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唯一無二のアーティファクター  作者: るっち
第1章 始まりの街
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第26話 草タイプと氷タイプ


「うおぉーっ!! やっちまえーっ!!」


「そこだそこっ! ……よっし! イイ感じに矢が効いてるよ!」


 戦闘観戦に夢中なブリとブラ。

 自分が戦っているわけではないのにここまで白熱するとは……流石は戦闘狂兄妹バトルジャンキーズ。賭けとかしたら全額ベットしそうな勢いだ。


「まぁ、そうなる気持ちも分かるけどな……だって、こんなすげぇ戦いを見せられてるんだから」


 気づいたら俺も手に汗を握り、2人と一緒になって「いっけぇーっ!!」と声を上げて観戦に夢中となっていた。



 2体のトレントによる、無数にも及ぶ枝の鞭撃を尽く防ぎつつ、上手く連携して絶えず攻撃し続ける『夜叉椿』の4人。

 物理アタッカーのブロード、守護と回復のリネン、魔法アタッカーのポロ、遊撃とサポートのネル。

 各自が役割を完璧に熟しているから成立する戦い方であり、加えてあの4人だからこそ最低限の声掛けのみで連携することができているのだ。

 

 そう考えると、同じ人数である『パンツァー』の面々は、あの4人とはまた違った役割を担って戦いに臨んでいた気がする。

 例えば、リーダーで盾士のデニムはタンク兼物理アタッカー、機動力のあるチノは回避タンクと遊撃、脳筋治癒士のキュロットは回復に物理迎撃、身軽なフレアは回避系魔法アタッカーと、個々の特性に合わせたスタイルなのだろう。


「はぁ、やっぱ冒険者って凄いよなぁ……おっ、どうやら終わりみたいだな」


 感心している間に、戦闘の方は佳境を迎えた様子。

 左側のトレントはブロードの両手剣による斬撃で斬り倒され、右側のトレントはポロの風魔法によって斬り刻まれた。


 それから間もなく、ネルから「これ、丸ごとイケる?」と聞かれたので「はい! 余裕のよっちゃんっす!」と返答してトレントの回収に向かう……が、その途中でふと疑問に思う。

 それは、何故弱点の火魔法でトレントを倒さなかったのか? というもの。

 この疑問をポロに直接聞いたところ、弱点でトドメを刺してしまうと〝落とす素材〟が消失する恐れがあるからだそうで、逆にトドメでなければ問題ないとのこと。


 偶々気になって聞いたことがまさかこれほど重要な情報になって返ってくるなんて……と心の中で驚きつつ、ポロに礼を述べて再びトレントの回収に向かう。



「すんません、待たせました! ……で? 両方とも回収していいんすよね?」


「うん、そうだよ……頼めるかい?」


「うっす! 任せてください!」


 ネルとのやり取りを済ませた後、即座にストレージを発動して2体のトレントをそれぞれ回収。あれほど大きくても回収に時間は掛からなかった。



「さて、この先に行けばボスがいるはずだが……正直、何が出てくるか分からん。最悪、撤退も視野に入れた方がいいかもしれんな……」


 腕組みして頭を悩ませるブロード。先に進むか否かかで迷っているのだろう。

 事前に仕入れた情報と差異が生じた場合、慎重になれるのは良いリーダーの証。

 彼はランクこそデニムに劣るが、リーダーとしての資質なら負けてはいない。実力差は……うん、素人の俺にはさっぱりだ。



「俺たちは行くぜ!」


 突然、俺とブロードの間に割って入るブリ。何故か自信満々でやる気に満ち溢れている。

 この自信とやる気はどこから来たのだろうか……そう不思議に思っていると、後からやってきたブラが「はぁ、どうせ魔導具のチカラ使えば楽勝だとか思ってるんでしょ」と呆れたように解説してくれた。


「そっ、そそそそんなわけあるかぁ……」


 急にブリは目を泳がせ始め、吹けない口笛を吹こうとしたりと挙動不審な行動を見せる。

 これで誤魔化せているつもりだろうが、下手くそすぎて何か笑えてきた。


「なっ、なんだ!? 何がおかしいってんだ!? 」

 

 自分が笑われたことに気づかないのもまた笑える……が、これ以上笑ったら気づかれて暴れ出しそうなので笑わずにおき、一気に話を戻してブロードに俺たちの意思を伝えることにした。


