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4話 目覚め

目を開けると、そこには今まで見た

どれよりも明るい天井が

そこに広がっていた。


まるで、暗闇の束縛から放たれたかの

ような、そんな気分だった。


私はいつもの癖で、腕の注射痕を探す。

投薬の確認だ。

しかし、右にも、左にも、どこを見ても

注射痕は無かった。


そこで気づいた。この場所が私のいつもいる

場所では無いことに。


いつもは全面がコンクリートで囲まれた

薄暗く狭い部屋だった。


だが、辺りを見回すと、どこも白く、

とても衛生的だ。そして見知らぬ機械が

いくつか置いてあった。


そのうちの一つからは配線が延び、

私の体に繋がっていた。


その機械にはモニタがあり、数字が

いくつか並んでいる。


この数字はきっと私の体の状態を

示しているのだろうが、それが良い数値

なのか、悪い数値なのか、

私には分からなかった。

そして、ここはどこなのだろうか。


それは、ドアの開く音とともに全て

片付いた。


「良かった、目を覚ましたのか。

数値は、脈拍、血圧、酸素濃度共に

異常なし。脳波も、良いみたいだ。


あ、自己紹介がまだだったね。」


ドアから入ってきた、眼鏡をかけた青年は、

先程まで私が目を向けていた機械のモニタを

見て、そういった。


そして彼は簡単に自己紹介した。


名を、ノメリア・ニューマンと言うらしい。


私の敵国である、eau連合国側の人間で、

機械と人体の相互作用研究員という立場で

仕事をしているらしい。


先日の戦闘でのムーブメントに乗っていた

パイロットの親友で、当日は

オペレーターを行っていたらしい。

行ったといっても非正規、独断での行動

としてのようだが。


そして、私は戦闘時にムーブメントに

倒され、捕虜としてこの部屋に

連れてこられた、という事だ。


倒された直後は意識不明、生命の危険に

あったというが、術後3日で

このとおり、無事生還した。


第27、特殊緊急 医療医務室。


それが、この部屋の名称らしい。

あと7日、経過観察があるので、その間は

閉じ込められるということだ。


その後は軍の規約、制限はあるが

制限内であれば自由の身となるそうだ。


「そうか、私は負けたのか。」


私は呟いた。負けた事への悔しさは

全く無かった。


しかし、まさか勝っている

うちは、命は脅かされ、束縛されていたにも

かかわらず、


負けて初めて自由を手に入れ、まさか

敵に生命を救われようとは、皮肉な話だ。


「君は、どうしたい?もし望むなら、

一つ、良い話があるんだけど。」


私がこの世の皮肉さに恨んでいると、

ノメリア博士から声がかかった。


話を聞くと、それは常軌を逸しており、

思いもよらなかったが、

確かに悪い話では無かった。



ノメリア博士からの提案は、

私がムーヴメントに乗り、戦闘に加わると

いうものだった。


まさか、敵国の捕虜を仲間にするなど、

軍の上層部は絶対に許さない提案だろう。


しかし、先の戦闘で、私が敗北した相手、

リンディア・ソルト上等兵の功績により、

同名と、ノメリアはかなりの実権を

握ることになったらしい。


リンディア・ソルトは

ノメリア博士の古くからのつきあいであり、

戦闘時、当日にもノメリアは

オペレーターを務め、そして実績を上げた。


一度も勝利した事のない相手、

つまり私たちに。

その事により、両名の提案を上層部は

飲むしかないのだ。


私はもちろん、戸惑った。敵国で

戦闘に加わるなど、よいのだろうか。


しかし、私がいた国はまともな国と

言えただろうか。

度重なる人体実験をし、その成果で


私たちのような、クローンを生み出し、

人間を人間ともせず、戦闘へと加担させる。


このままでは、戦争の被害者が

増えていくだけだ。


私はそこで、決意した。これ以上

あの国に好き勝手やらせてはいけないと。


「乗ります。ムーヴメントに。いえ、

乗らせてください。そして、やつらを、

殲滅させてください。」


ノメリア博士は同情の笑みを浮かべ、

一言だけ聞いた。


「君の体を見る限り、想像は出来るが、

彼らは、そんなに非道な奴らだったのかい?」


同じく、私も一言で答えた。


「はい」


そして、次の戦闘における作戦の考案と、

私のムーヴメント搭乗の訓練が始まった。



リンディア博士につれられ、

これから搭乗する事になる、ムーヴメント

を見せてもらった。それは、

これまで戦ってきた機体とは、

別のものだった。


リンディア・ソルドのものもこれまでの

機体との違いはあったが、それとはさらに

違うものだった。


私用に作られたそうだ。


ノメリア博士はおそらく、私が

提案に乗る事を見越して、計画を

進めていたのだろう。


顔に似合わず、かなりの策士だ。


機体は全体的にピンク色のカラーで

塗られていた。


武装は全て電気を使うもので、

統一されている。私の能力に合わせたと

いうことなのだろう。


右手には、レール・スナイパーライフル

左手には、レーザー生成シールド


右肩にプラズマ大型キャノン

左肩にはレーザービット


と、


中、遠距離での戦闘にカスタマイズ

されており、リンディア上等兵の

後方支援を想定された機体とのことだった。


「やれそうかい?一応、君の能力を

電気エネルギーの操作と見越して

作っておいたのだが。」


ノメリア博士は自信を持った面持ちで

私にたずねた。


「はい。これなら私でも乗れるかと。

しかし、なぜ私の能力を?それに、

リンディア上等兵がつかっていたのも

能力ですよね?どうやって?」


「それを、今から説明しようと思ったんだ。

作戦の説明と、そしてそれが正確な事を

裏付けるために、君にはいくつか

質問に答えてもらうけど、いいよね?」


私は首だけ動かして、うなづき、

同意をしめした。


ノメリア博士は、踵を返し、ついて来て

とだけジェスチャーすると、作戦室

の方へ向かった。


私もそれについて行った。


初参加の作戦はどのようなものなのだろう。

不安と、期待が混ざりながら。

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