表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
犬豪伝〜ミナモトノウズマサ異聞録〜  作者: 星一悟
第二幕 西方世界編
73/81

弄命の村

巨大な百足蛇が這い回り、蠅頭が群がる。


ついに、村の近くに来た。


正規軍は今回も遠巻きであったため、遊撃隊にその負担がかかった。

中央大陸から加勢してきた兵は、ストロム中将の痛手にならない範囲での後詰めだろうことが明らかであり、副隊長のグウェインが重い顔をしていた。

反対に、怪異に強いキヨアキラが来たことでウズマサは気を大きくした。


急いで2台のバリスタの弦が巻き取られる。

動物の腱などでできた縄が悲鳴の様な音をたてて絞られていく。

巨大な百足蛇がシャーッと鳴いた。


「準備よし。」


猿兵はウズマサでなく、リンレイに報告する。


「射っ!」


リンレイの声に呼応して発射された槍は百足蛇に深々と突き刺さると、威嚇から攻撃の声をあげ、百足の足をうごめかせてこちらにやってくる。


口腔が白いとわかる程、口を開いてやってくるそれに、いしゆみと弓矢が一斉射される。


百足蛇むかでへびはひるんだが、血の匂いを嗅ぎつけた蠅頭はえあたまの群れが羽ばたきを響かせてやってくる。


「弩と弓矢は空をうて!槍は蛇を狙え!」

ウズマサが叫ぶ。


「うわっ」

それが、あるゴブリン部隊員の遺言となった。


百足蛇が鎌首をもたげたかと思うと、頭から飲み込んだのだ。

丸ごと飲み込むゴキゴキという生々しい音に苦々しい顔をしながら、荒れた神経を集中して魔素を放出したウズマサが大太刀を一閃する。


丸太程の大きさの百足蛇の首が飛ぶ。


村から百足の爪音をたてて大小の化け蛇がやってくる。

そして、背の異様に高い、口しかない白衣の人が気味の悪い笑顔で村から出てきた。

白衣人は何事か呟くと、命令を聴き入れたのか次々と百足蛇が襲いかかってきた。


「菱形の陣をはれ!密集せよ!」

ウズマサの命と、ケインの太鼓の音を聴いて反射的にゴブリンが集まって陣を敷く。

槍衾やりぶすまの密が濃くなり、雲丹うにの様に放射状に穂先が広がった。


ディナシー達は矢の為に得意な空に上がれないことを歯噛みしながら、やってくる蠅頭に武器を振る。

「どれだけいるのだ!」

パーシヴァルの嘆きに似た声をよそに、アーダインがグウェインに叫んだ。

「白い服の奴が司令塔だ。低飛行で奴を倒します!」

「駄目だ!味方の矢をもらう羽目になるぞ。」

「その時はその時だ!」

「アーダイン!」

アーダインは決死の覚悟でランスを抱え霊馬を召喚し、低飛行した。

戦いの高揚隈アップライトが赤く色濃くなり、アーダインのアドレナリンが沸騰する。


弩の矢を背後に、鎧の隙間をふんで狙う蠅頭をかいくぐり白衣の男に迫る。


が、


白衣の男の顔の口から上がめくれ上がり、中から黒い器官が現れた。

巨大な眼球らしきそれが、ギョロッとアーダインを見つめる。


「うっ。」


アーダインの全身の筋が心臓まで一瞬硬直し、霊馬が霧散した。

空中に投げ出されたアーダインが地面を転がり、化け物が襲いかかる。


「ディナシーを助けるぞ!」

馬を庇って後方で戦っていたグレゴリー騎士団が突撃した。


アーダインの全身鎧の隙間に吻が突き立てられ、丸呑みしようと百足蛇が顎を開いた。

グレゴリー騎士団が馬で槍で蹴散らしながら、化け物を前に恐慌状態になった馬を御する。


フッツ!


キヨアキラが術を使い、不可視の刃が化け物を切り裂いた。

「凄い魔素(マナ)が身体から吹きでるね。」

サリアが感心した。

「魔素?気ならそうとしか言えません。」

扇子を閉じて精神を集中する。


「群魔退散」


片目を閉じ呼吸を整え、印を組み口の中で呪を唱える。

懐から小さな陶器の法螺貝をだし、投げつける。


ヒュイイイイイー


法螺貝が甲高く鋭い音で放物線を描いた。


サリアがダンキチの傍で耳を押さえた。

化け物が音を避けるように身をよじり硬直するのを、隊は見逃さなかった。


「今だ!突き走り!」

マグの言葉を起点として、槍部隊がワッと前進し、走り込んで化け物を突いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