英雄は創るもの
ウズマサの話は、抑圧されていれば抑圧されている分だけ、貴族への皮肉である『腰抜け中将』のひそひそ歌と共に話に尾ひれがついて広まっていく。
伝聞がリファールにつくまでに、どこからともなく風刺画として逃げる貴族とオーガに噛みつく犬の落書きが各地で描かれた。
「あの犬頭の騎士がやってくれたぞ。」
「貴族の腰抜けと違ってオーガ共を百人切ったそうだ。」
「いや、百五十はいた。叔父の友達の友達から聞いたんだ!」
「ディナシーでさえ躊躇した相手を捕まえたそうだ。」
「ストロム逃げたウズマサ行った!逃げるのが早いのは貴族様らしいねえ。バカばかり…。」
「遊撃隊には聖なる女神の加護がある。」
「なんたってスノリ様だよ。あの方のご加護に違いない。」
………
ハイヤシンスでの勝利以降、普通ではない心的ストレスに悩むウズマサを尻目に話に尾ひれがついていった。
ハイヤシンスから先へと進行するにあたって、偵察隊が見たものは、怪物の群れだった。
蛇の身体に百足の足がついたような巨大な怪物が這い回る背後で、蝿の頭と蝙蝠のキメラが震えていた。
多くのキメラがかつて生活していた農地や建物を汚辱し、のし歩いている。
恐怖した偵察隊のまくし立てを聞いて、軍は足止めをくった。
これ以上失敗できないと思ったストロム中将が足止めしたとも言えた。
「進軍するより足場を固めるべきだ。」
中将は明らかに尻込みしていた。
「それでも、進まねばならんでしょう。」
ウズマサは悪夢の中でも使命を忘れてはいなかった。
「最終決定権は私にあるのですよ?ミナモト卿。」
「ストロム卿。申し訳ないが」
「申し訳ないとお思いなら私に従ってもらいたい。」
ウズマサはストロムの物言いにカチンときたが、忍耐強く会話を重ね、数日後に準備が整い次第進軍という中途半端な結論に至った。




