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45歳元おっさんの異世界冒険記  作者: はちたろう
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第九十一話

体調不良で投稿できず、すいませんでした。まだすっきりしないんですが、出来るだけ頑張ります!

 素振りを終えてから宿の一階に降りていくとニーナとタニアが待っていた。女将さんに行ってきますと鍵を預けるとお弁当を渡された。時間が無かったのに有難い。


 三人で集合場所の東門へ着くと、もうラッドさんが待っていた。


「おはようございます、ラッドさん。早いですね」


「おう、おはよう。お前らもな。まだ鐘が鳴る前じゃねえか」


 朝の一の鐘が鳴ると門が開かれることになっている。もう少ししたら鳴るはずだ。門の前には冒険者や商隊が沢山いて結構な賑わいだ。


「ニーナ、タニア、僕たち三人で十人の盗賊を相手するのに真正面からでは無理だよね。歩きながらなんとか作戦を考えよう」


「そうですね、出来れば二、三人づつ相手できると一番いいんですが、そう簡単には行きませんからね」


「めんどくさいことに、あいつらは必ず群れてるからね。しかも待ち伏せとかするからさらに厄介だよ」


「これだけの商隊が向かうとなるとどれか襲われるんじゃないか?」


 ここにいる商隊は五つ以上いると思うんだが。…ああ、だから冒険者が多いのか。


「大きな商隊は、腕の立つ冒険者を雇っているからあまり襲われないのさ。襲われるのは冒険者を雇えない小さな商隊か、雇えてもお前らみたいなひよっこを雇ったやつらだろう」


「僕たちも護衛依頼を受けれればよかったんだけど、まだ受けれないからなあ」


「小さな商隊にくっついていく?」


「それができればいいんですけど、迷惑じゃないですか」


「そうだなぁ、ちょっと聞いてくるか」


「あ、私も行きます」


「あたしもー」


 結局皆で移動することになった。さて、誰に声をかけようか。小さな商隊、小さな商隊……小さいってことは、馬車一台か徒歩の人かな?そんな人いるかなぁ?


「あ、あそこにいる人なんかどうですか?」


「ん?どこ?」


 ニーナが指さしたほうに目を向けると、馬車というよりかは荷車に小型の馬?みたいな動物を繋いで、その世話をしている女の子がいた。


「なんだか、あれで商売してるなんて襲ってくださいって言ってるみたいだな。ちょっと聞いてみるか」


「あれ?あんた、草原の民か?」


「え?ええ、そうですけど…あなたたちはどなたですか?」


 遠くから見たら女の子だと思った人は近くに行ってみるとどうも成人女性で、タニアによると彼女は草原の民という種族だそうだ。


 草原の民は、成人でも背が小さくて百三十センチあるかどうかというところらしい。とても手先が器用で素早く動くことができるため冒険者では、盗賊シーフを生業としていることが多いらしい。


「僕たちは冒険者でね、盗賊討伐の依頼を受けたんだけど、ただ歩いて探すより誰かと一緒にいた方が良いんじゃないかっていう話になって、護衛のいなさそうな商隊を探していたんだ」


「それで私に声をかけたのかい?うーん、一緒に行くのは構わないけど、それだと護衛料は払えないよ。それでもいいなら私には有り難い話だね」


「ああ、今回は僕たちの我儘だからお金のことはいいんだ。その代わり盗賊を退治出来たらそこでこの町に戻ることになっちゃうんだけどそれでもいいですか?」


「私は構わないよ。盗賊が出るのはここから一日行った辺りでしょ?そこからなら次の町まではさらに一日くらいだから行けるよ。私はマーリ。一人で行商している商人さ、こんななりでも四十だからね。短い間だけど頑張っておくれよ、若人たち」


 僕達も簡単に自己紹介を終えてマーリさんに同行することが決まった。マーリさんて四十歳なんだ。えらい外見が若く見えるなぁ。背が小さいこともあるかもしれないけど、背中の中ほどまである薄い緑色の髪を無造作に一つに纏めている。動きがきびきびしていて見てて忙しない感じがするけどやってることは丁寧だ。よく見れば目元には笑い皺があって年相応なんだなぁと感じる。




 そうこうしているうちに朝一の鐘が鳴り、門が開かれる。待っていた人たちが我先にと進んで行く。町を出るときは検査はなしだ。僕達も流れに沿って進んで行く。


「あんたたちの階級は、鉄級になったばかりだろ?」


 門から出て、ちょっと進んだところでマーリさんが声をかけてきた。


「なんでわかるんですか?」


「私も商人は長くてね。前にも同じようなことがあったんだ」


 荷車の御者席に座っているマーリさんを見ると少し遠い目をしている。何か思い出があるんだろうか。


「ずっと一人で行商をしてるんですか?」


 僕の隣を歩いているニーナが会話を継いでくれた。


「ああ、一人なのはもう十年になるかね。行商自体は二十五年くらいになるかな?」


「十年も一人で…」


「昔は旦那と二人でやってたんだけど、十年前にもね、今のあんた達みたいに鉄級に上がったばかりだからって言われて護衛してもらったのさ」


 十年前ってマーリさんが一人で行商するようになったって頃だな。その時に何かあったんだろうなぁ。


「そん時にね、盗賊に襲われて冒険者は全滅、旦那も殺されちまったよ。私は旦那のお陰で何とか逃げることができてね。それから一人で商売してるのさ」


「そんなことがあったんですね…」


 マーリさんの話を聞いて辛そうな顔で下を向いてしまうニーナ。


「あはは、あんたたちが気にすることはないよ。もう昔の話さ」


馬にしては小さい馬が牽く荷車で朗らかに笑うマーリさん。彼女の中ではもう整理された話なんだろう。湿っぽい話になっっちゃたなぁ、話を変えるか。


「マーリさん、この馬って普通よりもずいぶん小さいんですね」


「ん?ああ、こいつはリャムっていう種類の馬だよ。私たち草原の民がよく使っている馬さ。なりは小さいけど丈夫で力が強くて体力もあるから馬車を牽くのにはぴったりなんだよ。それに私たち草原の民には普通の馬は大きすぎて扱いにくいんだ」


