第八話
鐘について指摘があったため、ちょっとだけ変更しました。
11時から13時までお昼休みのため、正午は鐘が鳴らないという設定です。
指摘ありがとうございました。
早く寝たからかとてもすっきりした目覚めだった。結構疲れてたんだなぁ。よし今日は冒険者になる日だ。着替えて朝ご飯を食べよう。
着替えて食堂のある一階に行くとテーブルにニーナが座っていた。
「あ、おはようございます、リュウジさん。今日は頑張ってくださいね」
にっこり微笑むニーナ、可愛いなあ、今日も。
「おはようニーナ。早いんだね。お昼まで時間があるしどうしよっか?」
「依頼が張り出されるのが朝一の鐘なんです。だからそれまでに組合に行かないと良い依頼が他の人に取られちゃいます。基本ですから覚えておいてくださいね。今日はリュウジさんの試験があるから依頼は受けませんけど、冒険者になったら早起きしてくださいね。お昼までは町を見て回りましょう」
「わかった。あ、鐘って何時になるの?一の鐘とか三の鐘とかって言ってるけど」
「鐘は、午前六時から一の鐘なら一回、二の鐘なら二回って感じでお昼までに六回鳴ります。お昼からは午後一時からまた一の鐘、二の鐘、三の鐘という具合に六回鳴ります。正午は鐘が鳴りません。町の人たちはこの鐘で時間を知ります。鐘の音が聞こえないところでは、太陽の位置で大体の時間を知るんですよ」
「そうか、一時間に一回鐘が鳴るんだね。わかったありがとう」
時刻が分かるってことは、時計があるのか。日時計かな?もしかして魔道具かな?魔道具だったらそのうち見てみたいな。
テーブルに座ってニーナと話していたらアルテさんが朝食を持ってきてくれた。パンとサラダとスープだ。パンは堅めの丸パンでサラダはサラダホウレンソウみたいなのやレタスに似た葉っぱやらこんもりとお皿に盛ってある。掛かってるのは塩かな?スープには細かく切ってある肉の欠片と何の豆かは分からないけど、豆が入っている。スープ自体は薄い黄色で味は肉の旨みが効いててとても美味しい。この世界のご飯が美味しくてよかった。
「町を観光するのはいいね。でも、先立つものが心許ないんだよなあ」
「先立つものって何ですか?」
「こっちでは言わないのか…ああ、お金がね。宿代とか払ったらちょっと心許なくなってきたんだ」
「じゃあ早く冒険者にならないといけませんね。お金は大事です」
「じゃあご飯を食べたら町を案内してくれるんだよね?楽しみだなぁ」
ご飯を食べ終わって一度部屋に戻って身支度を整えたら宿の入り口に集合になった。僕の身支度なんて寝ぐせ直して歯磨きと洗顔で終わりだからあっという間だ。早くいって待っていよう。
「リュウジさん、お待たせしました。行きましょうか」
出入口付近で待ってるとニーナがやって来た。ニーナは、若草色のワンピース姿で、腰にはポーチをつけて足元はちょっとごついブーツだけど、とても良く似合っている。今まではローブ姿でわからなかったが、スタイルも抜群だった。ウェストはキュッと引き締まっていてヒップは豊かだ。胸は、大きすぎず小さすぎずちょうどいい感じでしっかりと自己主張している。背は小さいがバランスが取れている。
「爽やかでいい色だね。綺麗なニーナにとても合っているよ」
「あ、ありがとうございます。さ、さあ行きましょう!」
ニーナは、照れくさそうに頬をピンクに染めてはにかみながら歩いていく。僕は遅れないようについていった。
町を案内してくれているニーナはとても嬉しそうにいろんな店を教えてくれた。可愛い小物があるお気に入りの雑貨店や魔法使い用の装備品が売っている店、人気のあるご飯屋さんなど結構店があって面白いな。武器屋、防具屋とか年甲斐もなくワクワクが止まらなかったよ。
そうこうしているうちに午前の五の鐘が鳴った。時間が経つのがあっという間だったな。
「ニーナ、そろそろ準備した方がよくないか?」
「そうですね。一度宿に帰りましょうか」
「小腹がすいたから帰る前に少し食べたいな。何かないかな?」
「じゃあ、大通りじゃない方の屋台通りに行きましょう。こっちです」
大通りにも屋台は出ていたが、そこではないらしい。
二十分ぐらい歩いた町の外れのところに職人通りがあった。家具職人や鍛冶職人などの工房が並んでいるみたいだ。職人通りのちょうど中間の辺りに広場になっているところがあって、そこに屋台がいっぱい並んでいた。串焼き、ゴロゴロと具が入ったスープやベーグルみたいなパンを使ったサンドイッチなど色々な屋台の人たちが呼び込みの威勢のいい声を上げている。
ちょうど昼時なので見るからに職人さんっぽい人や買い物客でごった返していた。僕たちは、肉の串焼きとサンドイッチを買って、空いているベンチがあったので二人で頬張る。肉は塩のみの味付けだ。これでも美味いが、胡椒があればもっと美味いのに。
「これは何の肉だろう?油が少ないからさっぱりしてて美味いね」
「これは角ウサギの肉だと思います。美味しいですね」
角ウサギか…あの時に置いてきちゃったことが悔やまれる。美味いとは聞いたがこれほどとは。次は忘れないぞ。
「そろそろ行きましょう。遅れると怒られちゃいますよ」
「そうだね。何だか緊張してきたよ」
「リュウジさんなら大丈夫ですよ。あのゴブリンの時みたいにやれば絶対合格します!」
ニーナは胸の前で両手でガッツポーズを決めながらフンスッと鼻を鳴らす。
「ニーナのお墨付きがあれば大丈夫かな。頑張るよ」
「はい、頑張ってください!応援してますから!」
よし、冒険者組合に行こう。冒険者になるんだ。これからの生活のためにね。