対決前
アクルサスに着いたウズマサをグウェインが歓迎した。早速、天幕の下で会議が開かれる。
「それで、ネームレスの魔法に対抗できるのか?」
「ああ。」ウズマサは言葉少なだった。
魔法が使える。
サリアの理屈を借りれば、確かに魔素を使えば理論上、敵の飛び道具など余程速くない限り、思考と言葉と魔素で勝つ。
魔素を用いれば身体能力まで加速する。それを知って、ウズマサの気分はどこか落ち込んだ。
遥かに強くなった。それはいい。だが、今までの稽古は何だったのか?
それは考えまい。
強くなるのに手段を選んではいられない。血と肉を持った人の知恵と技の範疇を超えたものに対抗するとき、正攻法でいくならば誰もが常人の範疇から逸脱したものに変わる。
身の丈デカいオーガやトロル、武術まで使うハイオーガや感情が死んでいるハイウルグらを相手に刀一つで丁々発止してきただけでも、ウズマサは非凡なのだ。
「そうだ。パク・ヒョンビンによれば、猿族だけでなく、虎国のサホダと阿島の犬士達が派遣されてきた。」
「犬士達が!?」
ウズマサは顔が明るくなった。
「隊長の話が広まって、阿島から大量派兵が決まったようだ。立身出世を狙って吾こそはという豪傑みたいな連中も大陸から来てる。いい流れだ。」
「犬士も上から下までいらっしゃる。御主人様が特殊なだけだ。」
ダンキチがそう言いつつ、ウズマサと同じく嬉しそうな顔をした。故郷から加勢がくるのは嬉しいものだ。
「まぁ、皆まとめてサーになられては平地エルフの面子がたたないだろうさ。」オーナが笑う。
「ついでに、ゴブリン族の勇者の位もウズマサにはくれてやる。士爵だから、そうだな。エケス(ゴブリン騎士)のウズマサというのはどうだ?」
「隊長だけでは足りませんか?」
ウズマサが苦笑すると、オーナもまた腰に手を当て笑った。
「スレイブフェローやら何やらで逃げて徴兵されて、戦いや従うことに抵抗感のある男達がいるからな。結束は固めたほうがいい。」
「部隊法も明文化しました。法律と秩序は基本ですからね。」スノリが人差し指を挙げる。
「今回は、皆遠巻きに見ていて貰いたい。某とダンキチとサリア殿は魔法が使えるが、ネームレス・チートことフロノス・ギルミアは生け捕りにする。」
この発言には、全員がウズマサの正気を疑った。
ダンキチはそういう意図があると知っていたが、それでもこの場で明言されると躊躇した。
「奴はオマエには無理だ。」
オーナの声は冷たい。
「出来るとも。命懸けでもやってのけなければ、今後某は隊を引っ張れないし、隊を危険に晒せない。駄目だと言うなら隊長を辞める。誰も引き止めるな。」
ウズマサがきっぱりと告げると、グウェインが口を開いた。
「何か策はあるのか?」
「ある。アクルサスへの帰りの道で魔法の指導を受けた時、この仕事は某にしか出来ないと思った。某なら出来る。生け捕りにして魔王について聞き出してみせる。600年の記録上、不思議なことに魔王の性別や姿形さえ誰も知らんのだ。敵を知らねば。」
反発の声はあったが、ウズマサの情熱には誰もが言いくるめられてしまった。
「仕方ない。そこまで言うのなら、ウズマサ殿にやらせてみよう。」
グウェインの一言で決まった。




