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唯一無二のアーティファクター  作者: るっち
第1章 始まりの街
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第2話 異世界と出会い


「ここが、異世界か……」


 神様のいた白い空間から魔法陣に乗ってこの地へ転生してきたのだが、今まで海外にも行ったことがないのに、まさか異世界にくるハメになるとは……


 しかし、不思議と不安は無かった。

 それはきっと、神様という存在を目の当たりにしたからだろう。



「まぁ、いいや……取り敢えずは歩くか……」


 そう呟いたあと、当てもなく歩き出した。

 辺りは見晴らしの良い平原で、見える範囲には人や魔物の姿は見当たらない。

 すると、歩いているうちに色々なことを考えてしまう。


 本来なら高校卒業後は大学に行くはずだったとか、好きな漫画や小説の続きが気になるだとか、推しのアイドルのライヴに行きたかったなどを。


 今となっては良い思い出だと言えるだろう。

 しかし、どうしても思い出せないことがある。それは高校時代の記憶だ。何か嫌なことでもあったのだろうか?



「ダメだ、全く思い出せない……」


 全く思い出せず、心が沈んできたことに気付いた俺は、気を紛らすために自作の魔導具を使ってみることにした。

 今使えそうなのは障壁系と生命探知くらいなので、まずは生命探知を使おうかと。

 生命探知だと名称が長いと思い、付与した際に名称を変えていたのだ。

 ピアスを付けた左耳に意識を集中し、名称を唱えた。


「レーダー!」


 正常に発動したようだ。

 およそ500m先に3つの反応がある。俺は左手に短杖を持ち、反応のある方角へ進路を変更をした。


 反応地点へ近づくと3匹のゴブリンらしき魔物と遭遇するが、相手はこちらに気付いていない様子。

 すぐさま眼鏡に意識を集中させ、3匹のうち1匹にスキャンを発動した。


(スキャン!)


【コブリン・HP:25/25・MP:5/5】


 あの3匹はゴブリンではなく、コブリンと言うらしい。実に紛らわしい名前だ。

 確かにイメージしていたゴブリンよりも小柄でか弱い見た目をしている。

 バレないようにゆっくりとコブリン達に近づく……がその時、1匹のコブリンが叫び出した。



「ギャッギャッギャッ!」


 どうやら俺に気付いたようだ! しかも3匹が一斉に襲ってくる!? 俺は焦ってビームを乱射した。


「ビーム、ビーム、ビーム、ビーム、ビーム!」


 某ロボットアニメの兵器が如く、線状の光が短杖から放たれていった。

 放たれた5発の光線のうち3発が見事にコブリン全員にヒットし、コブリン達を倒すことに成功。

 だが念のためコブリン達をスキャンしてみる。


【コブリン・HP:0/20・MP:4/4】

【コブリン・HP:0/25・MP:5/5】

【コブリン・HP:0/20・MP:4/4】


「よし、きちんと倒せてるな。でも初めての戦闘が人型の魔物なんて……流石に気分が悪い。せめてもの救いは、一撃で倒せたことだな……」


 俺はコブリン達に手を合わせると、腕輪に付与した空間収納を発動した。


「ストレージ!」


 コブリン3匹を収納し、再び歩を進める。



 暫く進むと、冒険者らしき4人組が地面に座って何かをしている。

 何が起こるか分からないので、用心しながら近づいていく。

 すると相手も気付いたようで、4人のうち1人がこちらへ振り向いた。


「こ、こんにちは」

(挨拶をしてみたが、怪しまれないよな?)


 不安になりながらも俺は笑顔を見せる。

 それは、ニコニコしながらも相手の出方を窺っていたのだ。


「……どうも」


 こちらを振り向いた男が挨拶を返す。

 細身だが脱ぐと凄そうな身体付きをした男である。謂わゆる、細マッチョというやつだ。

 でも何やら表情が暗く、恐る恐る聞いてみた。


「ど、どうかしましたか?」


 男は無言のままこちらを見つめている。

(まさか! 仲間になりたいのか?)と一瞬思ったが、そんなのはゲームの世界での話だ。俺は別の言葉で問いかけた。


「何かお困りですか?」


 日本人特有の親切心だ。これで相手も心を開くだろう。そんな事を考えている間に男の口が開いた。


「助けてほしい……」


 意外な返答に一瞬動揺したが、すぐに気持ちを切り替えて理由を聞いた。


 どうやら残る3人のうち1人が大怪我で動けないらしい。

 しかも怪我した本人が治癒士らしく、自身に治癒魔法をかけることすらできない状態のようだ。

 その話を聞き、迷わず男に案内するよう頼んだ。


 男に案内され、俺は大怪我をした治癒士の隣で片膝を付く。

 残りの2人は怪訝な目で見てくるが、お構いなしに治癒士の腹部に左手を添えた。


(女性か、俺より少し歳上かな? お腹に傷を残すわけにはいかないな……頼むよ、再生さん)