「へー、どこらへんに生息してるんだ?」


 今まで後ろ頭で手を組んで黙って歩いていたタニアが口を開いた。


「私たちは王都から西へ十日くらいの所にある大平原で放牧や行商をして暮らしているんだ。そこに昔からいる馬だよ」


 王都の西の方に広い平原があるんだ。大平原っていうくらいだから見渡す限りの草原が広がっているのかな?いつか行ってみたいなぁ。


「しかし、あんたたちは四人パーティなのかい?しかもこんな可愛い娘が二人もいるし」


「いえ、僕たちは三人です。こっちの人は試験官の冒険者でラッドさんです」


「おう、基本、俺は手ぇ出せないからな。危なくなったら逃げてくれよ」


「わかったよ。そうなったら遠慮なく逃げさせてもらうよ」


 ラッドさんに向かってにっと笑うマーリさん。


「僕たちのことは気にしなくてもいいですから、そうしてください」


 こっちの事情に巻き込んでしまったから、せめて迷惑がかかる前に逃げてもらったほうがいい。


 話が一段落したようなので、今度はこっちの相談をしないとな。


「ニーナ、タニア、盗賊とはどう戦えばいいかな?今までみたいに僕が引き付けて、二人で倒していくっていうのは難しいよね、きっと」


「そうだね、奴らはきっとあたしとニーナのほうを狙ってくるから、あたしはいいとしても問題はニーナか」


「そうですね。私が自衛できればいいんですけど、自信がないです」


 こっちは三人しかいないからなぁ。十人に囲まれると…うーんどうしたもんかな。


「ニーナは短剣が使えたんだっけ?」


「はい、あまり得意ではないですが。一応できます」


「タニアは、ショートソードができるんだったか」


「できるよ。リュウジほどじゃないけどね。盗賊くらいなら負けないさ」


「うーん、そうなると、タニアはニーナの護衛兼遊撃手が妥当かなぁ。で、ニーナが攻撃をする、と」


「リュウジの負担が大きすぎない?」


「そうですよ!私のことは気にせず、タニアさんと二人でやってください」


「それはできない。ニーナが一人になって人質に取られるとそこで終わっちゃうから」


 まあ、ニーナだけがネックではないんだけどね。タニアが捕まっても、僕が倒されてもそこで終わりになっちゃう。


「魔物や動物相手とは勝手が違うからなぁ。後ろから回り込まれて捕まったらどうしよもなくなるしね。やっぱりあたしが弓で援護する形にするのがいいと思うんだ。向こうにも弓使いはいるからまずはそいつらを見つけて黙らせる。それから剣に持ち替えてニーナの護衛をするってのはどう?」


「襲われたら私もできるだけ反撃くらいはするよ?逃げるのにも数を減らさないとだめだからね。ちなみに私だって弓くらいは使えるんだ」


 そういってマーリさんは、荷車から自前の短弓を取り出して見せてくれる。


「わかりました、いざとなったら期待してます」


 マーリさんが援護してくれるなら話は変わってくる。過度な期待はしてはいけないだろうけど、多少の援護、ニーナの護衛程度はしてくれそうだ。


「マーリさんが弓で援護してくれるんだったらあたしも剣で戦おうかな。そのほうがいいよね」


 前衛二人、後衛二人になった。これでちょっとは目途が立ったかな。


「あー、でも馬を守らないといけないね。奴ら絶対弓で馬狙ってくるよ」


「やっぱりそういうもんか。まず逃げる手段を潰すよね」


「うん。馬鹿正直にやる理由なんてないだろうからね」


「じゃあ、僕とタニアで馬の護衛か。でもまだいいよね?」


「まだ大丈夫だけど、今から護衛の形を練習しておいたほうがいいね」


 僕とタニアが馬の両脇を歩いてニーナが荷車の後ろをついていく。ラッドさんは好きなところでいい。


 このリャムという馬は、頭の位置が僕の胸くらいしかないから、向こう側を歩いているタニアがしっかり見えている。


「馬が小さいから死角になるところが無くていいね。暫くこのまま歩いてみようか」


「わかった。ニーナも大丈夫?」


「はい、私からも二人が見えますからね、大丈夫だと思います」


「あとは、タニア任せになっちゃうけど、いいかい?」


 僕やニーナだと気配を察知することができないからなぁ。タニアに全部お任せになってしまう。


「僕も気配察知が出来るようになるといいんだけどね」


「あはは、こればっかりは練習するしかないからね。あたしだって大分かかったんだから、すぐに出来るようになったら吃驚だよ」


「皆、もうちょっと行くと休憩場所があるから、そこで休憩しよう」


 そろそろお昼かな。お腹が空いたような気がする。


「やった。ちょうどお昼くらいだよね。リュウジ、そこでご飯食べよう」


 マーリさんの提案にタニアが賛成し、ニーナも頷いている。ラッドさんもお腹をさすっている。お腹減ってるんだな。

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