第七十九話
ニーナと買い物に行ってから五日経った。今日は防具が出来上がる日だ。
「それじゃあ、行ってくるよ。」
朝ご飯を食べた後ニーナとタニアに防具屋に行ってくると伝え、出かける。
「はい、いってらっしゃい。」
「明日から依頼受けれるな。」
「明日は無理だと思うけど…」
調整で二日ぐらいかかるって言ってたからね。
宿を出て防具屋に入ると店主のイーゴさんが待っていたらしく店の奥に連れていかれた。
「できたぞ。これだ。」
見せてくれたラメラーアーマーは、窓からの光で鉄色に鈍く光っている。よく見ると厚さ三ミリくらいで長辺五センチ、短辺三センチくらいの金属片が隙間なくびっしりと縫い付けられている。ゲームの設定資料とかで見たものとほぼ同じ感じだが、なんていうか…重量感?存在感?が凄くあるなぁ。
「ちょっと着てみてくれ。細かいところを見たいからな。」
木でできたスタンドみたいなものに掛けてある鎧を着ようと持ち上げる。
「重たっ!」
こんなの着て戦えるか!って思うぐらい重たい。そりゃそうだな。金属片が全面に縫い付けてあるからなぁ。これ着て歩くのか。出来るかな?
「どうした?早く着てみてくれ。」
「わかりました。よっと。」
着方は頭を入れる穴が開いてるからそこに頭を通して前側と後ろ側を両脇で革ひもで固定するみたいだ。あ、肩というか上腕まで覆えるんだ。これも二の腕の辺りで革ひもで固定するようになってる。
「着てみるとあまり重さは感じないんですね。」
「まあ鎧なんてそんなもんだろ。だが、全身金属鎧だとかなり鍛えてないとすぐに動けなくなるぞ。それだって革鎧に比べたらかなり重いから持久力がないとすぐにへばるぞ。」
店主のイーゴさんに手伝ってもらいながら装備してみた。
「裾は結構長いんですね。」
膝上くらいまである。走るのに結構邪魔になりそうだなぁ。でも腿まで覆えるのはいいな。後ろは…ああ、後ろも同じくらいあるんだ。
「動き難かったら腰のあたりまでにするが、そのくらいあるのが普通だな。」
「これ、腰の位置でベルトみたいなのを付けることって出来ますか?」
「ベルトか……ふむ、やってみよう。少し金属片を外してベルト環を付けてみるか…ふむ。」
顎をさすりながらふむふむ言って僕の周りを一周した後「よし、わかった」と言いながら鎧を脱がすイーゴさん。
他に僕が思ったことを言葉で説明して、二人でああでもないこうでもないと言い合って、どうやら納得のいくものができそうだ。
「じゃあ約束通り二日後に取りに来てくれ。」
「お願いします。あ、お金はどうすればいいですか?」
「最初のままでいいぞ。今払ってくか?」
「ありがとうございます、今払います。」
財布代わりにしている皮袋から金貨二枚と大銀貨一枚を渡す。ほんとは現物と交換が良いらしいんだけどこの人なら大丈夫だろう。
「あと、盾はどうする?」
「あ、忘れてました。うーん、前と同じのでいいと思いますか?」
「今までの奴か…まあ、今回みたいなのとやるんじゃなければいいと思うぞ。」
ホブゴブリンか…きっとあんなのと戦うことはそうないと思うが…まあ、革の盾でいいか。
「じゃあ、前と同じのをお願いします。」
「わかった。確か改造してたな?」
そうだった。革の下に金属片を入れて貰ったんだった。
「そうです。金属片を入れてました。」
「じゃあ、そっちもやっとくか。前のよりもっと頑丈に作ってやるよ。だから今回は銀貨二枚だな。」
前に買った時は大銅貨五枚だったっけ。まあ新調するんだからしょうがないか。
「わかりました。これも二日後に出来ますか?」
