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45歳元おっさんの異世界冒険記  作者: はちたろう
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第八十三話

「お待たせ」


 急いで西門まで行くとニーナとタニアが待っていた。


「おっそーい。リュウジ何してたの?」


「ごめん。教会に行ってフィルメアさんにお礼言ってきた」


「あっ、忘れてましたね。ごめんなさい」


 ニーナが申し訳なさそうに謝る。


「それならしょうがないか。食材買ってきたよね?」


「うん、ばっちり」


「あたしたちもポーション買ってきたし、出発しよう」


 宿で使ってるマットも回収してきたし、準備は万端なはずだ。


 タニアたちが買ってきたものもリュックサックに入れて西門を出る。門を潜って外に出ると長い行列ができている。町に入る人たちか。こっち側から入る人たちも沢山いるんだなぁ。


「ねえ、ニーナ。今日はどこで野営するの?」


「今日は、北に向かう道に入ってすぐのところに野営できる場所があるので、そこまで行きましょう」


「暗くなる前に行けるの?」


「おそらく大丈夫だと思います。頑張って歩きましょう!」


 うえーと言いながら歩いていくタニア。二人の荷物もリュックサックに入れたから装備以外は何も持っていない。ニーナは杖をつきながら快調に歩いている。もしかして僕が一番大変なんでは?盾に剣に鎧……うん、頑張ろうか…。






 どれくらい歩いただろうか。今の季節は日本で言う秋っぽいから暑くはない。気温は高くはないがラメラーアーマーのせいで暑い!太陽は大分傾いてきたから午後四時くらいか。天気が良いから余計に暑い。


「なあ、ニーナ。そろそろ休憩しない?」


 顎から汗が滴る。うぅ…肌着が汗で気持ち悪い…


「もうちょっと頑張ってください。もう少し行けば北に行く道が見えてきますから、そこからすぐです」


「わかった。頑張るよ」


「おー!頑張れ~!リュウジ~」


 タニアの応援が嬉しいけど、力が抜けそうだ。




「いやー、金属使った鎧がこんなに重いとは。ちょっと甘く見てたなぁ」


「革鎧だって結構重いけど、金属片とは言えほぼ全部を覆ってるんだからそりゃ重いでしょ」


「でも凄いですよリュウジさん。ここまで来れたんですから」


「半日歩いただけでへばってたら駄目だよねぇ。また体力作りかぁ。」


「それ着て依頼熟してりゃそのうち慣れるでしょ。まあ、やるなとは言わないけどさ」


 今は野営地に着いて準備が終わったところだ。日が落ちて涼しくなってきたから鎧を脱いで汗を拭いてスッキリしてから晩御飯を作っている。


「今日の昼ごはんは美味しかったなぁ。あんなの売ってたんだね」


「そうですね。見たことない料理でしたからどうかと思ったんですけど、リュウジさんが見つけてきてくれるものはどれも美味しいですね」


「いつからやってるか聞いてないけど最近だろうね。今まで見たことなかったからね。さ、火が点いたから食材を焼いていこう」


 バーベキューコンロに入れた炭に火を点けて、切った肉と野菜をのせていく。焚火台の上には、野営鍋に大麦を入れて炊いてみた。


 米を炊くときは、お米の量の二割増しの水を入れるんだけど、確か大麦の時は二倍の水を入れるんだったかな。今回は二合炊くから、水の量は七百二十ミリリットルだ。基礎魔法の流水アクアで出した水をシェラカップで計りながら野営鍋に入れて三十分程度浸けておく。あとは普通に炊くだけだ。


「なんだかおいしそうな匂いがしてきました…リュウジさん何を作ったんですか?」


「ん?大麦を炊いてみたんだよ。ご飯が食べたかったけどお米が見つけられなくてね。代わりに大麦を買ってきたんだ」


「炊くって、煮るってことか?」


「ん~、煮るのとはちょっと違って出来上がったときに汁が残らないんだ」


「変わったこと知ってるんだなぁ。で美味いのか?それ」


「水で炊くから味はあんまりない、かな?食べてみる?」


「あたしはいいや。パン出して」


「私は食べてみたいです。私の分もありますか?」


「ああ、足りなくなったらまた炊けばいいから。大丈夫だよ」


 炊くって料理法は一般的じゃないのかな?じゃあ蒸すってのもなさそうだなぁ。


「リュウジ、焼けてきたぞ。食べようよ」


「塩胡椒した?」


「ばっちり」


「じゃあ食べよう。いただきます」


「「いただきます」」


 タニアは僕が食べるときにいただきますって言うのを聞いていつの間にか使うようになってた。ニーナも神様に感謝の言葉を呟いてから言うようになったんだ。


 野営鍋からいい匂いがしてきた。もうすぐ炊きあがりだな。シェラカップを二つ出して小さなしゃもじを取り出して濡らしておく。


「ニーナ、もう少し待ってね。」


「凄くいい匂いがしてきました。どんなふうになるんですか?」


「大麦が水分を吸ってふっくらするんだ。煮るのと違ってそんなにべちゃっとしないから美味しいと思うよ」


 野営鍋の蓋から吹きこぼれるのが無くなったから火からおろして十分ぐらい蒸らす。アルミのクッカーだとタオルとかで巻いてから蒸らすんだけど、こいつなら冷めにくいからそのままでいいだろう。