「ブリさんが言った通り、俺たち3人は先に行きます」


 俺たちの意思を聞いたブロードは「そうか……」と真剣な表情で返答し、少しだけ何かを悩むと、ネル・リネン・ポロの順に顔を合わせて決断を下す。


「よし、決まりだ。俺たちも同行しよう」


「はい、宜しくお願いします」


 淡々としたやり取りではあったが、内心では物凄くガッツポーズをしている俺。

 ブロードたちが手を貸してくれるのであれば、多少ボスが強くても勝てると考えたからだ。

 仮にもし戦う中で勝てないと判断した場合は、素直に撤退して次また頑張ればいいだけだからな。


「よっしゃ! さっさとボスんとこ行こうぜ! ヒャッハーっ!!」


 話がまとまった直後、いつの間にか元気を取り戻していたブリがハイテンションで仕切り出した。

 先頭に立って意気揚々と先に進んでいく彼の後ろ姿を眺めていると、頼もしさよりも楽しさを感じて気分が楽になる。

 そんな兄を見て、妹のブラは恥ずかしがってるような怒ってるような、とにかく怖可愛い表情になっていたので、心の中で「ドンマイ!」と励ましつつブリの後に続いていく。すると……



「……また」


「また……? クロシェちゃん、股が痛いの?」


「……ち、違う……バカ」


 恥ずかしがるクロシェは新鮮だし何より可愛いなぁ……と、頬を緩ませている俺に対し、隣を歩くブラが「キモッ」と悪態を吐く。だがしかし! クロシェに夢中の俺にはノーダメージだ!


 それはさておき、先程からずっと指を差し続けるクロシェ。一体何があるのかと目を向けた途端に「どわぁぁぁっ!?」とブリの叫び声が響く。


「あ〜、そういうことかぁ……」


 目を向けた先では、先頭にいたブリが1体の赤みを帯びたトレントによって捕まっていた。そしてこの時、クロシェが指し示していたのはあの赤トレントの存在なのだとすぐに理解した。


 俺がもう少し早く気づいていればブリが捕まることもなかったのだろうに南無南無……と惜しんでいると、無数の枝に絡まった状態のブリから「早く助けろぉぉぉっ!!」と救援要請を受けることに。



「助けろったって……これじゃあ攻撃できないし……」


 ブラがボヤくのも無理はない。何故なら、赤トレントはブリを盾にして魔法を撃たせないようにしているからだ。

 それなら接近して斬ればいいとブロードが駆け出すが、あの赤トレントは並のトレントよりも強く、枝による鞭撃が強力なため剣では捌けず、全く近寄れないでいた。

 その傍らでネルが弓を引こうとするも、赤トレントが絶えずブリを移動させているせいで誤射し兼ねないため狙うことができず。



「ど、どうしましょう……チラッチラッ」


 擬音を口にしながら、ねだるような瞳で俺を見るリネン。それは何かが欲しい……ではなく、あの赤トレントを倒してほしいということだろう。

 聖職者にも拘らず、なんとも浅いお願いの仕方だ。とはいえ、その澄んだ瞳で見つめられたら断れるわけないじゃないか。


「はぁ、仕方ない……いっちょやりますか!」


 気合いを入れた後、赤トレントの枝がギリギリ届かない位置まで近づき、右手を前に突き出して「舞え、氷砂!」と叫んだ。すると、右手からキラキラと光を反射する砂らしきものが赤トレント目掛けてゆっくりと飛んでいく。


「……!! えっ、あれってまさか……こっ、氷っ!?」


 後方からポロの驚く声が聞こえてきた。

 流石は魔導士だ、いい勘してるな……と思いながらも、前方を見据えたまま〝氷砂〟が赤トレントに届くのを待つ。



「……よし、これで終わりだ」


 赤トレントに〝氷砂〟が届くと、付着した箇所から次第に凍りついていき、最終的にはブリを避けるようにして氷漬けとなった。


 凍りついた枝が崩れたことで捕縛から解放されたブリは「うおぉぉぉっ!? 落ちるぅぅぅーっ!!」と叫びながら崩れた枝と一緒に落下。

 そのまま地面に叩きつけられる……かと思われたが、咄嗟に駆け出したブロードによってそれは免れた。


「ブロードさん、ナイスキャッチ!」


 ネルがブロードを讃えてサムズアップをすると、みんなも合わせるようにサムズアップをしてニコリと笑う。


 それからすぐにブラがブリを叱り出し、その間に赤トレントの回収をしようと辺りを探る。だが……



「ダメだ……葉も枝も素材にならないくらいボロボロになってやがる……」


 氷が溶けると同時に枯れ果ててしまい、触った途端に崩れて使い物にならなくなる。


 何か無事なものはないかと手当たり次第に探していると、隣に来たポロが崩れた枝に触れて口を開く。


「これって……氷系も弱点ってことじゃない?」


 ポロからポロッと出た言葉を聞いた瞬間、ウッドゴーレムのことを思い出した。


(そういえば、奴の身体も崩れて回収できなかった……もしかして、弱点だったから素材がダメになったってことか……!)


 その事実に気づき「知らなかったとはいえ、素材を無駄にするなんて……」と四つん這いになって落ち込む俺であった……


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