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犬豪伝〜ミナモトノウズマサ異聞録〜  作者: 星一悟
幕間 西方世界へ
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狸人、漢一代弟子入り

第2幕への橋渡しとして幕間となります。お付き合い頂き感謝しております。楽しんで頂けたら幸いです。

時が経って、ウズマサは父ギントキから唯一受け継いだヤクマルイッシン流の太刀術にさらに磨きをかけていた。

ヤクマルイッシン流はヤクマルイッシンという伝説的な人物が編み出したとされる武術で、『剣術』を主として創設した古い流派の一つとされる。

剣術最大の利点は、首をとって手柄にする以外では、刀の携行性が他の武器よりも優れている点にある。太刀を佩けば、平時から戦時に即座に対応が出来る。

また、ヤクマルイッシンが狼人であり、狼人の武術が剣術主体であったこともあって、遠吠えの型でビョオオビョオオと鳴くのはみっともないという声もあるが、今に受け継がれていた。


この頃の『鵺殺し』ウズマサは、治安維持に奔走していた。貴族の送り迎えの護衛から山賊退治に犬士達のいざこざの解決まで、最年少犬豪という触れ込みは耳障り良く聞こえるが、若いから舐められるという意味でもあり、特に犬士同士での決闘も辞さない程のいざこざにウズマサはげんなりとしていた。


犬人の種族の役割として暴力装置であるがゆえに、ともすれば乱暴でアクの強い犬士達の面倒をみるのが犬豪の役目でもある。犬豪とは強いだけでは成り立たない名誉職の事であった。


ある日、ウズマサは一人で道を歩いていた。

理由は特に無く、強いていえばストレス発散の為に散歩をするようになっていた。


人間関係だけはどうしても慣れない。胃に穴が空きそうだった。


すると、道の横から、小袴に赤いちゃんちゃんこだけを羽織った太った一人の狸人がウズマサの前に現れて、手にした乳切木の棒を横に置き土下座して頼み込んできた。


「ミナモトノウズマサ様とお見受け致します!どうかお願いします!オラを弟子にしてくだせぇ!」

「……。」

呆気にとられたウズマサを前に、狸人はひれ伏したまま、端に布の巻かれた棒を指差した。

「オラの名前はダンキチと言います。この棒を共としてヤクマルイッシン杖術を習いまして、鵺殺しで高名なミナモト様に…」

「いや、いや、ちょっと待ってくれ」ウズマサは慌てた。

「俺は誰の弟子も取らない。まして、ダンキチとか言ったか、あんたは狸人だろう?」

「へぇ、狸人で御座います。」

「何故、年がら年中、(いくさ)のことしか頭にない、俺達の真似をしたがるんだ?」

ウズマサは言ってて自分が虚しくなった。そう、犬士は産まれたときから平和であれば厄介者のならず者でしかない。

「オラは悲しいんです。狸人として産まれたら、狸人として平民として一生を終える。立身出世したいなら、頭は狐か犬のみぞあるというのが、オラには我慢できねぇ!オラは狸人の犬士として取り立てて欲しいという夢があるんです。」

大いなる矛盾をはらんだ夢を熱く語る様を見て、キヨアキラの言葉がふと浮かんだ。



時代が変われば、いつか貴方が狸人さえ犬士として導くことになるやも知れませんよ?



眉間に皺を寄せるウズマサに対し、ダンキチは真剣そのものだった。貴族の虚飾も武人の傲慢さもない、純粋なものに見えた。

「使用人のサクが亡くなってからは一人で身支度していてな…付き人としてなら雇ってやれるかも知れん。」ウズマサは結局、気まぐれと好奇心、サクを失った悲しみ寂しさに負けた。

「なら、そこからでも!是非!」

ダンキチは、鼻息荒くズズイと前かがみで進んできた。

「…分かった。そう迫るな。」

こうして、ウズマサは奇妙な使用人を雇うことにした。

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