに気づいた
「あ、昼休みもうちょっとで終わりそう。今日はありがとう、また今度話そう」
ボクはそう言って無理やりコンピュータ室を抜け出した
──カチカチカチカチ
Welcome to Database! ver.8.0
ようこそ!防衛省データベースへ
User: JMOD_0Dr,fog0
「アクセス成功。これより、情報本部へと攻撃を拡大する」
「了解、こちら地方防衛局全て制圧。後の上からの指示が出るまで絶対に侵入がバレないように。」
「了解」──────
「今思い返してみれば上手く行きすぎじゃないか...?」
彼女は今、犯罪に巻き込まれそうになっているのにも関わらず、2分くらいの沈黙で解決させた
「本当にお父さんの仕事に興味があるだけなのか、はたまた何か企んでいるのか...」
彼女の空白の1年間が未だに引っかかる
まぁでももし、彼女も何か事情があるのならそれも兼ねて組織に所属してくれるのは謎が解明出来て都合がいいけど
「だけどなぁ...」
────ピポン
胸の当たりが振動した
「ん、何か来た。白賭からか?」
すぐさま近くのトイレに入り、制服の内ポケットに隠してあったスマホを取り出した
「なんだよも〜、またかよぉ」
通知には国際金融機関がサイバー攻撃を喰らいサーバーがダウンしていると書いていた
「え、マジか...」
詳細をタップすると午後1時頃と書いていたのだ
今の時刻は午後の1時5分
なんとそれはおよそ5分前の出来事だった
「1時頃って...さっき由香里とパソコン室で話してた時...」
また調査の手間が出来てしまった
────プルルルルルル
スマホの電話がなり始めた
「白賭か...もしかして」
電話に出ると白賭は焦った様子でこう言った
「IXVI!見たかあのニュース!」
「あぁ、見たよ。今度は金融機関が狙われたみたいだね」
前は『City』が狙われて、今度は金融機関だ
「そういえば今回も『side kill』か?」
ボクが聞くと白賭はキーボードに何かを入力しながらこう言った
「多分そうだと思う。前の『City』の時も金銭的な攻撃で、今回の金融機関への攻撃も金銭目的らしい」
でも待てよ、ニュースにはサーバーダウン...つまりDoSまたはDDoS攻撃なはず。金銭的な攻撃をするならボクの場合ランサムウェアを使うけどな...
「なんで金銭的な目的なのにランサムウェアじゃないんだ?」
「いや、『side kill』はランサムウェアでファイルを暗号化した後にサーバーにDoS攻撃を仕掛けたんだ」
「はえ〜そうなんだ」
────ピコン
「今そっちにダークウェブ上に出回ってるデータを片っ端から送った。」
白賭が送られてきたデータを見てみると金融機関の表データや、テキストデータなどが沢山あった
「そんでそのデータを送った理由は所々モザイク処理があって見えない所があるだろ?そこの解析を頼みたいんだ。」
「これか...おっけー任せろ」
「頼むわ」
ボクは電話を切り、近くに居た先生に「お腹が痛いので授業遅れます」と言いコンピュータ室まで思いっきり走った
黒い画面に金の天秤のロゴが映った
「よし、学校のパソコン頑張ってくれよ。」
パソコン室には誰も居ない
ボクはターミナルを開き、まずアルファベットから全て数字まで一つ一つの画像を用意し、その画像全てに一気にモザイク処理を施すスクリプトを作成し、実行した
「あ、あれ?」
何故かターミナルに赤色の文字でエラーが出た
「ん〜?なんでだろう?」
エラー内容を見ると指定したディレクトリに画像が存在していないらしい
「あ、」
エディタを開くと画像パスが間違っていた
「な〜にやってんだボクは」
気を取り直し、書き直して実行した
話を戻すが、なぜこのような事をするかと言うと、文字に対してモザイク処理がされている場所にモザイク処理を行った文字の画像を当てはめていけば一致するパターンが見つかるのだ
アルファベットや数字の画像ファイルをベースに辞書ファイルを作成し、白賭が送ってきたデータファイルのモザイクとをAIが比較し辞書攻撃を仕掛けるスクリプトを作成した
「システム解体開始」
ボクはエンターを押し、スクリプトを実行させた
フルタワーの中でファンの音がうるさくなっている
やはり学校のパソコン、昔のものだから処理が重い
「頑張ってくれ...」
ボクは只管解析が完了するのを待った
処理率が80%を超えた
「やばい...落ちたら面倒だな...頼むぞ...!」
処理率が容赦なくどんどん上がっていき、画面がカクついてきた
「早く...!頼む!」
処理率が100%になりかけたその瞬間、ターミナルに0や1の羅列が表示された
処理が完了した様だ
新しく解析後の画像が生成されていた
見てみるとモザイクは消えていた
「ふぅ、パソコンお疲れさん。」
ボクは何度か軽くフルタワーを叩いた
「さ、後は白賭に送って終わりかな...まぁちょっと見てから授業行くか」
ボクは解析したファイルを開き、斜め読みをした
「うーん、やっぱり計算が一致してない...ん?待てよ...」
よく良く考えれば何故書き換えられたデータにモザイクがかけられてたんだ?
(そもそも誰がモザイクを?金融機関?いやかける意味がわからない...まぁそれは『side kill』側もそうか...)
「もしかしてこっちは本命のファイルじゃない?いや、データ自体はしっかりしているからその可能性は低いか?」
しばらく考えているとなんとなくピンと来た
「あ、わかった気がする!金融機関がこのファイルのモザイクを復元している間に『side kill』は何かをする目的があった。つまりモザイクは足止めの為なのかもしれない」
「そういえばどこからこのデータ入手したんだろ...また今度白賭に聞いてみるか。」
ボクはUSBを抜きパソコン室を再び後にした
カラスがうるさく鳴いている
今日は全校生徒が一律5時間授業で白賭と合流し、下校している途中だ
「そういえばどこからあの表データ入手したの?」
ボクはパソコン室での疑問を白賭に聞いた
「あぁ、あのモザイク処理のやつか...あれは『side kill』が金融機関に攻撃を仕掛けた時に、ファイアーウォールのルールを変えたみたいでね。そのルールに欠点があったからそこから侵入してデータを片っ端から盗んできたんだ」
ボクは少し驚いた
この金融機関は民間金融機関の中でも最も利用者が多い
いくら欠点があったとしても白賭がそんな大きいサーバーに侵入出来るとは、成長を感じた
「白賭も中々やるようになったじゃん」
「まぁパソコン弄り続けて10年だからね」
白賭は自慢そうに言った
「そういえば、白賭はどうしてハッカーになろうと思ったんだ?」
ボクがそう聞くと白賭は少し俯いた
「それは、」
「あっ、別に言わなくてもいいけどね!?...まぁちょっと気になっただけ」
ボクが必死に釈明すると、白賭の顔は少し明るくなった
「まぁ、特に何かある訳じゃないから、大丈夫」
「うん、なんか安心した。いつもの白賭の返しらしくて」
いつものイケメンの対応で安心を感じた
──────「必要な資金は集まった。第4、火薬の密輸先は見つかったか?」
「あぁ見つけたぜ。ついでに"ブツ"の開発環境も見つけた。中央第1化学工場ってとこ、今は廃工場になってるし人目につかない所だからかなり使えるぜ」
「そうか、助かる」──────
第2話 完
第2話を最後まで読んでいただきありがとうございます!
かなり投稿が遅れましたm(*_ _)mモウシワケネェ
これからもスクランブル・コードをお楽しみ下さい!