表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/7

ミミックが仲間になった。

 結果から言うと探索は思った以上に早く終った。

 自分が居た部屋と通路以外に同じような何も無い部屋が一つと

 奥の広間に繋がると思わしき大きな開き扉しか無かったようだ

 水は無かった。


 他に扉は無いし、進むしか、無い。

 でも入りたくない、()()()()()()()

 ゲームや漫画の知識と言うか経験則になるけれど

 この手の広間にはボス的な何かが居るのがお約束になる。


 対して私は碌に経験も知識も無いまま、初期装備も良いトコだ。

  [強制契約]があるけど、使う間も無く瞬殺されたら話にならない。


 嫌だ…でも、このままではゆっくりと干乾びるのを待つだけになってしまう。

 退路は無い、少しだけ開けて様子を窺おう。

 幸い相手が魔物なら、こちらに分がある…かもしれない。


 少しだけ…少しだけ。

 扉を一センチ位だけ開け、覗き込む寸前に[探知(魔)]を使う。


 …いる!!!

 大きい、凄く大きな気配…だけど大きいのに凄く静かというかなんというか

 動きが…無い?眠っている、のかな…?


 直接確認した訳ではないけど、()()()()()()()気    がする。

 これがスキルを使うという事なんだろうか。

 [鑑定(魔)]このまま使えるかな…?試してみない理由はない。

 これも感覚のみになるが、察知した気配に[鑑定(魔)]を使ってみる。


 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 パンドラ・ミミック 

 かつて神によって災厄と遣わされた女の名を冠したミミックの最上位種。

 非常に高い耐久値と高ランクの耐性スキルを誇り

 正攻法の攻撃でダメージを与えるのは不可能に近い。

 貴重なアイテムを守護している場合が多く

 アイテムが貴重であるほど強いとされる。

 反面、自らを開けようと触れられない限り襲ってくる事は無い。

 年齢:3741歳

 性別:なし

 体力:8079

 魔力:6184

 筋力:623

 敏捷:50

 耐久:941

 知力:50

 精神力:99

 幸運:10


 -種族特性-

[アイテムボックス]

 固有スキル

[物理耐性.A]

[魔法耐性.A]

[弱体耐性.A]

[即死無効]

[アイテム吸収]

[鑑定.A]

[擬態.A]

[触手.B]

 -獲得スキル-

 なし

 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 あ、無理だな、うん。

 喧嘩売ったら一瞬でミンチだ。

 というかギリシャ神話がある世界なのか…?


 でもコレはチャンスなのかもしれない。

 明らかにボス級の魔物だけど、開けようとしなければ襲ってこないと明言されているし

 [強制契約]で仲間になって貰えれば、こんなに心強いことは無い。


 少しずつ身を乗り出し、相手を見てみようと試みる…。

 ………居た!見えた、アレが

 「パンドラ・ミミック…」

 凄く大きい、業務用フリーザーよりも一回り以上は大きい

 小柄な女性なら二、三人は納められそう

 宝箱というよりは、むしろ石棺という方が近いような

 遠くて細かくは分からない、磨かれた白い石に何か彫刻してあって

 古めかしさを感じると共に美術品としての価値を感じさせる

 華美な宝飾こそ無いけれど、目を離せなくなるような不思議な魅力がある。

 ミミックだと知らなければ、フラフラと近付いて開けようとしていたかもしれない。



 ―…ここまで来たからには乗りかかった船だ

 自分を奮い立たせ、じりじりと近づいて行く

 [精神感応(魔)]を使い続けているが、本当に反応がない、静かなものである


 時間を掛けながら、手を伸ばして触れるか触れないかの距離まで近付く

 手をかざし念じる、使い方があってるのかは分からない

 でも、賭けるしか無い。

 「([強制契約]!!!」

 スキルを使用した瞬間、私とミミックの間に一筋の光が走ったと思うと

 そこを中心に瞬きする間に青白く光る文字と図形が幾重にも書き込まれた魔法円が広がる

 私達を取り囲み、薄い薄荷色の光が立ち上り、円の中を眩く満たしてゆく。


 「うっ…あ…っ!」

 あまりの眩しさに思わず指をかざしていた。

 時間にして10秒も経たなかっただろうか、目も眩む程光が輝いたと思うと

 唐突に消えてしまっていた。


 「(…終わったの、かな?)」


 あまり実感が湧かず、周囲を少しだけ探ってみると、何かを感じる。

 何かに見られている…? 感覚の発生元を辿ってみる…

 ()()()()()()()()()()()()()()