「よし、十分経ったかな。」


 野営鍋のふたを開けると、粒の真ん中に茶色の筋が入った大麦がほっこりと炊き上がっていた。しゃもじで少し掬い取って口に入れる。


「うん、上手にできた。麦も炊いてみると美味いな」


「私にも味見させてください!」


 二合分なのでちょっと少な目だが、二人分には十分だ。しゃもじで切ってかき混ぜてニーナに少し渡す。


 口に入れ、もぐもぐと咀嚼するニーナ。最初は、んーっていう顔をしていたが段々味が出てきたのか目が大きくなっていく。


「美味しいです!麦ってこんなに美味しいんですね」


 お米とは違うが、麦ご飯も美味しいからな。シェラカップに山盛り入れて渡すと、お肉、麦ご飯、お肉、野菜、麦ご飯を延々と繰り返している。よっぽど気に入ったみたいだ。


「そんなに美味しいの?」


「美味しいですよ。タニアさんも今度は食べてみてください」


「んー…わかった。騙されたと思って食べてみるか」


「じゃあ、今度は三合炊かないと足りなくなりそうだね」


「その、三合って何ですか?」


「ああ、それは僕が前にいた世界で使われてた容量の単位だよ。一合は大体百八十グラム、こっちで言うと百八十オンスだよ」


 二人ともへーと言いながらご飯を食べ続けている。僕も食べよう、なくなりそうだ。


「やっぱり焼肉にはご飯だな。久しぶりに食べたけど美味いなぁ」


 塩胡椒だけでも肉は美味い。肉自体も何の肉か分からない(何とかっていう動物。名前を教えて貰ったけど入ってこなかった)けど、豚肉みたいでとても美味しい。


「おかわりが欲しくなるな。んー、でも時間かかるからなぁ我慢しよう」


「私もまた食べたいです。明日も作ってくださいね、リュウジさん」


「そん時はあたしも食べるから!」


「わかったよ。明日の夜にな」


 焼肉を食べ終えて、焚火とランタンの明りで洗い物と片付けを済ませ、夜番を決める。


「今回はあたしが真ん中やるからリュウジは最後ね。てことで、最初はニーナ、よろしくね」


「はい、わかりました。おやすみなさい」


「頑張ってね、ニーナ」


「んじゃ、おやすみー」


 タニアに続いてテントに入る。入り口は何かあったとき、すぐに出れるように開けっぱなしだ。寝袋は使わずにマットを敷いて外套に包まって寝る。もちろんブーツも脱がない。


「お休み、リュウジ。あたしもうこの皮のマットが無いと寝れないわー」


「あはは、気に入ってもらえて嬉しいよ。そのうち誰かに作ってもらって売り出すかな」


「売り出したらあたし、一番に買うからね!」


 本気で考えてみようかな。冒険者には売れなくても、宿屋には売れそうな気がする。






「…ウジ、リュウジ起きて。」


 体を揺すられて目が覚めた。


「んあ?ああ、交代の時間か…すぐ行くよ」


 外套を畳んで足元に置いておく。


「外結構冷えるからあったほうがいいよ」


 テントの中はそんなに冷えていないが、外は寒いのか。だんだん季節が進んでるな。タニアは僕の横でもう外套に包まっている。


「ありがとタニア。お疲れさま」


「何事もなかったよ。じゃ、お休み」




 パチパチと薪の爆ぜる音が夜空に響く。薪台から二本手に取り一本を火の中へ置いてもう一本を火掻き棒の代わりにして火床を整える。


「やっぱり焚火はいいなぁ」


 火は温かいし、なぜかいつまでも見ていられる。今は、焚火台は使わずに直火だ。こういった野営地では、焚火の後をわざと残すんだそうだ。なんでって聞いたら、ここで安全に野営しましたよって言う合図というか証拠になるみたい。石を積んで竈を作りそれをそのまま残していく。もし襲われたらそれが壊されて片付けられてないままになるからわかるんだそうだ。こっちには普通に人を襲ってくる獣や魔物がいるからなぁ、なかなかハードな世界だ。


 夕食の時に使った出したままになってる椅子に腰掛けて、焚火で沸かした湯を冷まして飲む。


「お茶か紅茶が飲みたいところだけど、高いんだよなぁ。何かいい飲み物はないんだろうか」


 セトルの町ではめぼしいものが無かった。というか、町の人たちは白湯を飲むんだよね。探したら紅茶が売ってたけど十グラムで銀貨一枚だった。銀貨は一枚で一万円ぐらい。いつも飲む用には高すぎる。


 港町に行ったら安い茶葉があることを期待しよう。


「それにしても暇だなぁ。いいことなんだけど…」


 ここは街道からそんなに離れていないから動物や魔物も滅多に出ないし、セトルの町の周辺には盗賊もあまりいないらしい。いてももう少し南の方だという話だ。アユーミル様もいいところを選んでくれたんだな、感謝しよう。 




眠気と戦いつつ数時間、やっと空が明るくなってきた。そろそろ朝ご飯の準備をしておこうかな。


魔法で水を出し薬缶を火にかけパンと燻製肉と葉物野菜を取り出してサバイバルナイフを洗って燻製肉を薄く切っていく。


 焚火でパンと切った燻製肉を炙って、葉物野菜を挟んで塩胡椒を少々振って完成だ。二人ともそろそろ起きてくる頃だろう。


「おはようございます。リュウジさん」


「おはよう、リュウジ。いいにおいがする」


「おはよう二人とも、朝ご飯作ったよ。食べてね」


 二人とも寝起きだけどすぐに食べる。冒険者だったら普通のことらしい。僕ももともと寝起きでもすぐに食べれる方だったから違和感はない。


「今日はどこまで行くの?」


「一日歩くとまた野営地があるのでそこまでですね」


 また一日歩くのか…移動手段が歩くか、馬か馬車しかないからしょうがないんだけど、まあ、歩くか…


「よし、行こうか!」


「はい!」


「頑張れ!リュウジ」


 道具を仕舞い、リュックサックを背負ったら準備完了だ。あと一日半だ、頑張ろう。

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