狭山茶カフェで原稿(2023.6.2)
抹茶レモンソーダの爽やかな苦みが、喉を流れてゆく。
夏の日差しはまぶしくて、暑くて、この狭山茶カフェは涼むのにぴったりな場所だった。やわらかな照明は本を読んだりミニワープロで小説を書くのにもぴったりで、ついつい長居してしまう。
三年近く通っていると常連仲間も出来て、今日は、ノンバイナリーの常連さんと相席した。と、言っても、互いに本を読んだり小説を書いたりしているので会話は少なめだ。彼人は水出しの狭山ほうじ茶を飲んでいた。
ふと、彼人のキーボードを打つ音が途切れた。
「どうですか、原稿の進み具合は」
まろやかな、それでいて涼やかな声。心地よい風が吹いたかのような響きに僕は一瞬、返事を忘れる。
「あ、えっと、まあまあです。秋のイベントには間に合うかなって思います」
「それはよかった。私も秋の文学フリマには間に合いそうです」
ふふ、と笑う彼人は水出しほうじ茶を口にした。グラスの中で氷がカラン、と音を立てて、お茶が薄い唇を濡らす。ドキドキしてしまって、僕もつられて抹茶レモンソーダを勢いよくすすった。案の定むせてしまい、彼人に笑われた。
「大丈夫ですか」
僕は涙目になってうなずいた。彼人は紙ナプキンを差し出してくれ、僕は、ケホケホ言いながら口を拭った。
その後、彼人は何事もなかったかのように作業に戻ったけど、僕はしばらく、胸のドキドキがおさまらなかった。