 

 俺は子指に嵌めた指輪に念じながら唱えた。


「再生!」


 白く淡い光が治癒士を包み込む。特に手を添えた腹部の光が一番強く輝く。

 すると、腹部や他の傷もみるみる回復して行くではないか。

 周りの3人も充分に驚いていたが、自分自身が一番驚いていたと思う。


「すごっ……」


 俺は思わず口に出す。

 治療が終わる頃には治癒士の顔は苦しみから安らいだ表情へと変わっていた。


「ありがとう!」


 リーダーらしき男からいきなり感謝された。

 見た目はいかにも騎士道精神溢れる感じで、頼りになる「みんなのお兄さん」タイプだろう。

 金髪だが怖い感じは全くしない。多分、騎士系のスキル持ちだと思う。



「気づいたら、辺りが薄暗くなってきてるな……少し、不気味な感じがする……」


 そんなことを思いつつ治癒士の様子も気になるので、俺はこの人達と暫く行動を共にすることにした。決して怖いからではない、決して。


 現在地は見晴らしが良く魔物も少ないので比較的安全らしいのだが、この世界に来たばかりの俺にはさっぱり分からない。

 なので、情報収集としてこの4人に色々と話を聞いてみようと思う。

 先ずは互いに自己紹介をすることになり、リーダーらしき男が真っ先に口を開く。


「先ず初めに俺達は4人でーー」


 この4人組は皆Bランク冒険者で、パーティーを組んでいるらしい。

 パーティー名は『パンツァー』か……なんか格好良いな。


 リーダーらしき男は本当にリーダーだった。

 名前はデニム。Gパンか? と思ったが口には出さなかった。


 続いて、細マッチョな男の名前はチノ。

 チノパンか? と思ったがやはり口には出さなかった。

 全身黒一色という事は恐らく、アサシン系のスキル持ちだろう。


 今もスヤスヤと寝ている治癒士の名前はキュロット。

 あれ? その名前、もしかして……俺は考えることをやめた。


 最後に、俺と目を合わせてくれない魔導士の名前はフレア。

 うん、赤髪の彼女にはピッタリの良い名前だ。でも名前にはもう触れないでおこう。けど顔はすっごく好みなんだよな。


 こんな感じで自己紹介は終わったわけだが、どうしても気になることがある。それはフレアの顔だ。

 凄く好みの顔だが、ただそれだけでは無さそうだ。目を合わせてくれないから分かりにくいが、誰かに似てる気がする。



(ダメだ、やはり全く思い出せない……一体、どうなってるんだ……?)


 何故か全く思い出せず、心が沈みそうになったので、取り敢えず今は考えないようにした。

 そのあとにふと辺りを見渡すと、デニム達と会話をしている間にかなり暗くなっていた模様。

 ヤバい、やっぱり怖い。デニム達と一緒で良かった……と思っていたのだが、次の一声で更なる恐怖を味わうことになる。


「よし、食料調達に行こう!」


 そんな世迷い言を発したデニム。


「うっ、嘘だろ!?」


 つい口に出してしまった俺。

 嘘じゃないさと言わんかばかりの眼差しを向けてくるデニム。

 その曇りない瞳に負けて仕方なく観念した。


「……はぁ、分かりました、行きます……」


 こうして、異世界に来て初めての食料調達に行くことになった……



        【ト・リ・セ・ツ】



レーダー…探知魔法の一種・オリジナル

     生命探知・看破の複合

     通常の生命探知エネサーチより高性能


スキャン…調査魔法の一種・オリジナル

     鑑定・分析・看破の複合

     凄く有能


ビーム…光魔法の一種・オリジナル

    光と熱の複合

    高速高火力

    連射可能


ストレージ…空間魔法の一種・オリジナル

      通常の空間収納アイテムボックスより大容量


再生…治癒魔法の一種・オリジナル

   通常の治癒ヒールより回復量が多い

   欠損した四肢や破損した内臓も再生可能

   ある意味神の領域


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