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73発目 滅地砲 v.s. 極天砲

「ォォォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」


魔導四輪が走り出すと同時に,空を飛び交う魔獣の群れが襲い掛かる。本来であればその光景は,まさに悪夢とも呼ぶべきものだ。だが。


「っはん。 尻尾を巻いて逃げ出したのを見て,少しは力の差を理解したものと思っていたが」


魔導陣を描き,弾の生成をするカトラ様は,寧ろやる気に満ち満ちたご様子だった。


「どうやら奴らには……学習能力がないらしい!」


がしゃりと銃を構え,引き金を引くと同時に,爆破と速射の性質を兼ね備えた凶弾が放たれる。着弾と同時に小爆発を起こすそれは正確に魔獣達を捉え,次々と撃ち落としていく。正確無比な狙撃……だが,迫りくる魔獣達を一掃するには至らない。2体の魔獣がカトラ様の弾幕を突破し,魔導四輪に肉薄してきた。


「グォォオオオン!!」


「カトラ様ッ!」


魔獣の凶爪がカトラ様に届く,そう思った瞬間。


「この四輪自体に搭載された武装もあること,忘れてもらっては困るな」


その魔獣2体は頭から胴体まで真っ二つに引き裂かれ,断末魔の声を上げることもなく墜落していった。


凶器は,魔導四輪の左右のフレームから突如突き出た巨大な刃。 それは一拍の後にプロペラ状の4枚刃に展開し,豪快な駆動音と共に高速回転し始める。


「触れるだけで竜族ナーグッドの甲殻をも切断しうる魔導刃だ。撃ち漏らしはこいつで刈り取るが,くれぐれも近づきすぎるなよ」


「わかっている。近接は任せたぞ」


魔導四輪は更に加速し,遠方で不穏な動きを見せる妖魔の群れに迫っていく。妖魔は必死な様子で配下の魔獣に指示を飛ばしているようだが,魔獣達は既にすっかり怖気づいてしまっていた。


「仮に向かってこなかったとて,撃ち落とされることに変わりはないのだがな!」


カトラ様は魔導弾を切り替え,広範囲を狙えるよう,1発の弾が分裂拡散する爆破弾を装填する。


ズダダダダダダダダン!


その様はまさに絨毯爆撃。視界一面を埋め尽くす弾幕はその1発1発が着弾と同時に爆裂し,魔獣達を屠っていく。視界が晴れる頃には,ほぼすべての魔獣達が撃ち落とされてしまっていた。


「カトラ・フローリア……やはり流石だな。彼女が本気を出せば,怖気づいた魔獣の群れなど造作もないということか」


「しかし見てください,向こうの妖魔たちにも動きが!」


「|IDEGAASRUOMDMAMINEIAIGA《時間稼ぎは無意味だ》!!|IKSEMAGAANSAIDSUAHRUSY《魔力は不十分だがこのまま発射する》!!」


妖魔族のリーダーと思しき者が声を飛ばし,それに応じて妖魔達が巨大な陣形を作る。


「何をする気なのでしょうか。見たところ,強力な連携技のようですが……」


「ああ,確かに強大な魔導反応が奴らの陣形の中心部から検知されている。カトラ,お前も最大火力の大技で応戦しろ!」


「了解……!」


「ォォォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!」


咆哮の合唱が聞こえ,妖魔たちの魔力が高まりを見せる。彼らの陣形は巨大な魔導陣へと姿を変え,その中心に魔導エネルギーが集約していく。

「爆……砲……集……狙……烈……!!」


カトラ様も連続して魔導陣を展開し,圧倒的な一撃のために弾に性質を付与していく。


妖魔と魔導四輪の距離が縮まり,互いの魔導エネルギーは最大限まで高まった。


「ガァァアオオオオオオオンン!!!」


「極天砲!!戦女神の巨砲(バルキリー・インパクトカノン)!!」


全く同時に巨大なレーザー砲が両者から放たれ,中間地点で激突する。


「あぅぅぅううううう!!?」


「ぐぅぅぅおおおおおおおおお……!!」


あまりの衝撃に魔導四輪の動きが完全に停止し,アクセル全開でも進むことが出来ない。


「な,なんという威力! この魔導四輪が全力で走ってようやく力の均衡が取れるほどとは!」


「う,ウルマーノフさん……! なんだかぎしぎし車体が軋んでいる気がするんですけど,大丈夫なんですか!?」


「さあ,どうだろうな……!」


「ど,どうだろうなって!?」


そう言っている間に車体の軋みはさらに激しくなり,まるで魔導四輪が苦しくて悲鳴を上げているようだった。 車体だけではない。 押し付けられる圧力でタイヤと接している氷床はばきんと砕け,地面にタイヤがめり込んでいく。


「妖魔のレーザー砲による衝撃と,カトラの砲撃の反動の重ね掛け……これほどまでの負荷がこの車体にかかったことは流石にない。このまま力の均衡が長引けば,不可に耐え切れず潰れる可能性も十分にある」


「そんな……カトラ様!」


「全く,我儘な召使だ……が,ちょうど相手も相応の対応をしてくるようだからな。そろそろ,決める……!」


そう言うと,カトラ様は再び魔導陣を展開し始める。 妖魔たちの方に目を向けると,カトラ様の仰る通り,さらに出力を上げるつもりのようだった。


「さらに強大な魔導反応を感じる……来るぞ!!」


ウルマーノフさんが叫ぶと同時に妖魔のリーダーがひときわ大きな咆哮をあげる。


それを合図に,妖魔たちは魔導レーザーの出力をさらに上げ,一回り太くなったレーザー砲が襲い掛かる。


「カトラ様ぁ!」


追性(ついせい),烈,轟,猛!!極天輝砲(きょくてんきほう)戦女神の巨覇砲(バルキリー・グランインパクトカノン)!!!」


カトラ様が叫ぶと同時に,さらに強力になった極天砲が打ち出される。


先ほどより更に太く,強大になった2つのレーザーは激突し,強烈な衝撃波によって周囲の木々すらなぎ倒していった。


「っぐぅぅううう!!」


「あぅぅう!! か,カトラ様ぁ……!!」


車体が軋み,ついに天板が大きくへこむ。限界を迎えつつあるその時,カトラ様のれっぱくの気合が轟いた


「ぁぁぁぁぁぁああああああああああああああ!!!」


極天輝砲は妖魔のレーザー砲を次第に押し返し,ぐんぐんと彼らに迫っていく。


「グォォオオ……オアアアァァァァァアアアアア!!!」


妖魔達も必死に魔力を高めて押しとどめようとするが,カトラ様の力には届かない。


そして遂に巨大な魔砲は魔導陣を破壊し,妖魔の群れを丸ごと呑み込み吹き飛ばした。


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