転移しました。
作者の国語の成績はあまり良くないので、多少の事はご容赦下さい。
私は飯田真由子 二十六歳、女。
ありふれた、どこにでもいる病院食堂に勤務する調理師だった。
どうして唐突に自己紹介をしているのかと言うと
なんと私は今、異世界に居る。
冬が深まり出したある日の事、通勤途中でコンビニに立ち寄り
切らしていた日用品をいくつか手に取り、目当ての菓子コーナーで足を止めた瞬間にソレが起きた。
まず最初に感じたのは音
キンッともシュンッとも聞こえるような音が一瞬。
次に空気が変わったこと。
コンビニの温かい空調の効いたものではなく
何やら覚えのある…そうだ、祖父の家にあった土蔵の空気
ひんやりとして土の匂いがして‥‥
そこでようやく周囲を見渡すと。
「え?」
洞窟‥のように見えた。
私の側にあった前後の商品棚はそのままに、床こそ平らに均してあったけど
壁と天井は自然の黒っぽい岩そのままを流用した‥という風に見えた。
灯りは松明?のようだった(妙に火の色が白い)。
更によく見ると部屋となってるいる様で
そんなに広くもなく、十二畳間といった感じで
壁と同じ材質の岩の引き戸と思わしきものもあった。
理解が追いつかなくて、じっと立ち尽くした。
「(何?!なんだ? なんで? 何だここ?! 何なの?!!)」
5分くらい混乱してから、その場に座り込んで
座り込んでようやく足元に何かある事に気付いた。
箱だった
小さめの下箱と大きめの上箱でなるタイプの
金のような縁取りと宝石のような綺麗なストーンで飾られた非常に高価そうな箱だった。
気付く時に少し蹴飛ばしたので慌てた
恐る恐る開けて見ると手紙が入っていた、内容は
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飯田真由子さん、貴方はこの世界アルジフに転移しました。
貴方は元の世界には戻る事はできません。
細かい説明は省かせて頂きますが、これはこの世界の存続に絶対に必要なことでした。
この世界は貴方の世界とは違い、人間とは異なる種族が多数存在しています。
魔法が存在し、危険な魔物も数多く治安も含め貴方が暮らしていた世界と比較して非常に危険です。
なので生き延びる為のスキルをいくつか付加させて貰いました。
どうぞ悔い無く思うままに生きて下さい。
追伸
スキルの確認は只そう念じれば確認ができ
凡そのスキルも同様の操作方法で使用が可能です
スキルの他に各ステータスも確認が出来ますのでどうぞ活用して下さい。
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読み終わった後、やっぱり理解が追いつかなくて、その場でじっとしていた。
「(ステータスを…確認)」
すると音も無く画面が現れた。
まるでタブレットのガラス画面だけが現れた様に、空中にハッキリと浮かんでいる
試しに触ってみようとすると、これもまたガラスを撫でているようだった。
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飯田真由子
年齢:26
種族:ヒューマン
性別:女
職業:魔物使い
体力:38
魔力:45
筋力:27
敏捷:22
耐久:27
知力:21
精神力:59
幸運:75
《スキル欄へ》
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「ホントに出た?!凄い!どうなってんの?!」
「すごーい!あははっ!」
「ははっふふっ…」
「ふぐっ…う゛ぅ」
しばらく触ったり眺めたり、どう動くのか確かめたりした後に
ようやく事態を呑みこんで、何故か声を殺してひたすら泣いた。
怖い、寂しい、家族にはもう会えない、友達にも、同僚にも、楽しみにしてた旅行のこと
続きを知りたかった漫画や小説も、続編を待っていた映画やゲームだって…
泣く理由を次々と思い出して泣いた。
散々泣いた後、私をここに転移させた存在に対して怒りが湧いたけれど
それはあんまり続かなかった、こればっかりは性分なのでしょうがない。
何より泣き疲れていたし、怒りに回す気力が無かった。
疲れてお腹が減っている事に気づいて
一緒に転移してきたお菓子を食べる事にした。
お金を払っていない事が引っ掛ったけれど、この状況で責める人は誰もいないだろうし。
アル○ォートとポテ○ング、おつまみミックスを一袋平らげ、ようやく落ち着いた。
