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犬豪伝〜ミナモトノウズマサ異聞録〜  作者: 星一悟
第二幕 西方世界編
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西方世界

暗黒の次はどんどん意識が下に沈んでいく不快な感覚と共に、眼を開けると軽い酩酊感をウズマサは覚えた。


犬士隊15名と狸一名にウズマサ、そして虎族は武官ドンウクを含め40名の兵士を連れて、転送に成功した。


感覚が戻ると、太く白い柱の並ぶ神殿の魔方陣に立っていた。

耳が長く、頭髪や眉毛や睫毛以外顔に毛のない所謂妖精族のエルフの女官が猿語で話しかける。

「貴方達が、今度の赤室猿王の増員ですか?」

困惑する一同に先駆けてウズマサが共通語となった言葉で朗々と答えた。

「貴女が将軍か?そうは見えないな。俺達はそちらの言語については分からない。しかし、某は翻訳機を持っている。某はミナモトノウズマサで、某と似た顔の獣人は阿島という国からきた犬士達だ。隣の虎の頭をしたのは虎国から来た兵士だ。猿王の命令により、大した説明もなく、遠路はるばるやって来た。生来獣でない頭をした人は初めて見たよ。」

「そうですか。」独特の武装した一団を見ながら女官がエルフ語で話す。

「魔王モンテンノーザの話は?」

「復活し闇の軍勢とやらを率いて世界中を荒らし回ってる、とだけ聞いた。俺達がそいつらを相手に戦うことも話には聞いている。ただ、世界中といっても規模が分からん敵の顔も分からん、味方がどれだけいて敵とどう渡り合ってるのかさっぱり分からんのが現状だ。」

「お話はよく分かりました。ミナモトノウズマサ様。では、西方世界オーキデンスの現状を地図を交えてお話いたします。こちらに。」


別室へと案内されながら、話を聞いていた虎族の武官チョ・ドンウクがウズマサに声をかけた。

「俺の名はチョ・ドンウク。兵をまとめる虎国の武官だ。翻訳機だが、我々にも譲ってはくれないだろうか?言葉が分からない。」

「こちらも手持ちの札が少なくてな。」ウズマサは状況から有利にたてると思い、回りくどく言った。

「一枚を某の配下のダンキチという狸人に持たせてある。全員の通訳係になってくれる。貴方にも一枚を譲ろう。手に持って念じれば言葉が分かり、伝えようと念じれば言葉が何やらその人が知っている言葉に置き換わる様だ。」

「ありがとう。分からない者同士、協力していこう。」

ウズマサはドンウクの信頼を得たらしかった。


神殿別室は魔方陣のある部屋より狭かった。テーブルの上に地図があり、チェスのコマが上に乗っている。

「卓の上の地図をご覧下さい。」

女官に言われて、黒い駒だらけの地図を見た。

「白の駒がまだ襲われていないか耐えている国、黒はモンテンノーザが治める領地になった国です。西方世界の北から復活したモンテンノーザはまたたくまにオーキデンスの北部を占領。幾つもの町や国がモンテンノーザにおとされました。」

白い駒は2つ南にあり、北の山脈の位置に白い駒がある。

「我々がいるここリファールと、ディナシーの治めるダクザは、まだ襲われることなく持ちこたえていると確実に分かっている国です。北のこの山脈にはドワーフと呼ばれる人達が住んでいて、こちらも王国ギザを始めとする国々がありますが、閉鎖的で険しい山の中にある諸王国が今どうなっているのか正確な情報がなく、持ちこたえているのかは分かりません。」

「では、モンテンノーザとやらにほとんど国捕りされているではないか。」

ウズマサが唸ると、札を持ったドンウクも同意の声を上げた。

「最早我々の出る幕ではないぞ。」

「支配されている、といいますがまだ反抗勢力として国をあげて戦っている所が大半です。国を奪還すればまだ勝機はありましょう。」

女官の言葉にウズマサは呻く。

「相手はどんな奴らなのだ?敵の姿形は?」

「兎に角、緑色や灰色の素肌をした、頭に角を生やした鬼共です。」

女官は声を震わせた。

「ゴブリン、オーガにトロルにハイウルグ。彼等が灰色や緑色の肌を持ち、我々と違う醜い種族であることはすぐに見て分かるでしょう。」

「醜いエルフやドワーフやディナシーとやらがいたらどうお味方すれば良いかな?まぁいい。」ウズマサは皮肉を言った。

「我々もモンテンノーザとの戦に加えてくれ。その為に来た。」

「もう少しすれば、将軍がこちらにお見えになります。彼から指示を受けてください。」

女官はドレスの裾をつまんで礼をすると部屋から出ていった。


「予想以上の劣勢だな。」ドンウクの言葉にウズマサが同意する。

「そして俺達は貴重な加勢というわけだ。将軍らしい人が来たぞ」


金色の装飾としてエッチングの施された板金鎧に身を包んだハゲ頭のエルフの男が、兜を手にやってきた。


「女官の話では君たちは我々の言葉を理解しているとか。我々は君たちを歓迎する。」

「翻訳機を持っているものだけだがな。俺はミナモトノウズマサ、ウズマサでいい。こっちはチョ殿」

「俺もドンウクでいい。兵糧が与えられ次第、軍事作戦に参加するつもりだ。」

「ウズマサ殿に、ドンウク殿だな。私はティリウス将軍。このエルフ最後の地リファールで反抗作戦を指揮している。」

一団が礼をしたが、ティリウスは無視した。

「話は女官から聞いていると思うが、我々は劣勢にたたされ、リファールやダグザ以外の国々は街の中に隠れて暗躍する程度に国を乗っ取られているか、或いは皆殺しか国外へ逃げるかして完全に国を滅ぼされ、モンテンノーザの領土となっている。戦っている国や反抗勢力と組んで兵力を高め、国の堅守や奪還を考えてはいるが、手駒が欲しかった所でな。正直猫の手も借りたい。君たちには期待しているのだ。」

猫の手、という表現の裏には侮蔑があった。

「猿王は数頼みの弱兵しか送ってこない。君達を弱兵呼ばわりしたくないが、今は頭が猿でなかっただけ頼りにさせて貰うよ。」

さて、とティリウスは続けた。

「早速だが、トランザ奪還作戦に協力して貰いたい 。トランザはリファールに接する隣国だ。石壁に囲まれていて、第五層あるうち第二層まで敵の蹂躙を許し、事態は一刻を争う状況だ。リファールとしては君達を派兵部隊にいれ、混合隊として先ずはトランザに向かって貰うつもりにしている。」

「大分飲み込めてきた。俺達は、そのトランザという土地で戦の員数あわせとして戦うのだな。」

ドンウクは部下にも聞こえるようにわざと大声をだした。「転送したばかりですまないが、出来れば今日の昼か明日には私の配下に加わって貰いたい。」ティリウスの言葉をドンウクが復唱する。

虎族と阿島の兵は通訳と説明の為しばらくざわついていたが、意を唱えるものはいなかった。ここには戦いにきたのだ。


「いつ派兵するかはそちらが決めてくれ。俺達も加勢する。可能な限り命令は効くが、敵の姿が想像でしか分からないから、誤って味方を討たない事を願うよ」

「それはない」ティリウスは首をふった。

「モンテンノーザの兵と我々との違いは戦場ですぐ見分けがつく。」

一団は、午後からの作戦に加わることとなった。

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