 顔どころか目らしき物は一切無い、だけど

 目の前のミミックがこちらに関心を向けている事を確かに感じる。

 敵意が無いのは最初からだけれども、でも、初めに感じていた恐怖心はどういう訳か失せていた。

 「(この後どうすればいいんだろう…話かけた方がいいのかな…)」

 マスクを外し、しばらく見つめ合った後


 「あの「(初めまして、マスター)」


 ?!

 何者かに被られた?誰だ?!

 というか何だ今のは?現実の言葉では無かった気がする。

 頭の中に直接響くような、思考に割って入られたような…

 言葉の主を探して即座に周囲を見渡す、それらしき物はない。

 マスター?今この状況で主人(マスター)と呼びかけるような物と言えば…。


 「(私ですよマスター、目の前のミミックです。貴方の精神感応を介して話しかけているんですよ)」


 「え、あ…そ、そうでしたか、ごめんなさい気付けなくて…」


 「(いえいえ、良いのですよ)」


 まさか口が利けるとは思わなかった。(念話?だけど)

 そして想定外に丁寧な話し方をする人…箱だ。


 「(それにしても、まさか私を従魔にしようと試みる方がいるとは思いませんでしたよ)」

 「ごごご、ごめんなさい。無理に仲間にしてしまったみたいで」


 「(いやいや、不快だとかそういう事ではないのです。私のような最上位種の、しかも意思疎通は不可能だった筈の私を従魔にしてしまうなんて事は、そうそうある事では無いはずです)」


 「そう…なんですか?あ、その、ホントお嫌でしたらお辞めになってもいいんですよ?」

 一回だけの[強制契約]、本当は困るが、話せて意思疎通ができる相手に無理強いするのは気分が悪い。


 「(まさかとんでもない! 私にとっては願ってもない機会なんですよ?)」


 「え?…はい」

  思った以上に強い語気?で迫られ困惑してしまう。


 「(マスター、私は生まれてこの方、何も得ることが出来ませんでした。この大して広くも無い部屋で、倒すべき敵も来ず、語らう仲間もいない、孤独であったと言えるでしょう。まあ、そもそも今の今まではっきりとした意識を持ったことがなくて、()()()と感じた事も無かったのですが…」


 「(貴方との契約を機に、この与えられただけの知識に実感を伴わせたい、私は貴方と語らってみたい、共に外の世界を見聞きし、味わいたいのですよ)」


 そうか、そういう…私は大それた事をしたのかもしれない。

 自我を目覚めさせられて、自分が孤独であると認識させられた。

 機会を与えてやっぱり駄目ですはあまりに、あんまりだ。

 私は「孤独な人」を作ってしまったんだ。



 「分かりました、元々私から[強制契約]を持ち掛けたんだし、やっぱり無しはありえませんよ!一緒に行きましょう! 今後とも宜しくお願いします!」


 「(…ありがとうございますマスター、それでは私に名前を付けて下さい、それで契約は完成です)」


 名前?名前かあ…発想が貧困だから苦手なんだよなあ…。

 ミミック…宝箱…箱、箱…はこ、箱根駅、箱根、ハコネ…


 「ハコネ、なんてどうですか?」

 「(『ハコネ』…ですか、ハコネ、私の名前…なるほど…)」


 ハコネと何度も呟いて、何やら考えているような、感じいっているような?

 まあ喜んで貰えていると思っておこう。


 「(では改めまして。私はパンドラ・ミミックのハコネ、今よりマスターと共に在りましょう!)」


一口メモ:真由子は基本的にヘタレだが度胸はまあまあ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