「ああ、大丈夫だろう。二日後でいいぞ。金はどうする?」
「払います。」
財布から銀貨二枚を支払って店を出る。さてどうしようか。昼飯を買いながらその辺をぶらついてみるかな。よし、そうしよう。
そうして町を歩いて商店とかをみていると声を掛けられた。
「よう、リュウジじゃないか。」
この声は、ライルか?声のした方を見るとやはりライルが手を挙げてこっちに近づいてくるところだった。
「おう、ライルじゃないか。どうした?」
「どうしたってお前、俺だって買い物くらいするわ。」
そういって持ち上げた手には膨らんだ麻袋が下げられている。
「そういや、鉄級になったんだってな、おめでとう。」
「おう、ありがとよ。お前らのおかげだ。俺なんてほとんど役に立ってなかったからな。」
「何言ってんだよ。ライル達と一緒じゃなかったらあれは生きて帰れなかったと思うよ。」
そう、ライル達のパーティと組まなかったらきっと生きて帰れなかったに違いないだろう。
「そう言ってくれると嬉しいね。そういや飯食ったか?」
「まだだよ。これから屋台に行って何か買おうかと思ってたところだ。」
そろそろお昼の鐘がなる頃だろう。屋台街に向かう方向にはたくさんの人が歩いて行っている。
「よし、一緒に行こうぜ。おごらせてくれよ。」
「いいよ。自分で買うよ。」
「まあ、そう言わずにさ、お礼だと思ってくれ。」
「…そう言うことなら、有り難く。」
屋台街で角ウサギ肉の串焼きやワイルドボア(野生の猪らしい)のステーキなんかを買ってそこら辺のベンチに座って食べる。
「リュウジは鉄級にはなれなかったんだな。」
「そうだね。まだ冒険者になって半年くらいだぞ?今鉄級になっても依頼を達成できないよ。」
僕はまだ鉄級になれる実力はないと思ってる。ライルみたいに堅実な戦闘が出来るわけでもないし、パーティのメンバーも足りないと思う。
「リュウジだったらすぐになりそうな気がするな。あんだけ戦えるんだからよ。」
「あんなのはもう御免だよ。」
「ニーナちゃんもなれなかったんだってな。あんな魔法が使えるのになぁ。」
「ニーナもあれが出来るようになったのは最近だからなぁ。僕が出会った頃は炎矢でもかなり時間がかかってたしね。」
「そうか、あれを知ったら他の冒険者が黙ってないな。今まで倦厭してたのに掌返したみたいに群がって来るぞ。気を付けてやれよ。」
「わかった。忠告ありがとう、僕も気を付けとくし本人にも言っとくよ。なあ、鉄級になるのに試験みたいなのはないのか?」
「ん?そういうのは銀級から上に上がるときだな。俺も聞いた話だが結構難しい内容みたいだぞ。」
「指名依頼ってあるのか?」
「そうだなぁ、鉄級でも名前が売れてないと滅多にないな。」
「そうなんだ。ライル達も指名依頼が来るといいな。」
「ああ、もっと頑張らんといかんな。俺たちはまだまだやれる!なんてな。ははっ」
いきなり立ち上がって拳を握りながら大きな声を出したライル。周りの人たちの視線が痛い。しかし、まだ二十代前半だろう。人生で一番何でもできると思える年代だ。頑張ってほしいな。
「いきなり大声出すな。皆が見てるぞ?」
「周りのことなんか気にすんな。お前も早く鉄級になれよ。で、また一緒に冒険しようぜ。」
「ああ。僕も頑張るよ。」
「んじゃあ、俺は行くわ。まだ買いもんがあるからよ。」
「またな。」
町の雑踏に消えていくライルを見送りながら依頼頑張ろうと思った。
「よし、帰るか。よっこいしょ。」
今までも癖で立ち上がるときについ出てしまった。体は若返っても精神はおっさんだからなぁ。気を付けよ。




