外国人
正規軍を撤退させた魔王代理ネームレスを捕まえ、オーガを蹴散らし、ハイヤシンス戦に完全勝利した。
このニュースはサーウズマサの名声として広がることになったが、パトロンとして契約しているダービー伯は違った。
皆のためだろうが、自分の手で何もかも命がけで背負って戦う。
それはさぞかし立派な行為に見えるが、リーダーが死ねば全ては崩壊する。
何故大将が後方にいるのか分かっていない突撃馬鹿っぷりを露呈したウズマサに、ダービー伯は危うさを感じていた。
バシッ!
傷が癒えたてのウズマサに向けたオーナの綺麗なビンタ音に、側にいたロッコがビクッと震えた。
「馬鹿もの!何度も言うが、隊長のお前が死んだらこの遊撃隊はお仕舞いだ!どうせこんな愚策だと思っていたぞ!だから、言ったんだ奴はオマエには無理だと!」
「上手くいったではないか!首長!」
ウズマサはオーナを肩書で呼んだ。
「平原では仲間を数多く失ったし、どこでも失ってきた!今回、正規軍の二の舞にならないためには、某が怪しげな魔法を使う他なかった!共に飲んで食って命と背中を預けてきた仲間を、いたずらに失うわけにはいかないだろう!」
「少なくともゴブリンは私の責任だ!」
オーナは一歩も引く気は無かった。
「私がゴブリンの未来を決める。人には役割というものがあり、お前は遊撃隊隊長として戦うのが役割だ!平手打ちと共に刷り込め!お前の役目は遊撃隊を率いて隊の後方で見守り戦うリーダーだと!」
「ならば、隊長を辞めるまでだ。」
「勢いに任せて拗ねるな!」
オーナは今度はウズマサの傷だらけの顔に優しく手を当てた。
「お前なんだよ。魔王の首を食い千切る勇者は。お前なんだ。皆を引っ張るのは。何故分からない?」
「だが、某は前に出て戦うことしか知らぬ。」
ウズマサは弱音の様に呟き、思わず目を逸した。
「皆が信用できないのか?」
「信用している。ネームレスことフロノスは某に目をつけていた。ならば、某が前に出てダンキチが上手く奴を捕らえれば、戦に勝てると思ったのだ。」
オーナは目を閉じ俯いた。
「今回だけか?そういう我が身を犠牲にするような考えをしたのは。そうでは無いだろう?」
「だが、そこまでして初めて人は某についてくる。某みたいな異種族の侍、『外国人』になぞ、誰が心から信頼するだろうか?」
「それは、違います。サー。」
ロッコが口を開いた。
「私は、私はサーみたいに戦いのあり方を問える騎士になりたい。敵と戦う理由を一々考えるサーの在り方を否定なさらないで下さい。サーのそんな所に尊敬している私を、否定なさらないで下さい。」
ロッコは話しながら涙ぐんだ。何も相続する権利のない貴族の三男坊が騎士を目指し、武人としてウズマサの姿に手本を見ていた。
「某は悩んでばかりいるだけだ。殺す最後の最後まで相手を切っていいのか考える。生殺与奪は軽くはないと思っている。」
「だからって、自殺の様な事をするな、ウズマサ。何度でも言う。お前が死んだら、エルフもディナシーもゴブリンも皆バラバラになる。」
オーナはウズマサの意外に撫でたくなる頭を撫でた。
「各々でそれなりに統率はとれるさ。だが、オーキデンスの異種族が協力してモンテンノーザを討ち取るなんてことが出来るのは、お前にしか出来ない偉業になると思う。私はお前を信じている。つまり、ゴブリンはお前を信じている。お前のその『外国人』とやらの、よくわからない自虐で我らの信頼を傷つけないでくれ。」
「…分かった。」
ウズマサはオーナの目をみて真摯に頷いた。




