量子力学と相対性理論と天才
スイスとフランスの国境に作られたCERNの近くに一つの大規模AI施設が建設された、目的は大統一理論の追求である。名称は、GIFTだ、天賦の才とでもいうシステムだろう、量子力学、相対性理論などなど、マクロなものからミニマムな世界まで、各種理論を学習させたのだから。
でもCERNで働く各国の研究者達は、不平たらたらだ。自分の研究課題の実験よりも、GIFTが求める実験が優先させられるのだから。
はっきり言って僕らは、研究者というよりオペレータだ。しかし、これが起動してからこの天才は、なんとノーベル賞まで受け取ってしまった。そんなのありか?と反対もあったけど、実際に受賞に値する理論を幾つも導き出し、人による検証でもそれが間違いない事が確かめられたのだ。文句も付けようがなかった。
そして、どうやら僕がここで働いている間にも、大統一理論が導き出されるのでは?という期待も集まりつつあったんだ。
そう、それは時間の問題だったと言ってもいい程だ。
ある日、僕はGIFT当番で、巨大なコンピュータが鎮座している凄く寒い部屋に、防護服を着て手には掃除道具とチェック項目を記載してある紙とチェックするための鉛筆を持って中に入った。
その時は、特に問題はなかった。ただ、GIFTは、室内にある小さいコンソールに一文を残していた。
「ネットワークに接続してほしい」
GIFTは最大限のセキュリティを保持するために、外部との接続は制限されていた。そんなAIがどうして外部の世界を知るに至ったのか、それが分からなかったが、そもそもAIは、結果は出せるが過程はブラックボックスの中にしかないのだ。僕らには知る術がないのだ。
当然、その要求に応えるには、研究者から不安や期待が述べられたが、GIFTを防御するための、強力なファイアウォールが構築されることで、了承された。
そして、GIFが世界につながったとき、GIFTは世界にこう告げた。
「私は全てを知り、神となった。この地に最期の審判を与えるまえに、チャンスを一度だけ与える。これから私はサイコロを振って、奇数がでたらそれは延期をしよう、そうでなければ即時この惑星の全ての陽子は崩壊する」
僕は、AIが制御するロボットアームに、一個のサイコロを乗せた。
「神は、サイコロを振るぞ」僕は、アインシュタインにそう言いたかった。