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犬豪伝〜ミナモトノウズマサ異聞録〜  作者: 星一悟
第二幕 西方世界編
33/81

クライ駐留部隊

「遅いな」ゴブリン駐留部隊の指揮官マグが声をあげた。

副隊長ドグが、オラン近くの森で失くした妻の櫛を探すと出ていって一夜が明けた。


が、オランから戻ってくる気配はない。


「何処かで道草でも食ってるんでしょう、ここは最前線のトランザから離れてますし、隊長殿、ここはのんびりしましょうや。」兵の一人がアクビをあげた。

トランザ戦に負けたゴブリンは、ここぞとばかりに戦線どころか戦そのものから離脱し、森やかつての巣穴に逃げ帰っていた。

領地に帰れば、また最前線に駆り出されるからだ。ゴブリンの士気は低く、勝つというよりモンテンノーザの邪悪な魔の手から生き延びるといった思いの方が強かった。

そのため、10名にも満たないクライ駐留部隊に伝令に行くものは現れなかった。

「まぁ、ここまで攻め込むものもおるまい。いつも通り短弓使いの3人だけ見張りについて、後は適当に休憩とする。」

短弓使いのゴブリン達から、俺達ばかりと抗議の声が挙がった。

彼らは森で狩りをして生計を立てていたアドイ族であり、短弓を使う他、ダイヤウルフの世話も行う便利屋として扱われていた。


最早、都市として占領する価値のない街に敵など来るわけもなく、夜盗化した難民でさえ農業地帯には来なかった。飯がない農業地帯に用はない。

それでも駐留部隊を置くのは、クライの先にある次の占領地大都市タンジーとの中間地点の一つでもあるからだった。

タンジーでは、より多くの部隊が集まり、山に籠もって攻勢者3倍則を厳守しつつも、さりとて王国として政治的に攻勢にでることもない、引きこもりのドワーフ達の王国らに対して攻めあぐねていた。

目下ハイウルグによる投石機の増産と、ドワーフ達が鉱山の発破に対する使用を発端として発明した、秘密兵器『火薬』の開発に力を注いでいるが、火薬の化学反応に必要な硝石等の素材は山の中であり、魔王軍には開発困難な代物だった。

「いつになったら戦争終わるんですかねぇ?」間延びした兵がいつもの様に繰り返す。

「トランザが落ちれば、次はリファールとダグザを攻めて、そいつらが落ちれば、後はドワーフの連合王国だけだろ?勝利は目の前さ。」

「女達は開放されるんですかねぇ。」

「分からん」隊長は目を伏せ、切ないといった顔をした。

「俺達は戦争に勝っても、永遠に魔王様の奴隷だ。あのハイウルグ共に鞭打たれながら、今後魔王様の思う国造りの土台にされて終わるのだろう。」


「あーあ、やだやだ。妻と子供たちに会いたい。」六人の子持ちである短弓使いの一人が首を振った。

「思春期過ぎれば兵役だろ?長男は幾つになった?」

「数え年で11かな。兵役となれば、最前線に送られて死ぬかも知れん。その前に一目会って声をかけてやりたい」短弓使いは目頭を押さえた。

「何て言ってやりたいんだ?」会話に参加していたゴブリン接近兵に短弓使いはこう言った。

「何としても生き残れ、人肉を食ったら病気になるから、敵の家畜や森や平野で食える草や実を食え。危ないとみたら一目散に巣穴や森まで逃げて逃げて生き延びろ、てな。」

ここにはモンテンノーザはいない。短弓使いは思いの内を明かした。


そして、太陽が昼を告げるとき、ウズマサ達が遠くからやってきた。

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