ストーンブラスト
「ハイヤシンスは遊撃隊なしでも我々が勝利する。」
遊撃隊が進軍しないのをみて、ストロム中将は功を焦った。
正規軍が先行した。
「来たね。」
ネームレスは後ろにオーガを控え、一人でたっていた。
ネームレスの両脇には拳大の石が幾山と積まれている。
ドドドドドドドドドド…
騎馬隊が勢いよく先陣を切ろうと走る。
「オーガ達。今日のご馳走をたんまりと食べるんだよ。」
腹をすかせたオーガが、待ちきれぬと大地を叩きヨダレとツバを撒き散らして興奮する。
「まずは馬肉が前菜。」
ストーン!
ネームレスが石の山を指さして叫ぶと、石達が重力を無視して浮いた。
ブラスト!
突撃する騎馬隊に指を向け直すと、石は一旦無重力になると、魔素を受け亜音速に加速し騎馬隊に襲いかかった。
馬は即死し、鋼の鎧は簡単に貫通し、騎馬隊は停止線を引いたように倒れ死んでいく。
後方に続く歩兵にも血痕のついた石の群れが襲いかかったが、距離があって身体を打つ程度だった。
「ま、魔法か。弓隊、横列にて走れ!」ストルム中将が慌てた。
弓隊が命令に従い射程圏内まで走った。
「構え!撃て!」
弓の揃ってないまばら撃ちになったが、ネームレスに矢雨が中ろうとした。
「はいはい。」
シッシッと手を振ると、矢がネームレスの身体を勝手に避けた。
「く、くそ。聖戦だ!突っ込めぇ!」
眼の前で騎士が虐殺されるのを目にし、士気を失うかに見えたが、聖戦の一言に熱狂して突っ込んでいく兵士達をみて、ネームレスは嘲笑する。
「聖戦。響きいいね。オーガの腹をわざわざ満たしに来たよ。」
兵士達はストーンブラストの餌食と化した。
ヒュヒュヒュヒュヒュヒュヒュヒュヒュヒュヒュ…
音の速度に達する風切音と、兵士の身体を貫通する鈍い音が戦場に響く。
兵士達は上空からみて半円を描くように死体の山となった。
「ヒ、ヒィ。」
熱狂から恐慌に変わった兵士が、ストルムのことなどお構いなしに逃げ出した。
「オーガ達!お食事だよ!かかれ!」
「「グワァァァァァァ」」
オーガの群れが肉を求めて群がる。
うわぁぁぁぁぁ!
雄叫びが、悲鳴がそこかしこで響く。
「退却!退却だ!」
ストルム中将は乗ってる白馬で一番に逃げ出した。
「ウズマサいないじゃないか。次はウズマサを連れておいで。『本気』で遊んであげるよ。」
ストルム達に、ネームレス・チートの甘い声が地獄の囁きに聞こえた。