さて
「こういう非常時は、まず持ち物の確認からって聞いたな」
くよくよしてこのままの状態では居られない
聞きかじりの知識で通勤用のリュックとポケットの中身を全て並べてみる。
スマホ
財布
家と職場の鍵
ハンカチ
化粧ポーチ
裁縫セット
シュシュ
替えの下着と靴下
フェイスタオル
麦茶入りの水筒
メモ帳
包丁と包丁ケース
マスク(十枚入り)
ウェットティッシュ(二十枚入り)
筆箱
エコバッグ
並べたからって何なんだ、並べた後どうするのか迄は知らなかった。
そして我ながら大荷物だと思った、普段から仕事で必要な物、エチケットで必要な物、無いと不安な物
でリュックがいっぱいだ。
「あ、スマホ」
少し期待を込めて操作してみたが、電波は勿論届いていなかった。
「後は‥一緒に移ってきたお菓子かな、うん、ちゃんと考えて食べれば暫く持つよね」
幸い食料品が多い棚で日持ちもする物が多かった。
荷物と入るだけの食糧を全てのリュックに収め直して、考えを纏めようとする。
問題は飲み水だ、水筒の中身だけでは絶対に足りない、探す必要がある。
「その為には‥」
部屋を出る必要がある、だけど、怖いものは怖い…。
魔物が出るし、治安が悪いってハッキリと書いてあった位だし
「そうだ、スキル、ちゃんと見なきゃ…」
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-固有スキル-
[従魔契約]
魔物を従魔にする契約。
対象を同意もしくは屈服させるか、瀕死まで弱らせる必要がある。
力量差が大きすぎる相手だと破られる可能性があり危険。
[探知(魔).B+++]
自分を中心にして魔物を察知する。
射程距離、精度は習熟によって向上できる。
[精神感応(魔).B+++]
魔物の心理状態や思考を読み取り
自分のものも同様に相手に伝える事ができる。
精度は習熟する事で向上できる。
-獲得スキル-
[調理.B+]
食材に対する知識と調理技術。
ベテラン級の腕前。
【贈与スキル】
[鑑定(魔).A+++]
対象の魔物、あるいは魔物由来の物品の詳細を得る事ができる。
情報量、精度はランク依存。
[万魔のカリスマ.D]
魔物からの好意を得やすい外見、所作。
ランク依存で従魔の筋力、敏捷、耐久、精神力に上昇補正がかかる。
[万能言語]
アルジフで使用されている全ての言語の知識と発音能力。
ヒューマンが発音できない物を除く。
[天賦の才.C]
獲得スキルを同ランクまでの習得迄に補正がかかる。
[強制契約]
力量、能力、意思の有無を無視して従魔契約を行い従える事ができる。
1回のみ使用できる。
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わあ…見事に魔物関係のスキルばっかりだ。
というかステータス欄の魔物使いて何なんだ、私は調理師だ。
でも危険を避ける為にはもってこいな能力なのかもしれない。
それと何より培った調理技術がベテラン級って評価されてるのは素直に嬉しい。
戸に手をかけ、恐る恐る引いてみると
ズゴゴゴと音を立ててゆっくりと開いていく
「あれ?意外と軽いな、岩っぽいのに」
外見は本当に簡素な作りでほぼ岩なのに、思った以上に軽々と開いた
音は大きいけど簡素なのは外見だけで、中に車輪でも仕込んでるのだろうか
そう考えると何だか面白かった。
こわごわと頭を出し、目視と[探知(魔)]で周囲を伺う。
特に何も感じない、本当に使えてるのだろうか
外は通路のように見えた、私が居た部屋と同じような壁と天井が暗がりと共に長々と続いている。
「魔物‥居ないね、うん」
一呼吸置いて、意を決した。
改めて髪を纏め、フェイスタオルを巻き、頭を守る。
無いよりもマシだと思う、一応マスクもしとこう。
松明も一つ外して持っていこう。
それと、後は…
「物騒…だし、ね」
ベルトを締め直し、左腰に一番大きな牛刀を差す。
鞘が付いてるケースで本当に良かったと思う。
正直、調理に従事する者として包丁を武器として扱うのは抵抗があった
でも背に腹は代えられない。
説明を見る限り[探知(魔)]は魔物以外には適応されていないと思う。
悪い人間に出くわしたら丸腰の女一人では碌に抵抗できないだろうから。
できる準備は全部したと思う。
「じゃあ…行くぞ!!」
掛け声は勇ましかったけれど、足取りはへっぴり腰だった。
導入が終わらない。